【マンガ業界Newsまとめ】 BTSのWebtoonは韓国や日本を対象としない大戦略? など|2/12-039
マンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。業界のニュースのボリューム的に、Webtoonのニュースが多いのですが、そうでないものも、結構入れています。
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韓国国内で不評の『7FATES:CHAKHO』は果たして成功したのか?
何度か当まとめでもお知らせした、BTS×NAVERのコラボ『7FATES:CHAKHO』の話題ですが、非常に興味深いまとめが出ています。
端的にいうと、本国韓国やお隣日本というマンガ大国において、このBTSコラボは失敗しているようにも見えるのですが、実際の狙いはWebtoonにとっての新規市場である北米における新たなユーザー獲得や、元々無料モデルあったWebtoonに課金ユーザーを増やす施策であり、その北米では成功の兆しを示しているとのこと。
また、そもそもこれはWebtoonにおいてのみ成否をわける取り組みではなく、BTSをプロデュースするHYBEとNAVERによる、BTSを取り巻く大きな戦略・戦術の一部に過ぎないということのようです。
このあたりは、以下の芝辻氏のnoteでも触れています。
単純にマンガを売ればよいというようなシンプルな話にとどまらず、ブロックバスター戦略が、ひとつの業界の動きにとどまらない、遠大な打ち手であろうことを垣間見せます。
本ニュースは芝辻氏とのPodCastで、詳細にその経緯・内容を掘り下げました。過去のPodCastの中でも最強の内容だと思います。マンガの国際展開や、Webtoon関係者は是非聞いてください!
今回、このお話をしていて個人的に思い出したのは、1968年に創刊した少年サンデーと少年マガジンの表紙でした。
日本初のマンガ週刊誌は、マンガの市場を開拓する初動で、当時大人気の長嶋茂雄(読売巨人)と大鵬(大横綱)の力を借りてるんですよね(配信中でジャンプと言いましたが、この2誌の間違いでした。お詫びいたします。)
世界を魅了させた韓国コンテンツ「物足りない好況」…ネットフリックスが収益・人材を「暴風吸入」
NetFlixの存在については韓国国内でも様々な考えがあり、もともと比較的好調だった韓国映画業界は、NetFlixにより、初期の単価は高くとも、大きく広がったIPの収益が自分たちの手元まで回ってこないことを「物足りない」と感じていた様子です。
しかしながら、これが原作Webtoon作品の場合は、その原作IPは韓国企業の手元に残りますので、必ずしもNetFlixだけがIPをおさえるということでもなく、様々な展開や収益化が考えられるとのこと。
日本のアニメ製作や、マンガやラノベ等を原作起点とする出版社のIPビジネスにも同じことが言えるでしょう。
先のNewsでBTS作品を制作したと触れられたREDICE社ですが、ピッコマで新作『ザ・チャレンジャー』を2/6より連載開始とのこと。おれレベに届く作品となるかどうかですね。
カカオのフランス進出は既報ですが、フランスにおける漫画市場の拡大や、フランスの日刊紙が、フランス青少年の新たな文化として、コロナ後に伸びたWebtoonを挙げている点など、フランス漫画市場について詳しいので興味深い記事です。
韓国が何故成功したかがわかる番組「ウェブトゥーン帝国の誕生(KBS)」の紹介
これは、テレビ番組そのものが見れないので、是非邦訳して放送してほしいなと思うのですが、ともかく、韓国でもこうした番組ができる状況ということのようです。NHKクロ現的なものですかね。
アシスタントにも「印税」払います 漫画制作の〝明朗会計〟にクリエーター応募殺到
Webtoonスタジオの立上げと同時に、印税を制作関係者に支払うことをオープンにしたNo9社ですが、1月末までに125名の参加希望者が殺到とのことです。
taskeyのWebtoon(ウェブトゥーン)制作工程を大公開!【ネーム/下書き/着彩画像あり】
Webtoon参入組の一角taskey社ですが、人材募集記事の前書きとしてWebtoon制作工程について詳細に公開しています。工程図のほかに、実際の制作画像なども入り、とても出来が良かったです。
ところで、こういう工程の際に使われる「写植」という言葉ですが、今は本来の写植とは程遠い工程になっているのですが、変わらず同じ言葉が使われるのは面白いですね。ちなみに「ネーム」の工程も、そのWebtoonの系譜によって一部では「コンテ」と言われるケースもあったりします。
NOKID inc. ウェブトゥーンとアニメーションの新会社設立のお知らせ
また新たなWebtoon参入です。
NOKID社は、ソラジマ社同様Youtubeアニメなどを制作してた会社ですね。この界隈はクリエイティブ制作の布陣が近いので、Webtoonに参入しやすいのかもしれませんね。
電流協オープンセミナー
「縦スクロールコミックで日本のマンガビジネスはどう変わるか?」
というわけで、今週もWebtoonニュースが多かったですが、PodCastの相棒芝辻氏が、3/2に開催される電子出版制作・流通協議会(電流協)のウェビナーに登壇します。
他の登壇者も豪華なのですが、内容的にも今日のトップニュースになったようなWebtoon世界展開の話などを中心にするそうです。非会員でも無料視聴可能ですので、是非。
メディアドゥ、VR法人HIKKYへ5億円出資・業務提携を開始/メタバース領域で読書の新たな体験価値創出、市場拡大を目指す
これは金額的にも業界絵図面的にも非常に大きな動きとなりそうです。
電子書籍取次最大手のメディアドゥが、国内のVR関連最大のイベント、バーチャルマーケット(Vket)/ComicVket等を運営する、HIKKY社と資本業務提携をしました。
ComicVketは、コロナ禍の影響もあって、コミケに代わるバーチャル空間の同人誌即売会などと期待されるところも大きかったと思いますが、実際にはプラットフォームとしてVRChat等を使用するが故の表現の制約などもあり、ビックサイトでリアル開催されるものに寄せていくのは、なかなか難しいものがありました。
とはいえ、開催ごとに内外から数十万人が訪れる、巨大バーチャルイベントを運営する実績があることは確かです。VRイベントの運営は、営業的なことも重要ですが、技術力が非常に必要とされるものなのです。
また、メディアドゥも新サービス「コミなびVR」や「XRマンガ 北斗の拳」などのVR/XR施策を打つなど、この分野に積極的です。
技術力のHIKKYに対して、出版社やアニメ制作会社などのIPと近く、資本力もあるメディアドゥが組むのは強者連合ですね。これからの打ち手次第では、非常に面白い動きと言えましょう。
以下IMARTのプレカンの中ではComicVketについて説明してます。動画では31:50くらいからです。リンクは既に頭出ししてます。
また、私が虎の穴お手伝い時代に受肉(画像中薄紫のぎくしゃくしたのが私です)して、ComicVketの出店レポートをしたのが以下動画です。あの九条林檎様ほか、ComicVket関係者の皆様と絡ませていただきました。
九条林檎様(くじょうりんごさま)は、「様」まで入れて呼称です。HIKKY社が何をしているかの一端を垣間見れますので、ご参考までにどうぞ。面白い会社さんですし、取組だと思います。
株価急騰「KADOKAWA」異色メディア企業の実像
<会員登録すれば無料で読める記事です>
KADOKAWAの業績が好調で、株価も急騰とのことで、面白い記事が出ていました。
『鬼滅の刃』のような爆発的ヒット作がなくとも、(各部門でのシナジーも相まって)「垂直統合なりの利益」を取れることが良さだ。
と、言い切ってらっしゃいますが、年間5000点にのぼる新規IP(って、5000は多いですね。カクヨムとかも込みかしら?)ですとか、なにより他の大手3社には無い、上場していること、ドワンゴなどのIT企業を内部に取り込んでいること、などの特徴をあげれば本当にユニークな存在です。
海外施策や、かつての総合商社を彷彿とさせる三国間コンテンツビジネス等、見どころ多い記事ですので、是非ご一読を。東洋経済Plusは、会員登録すればだいたい全部読めるのと、最近エンタメ記事に力を入れてるので、マンガ・Webtoon界隈の方にはおすすめです。
“電撃コミック レグルス”初の電子書籍フェア開催! 大型割引、試し読み大幅増量も実施!!
昨年2021年9月にKADOKAWA電撃系を集約する形でできた「電撃コミックレグルス」ですが、レーベルとしての割引フェアを開始しています。その数55作品と、新レーベルと思えないものですが、それもそのはずです。
例えば、現在アニメ放映中の『リアデイルの大地にて』をもとに追いかけてみると、この作品はマンガとしては2019年7月に、Webデンプレコミックス(電撃プレイステーション別冊Web版?)で連載開始、同Web媒体がレグルスとなった後はそこで連載という形です。この55作品の中にはデンプレ以外の系譜の作品もあり、電撃EXや他レーベルなどがレグルスに集約されていることが見て取れます。
KADOKAWAは巨大サイトComicWalkerの中にすべての作品が総花的(レーベルの差はなく、同じような形で)に置かれていたわけですが、この影響力が高くなったことで、もともと細かく別れていたレーベルの影が薄くなり、そこに改めて、レグルス、アパンダといった新レーベルが、細かい旧レーベルを集約して立っている履歴がわかるところでした。
業界初のマンガファンみんなで”マンガのキャラクター”を讃えるアワード「マガデミー賞 2021」、ノミネートキャラクター全17名を発表
もしかしたら初めてではないかもしれませんが、これを電子書店のBookliveが開催するというのが面白いなと取り上げます。
マンガにおいては、作品はもちろんですがそのキャラクターも重要です。そのキャラクターをアカデミー賞の俳優のごとくアワードとした取り組みということですね。自分が良く使う電子書店がこういう取り組みをしたら、楽しそうです。
Akamai脅威レポート:世界的な海賊版の需要、業界、地域の傾向が判明
ITセキュリティ企業Akamai社のレポートですが興味深かったです。2021年1月から9月の9か月間で、著作権侵害サイトへのアクセスが合計1320億件あり、その内訳は、、、
テレビ 670億アクセス
出版 300億アクセス
映画 145億アクセス
音楽 108億アクセス
Game等 89億アクセス
とのことで、アクセス数だけ見ると圧倒的に映像系が多く、出版はそれに続くものとなってるようです。サブスク全盛の音楽は少なく、意外にGameも少ないのですね。音楽とGameはビジネスモデルの変化が大きいのだとは思います。テレビを違法に見るということは、これはこれで深刻ですね。
著作権データベース一元化
文化庁「メタバース」にらむ
<日経の会員限定ですが、登録すれば無料で読めます>
文化庁による著作権処理の簡素化への取り組みで、すべての版権問い合わせの一元化を目指すとのことです。現在、各出版社などは版権管理の窓口を、ネットや電話などで開いていますが、これを他の版権と一元管理したところから受けるということを目指す取り組みのようですね。
マンガやアニメなどの版権は複雑なものも多く、JASRACなどがすでにある音楽などと同じように扱われるとなかなかに大変ではないかなと思いつつも。確かに出版社の総合窓口などに問い合わせすると、割としっかりしたビジネス目的でも、黙殺されることも多く、実務として現実的な整備なら目指してもらっても良いかなぁというところです。
例によって、だれがこれをとりまとめるのかということが重要そうですね。ちゃんとわかってる方にお願いしたいところです。
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【告知】
今回のNewsのうち、以下の2本を、2/14週のうちにPodCastでより深堀します。
「韓国国内で不評の『7FATES:CHAKHO』は果たして成功したのか?」
「メディアドゥ、VR法人HIKKYへ5億円出資・業務提携を開始/メタバース領域で読書の新たな体験価値創出、市場拡大を目指す」
の、深堀りの予定です!よろしければご視聴ください!
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