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【マンガ業界Newsまとめ】なんだってー!?樹林作品『サイコメトラー』SMATOON化・Web雑誌創刊続く舞台裏 など|7/24-061

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。

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往年の名作がSMARTOON®︎になって連載スタート!「サイコメトラー 超感覚探偵」7/21(木)ピッコマで独占配信開始!

サイコメトラーと言えば、『MMR』や『金田一少年の事件簿』などの樹林伸さん(本作『サイコメトラー』シリーズでは、安童夕馬名義)原作の往年のヒット作品群の一角です。これを、ヒットメーカーレッドセブン社が入り、ピッコマのフラッグシップスタジオpiccomicsが出版社となっての発表です。

往年の名作がWebtoon(ここではSMATOONなのですが、読みやすさ優先)で新作展開ということなわけですが、ここには色々と込められた意味があると思います。

まず、見たままと言えばそれまでなのですが、この座組は「漫画を原作にしてWebtoonを作って」います。つまり「漫画」が「原作」になっているのです。(進次郎話法)漫画を原作にアニメを作るのに近い座組の構成です。

ただし、漫画はそのままコマの切り貼りと着色してWebtoon化しても面白くなりにくいというのも、制作現場では既に定説化しています。内容のシンプル化、台詞の簡素化、テンポを上げるために構成を大きく省く、キャラクターのリデザイン、などなど多くの改変が必要とされています。

本作は第0話にプロローグを入れて、往年のファンならみんな知ってる、しかしピッコマ上でサイコメトラーを初めて見る新ファンには新鮮であろう設定を説明、そのうえで私たちには見覚えのあるお話がWebtoonとして最適化されたうえで、展開しています。

これは、Webtoon完全オリジナル作品でもなく、Web小説原作でもなく、知名度の高い漫画をWebtoonに変換して仕掛けられている作品で、今後この形は試行錯誤が繰り返されていくと思います。日本市場においては、マンガファンにWebtoonを見せながらも新しく若いファンを獲得することにもつながります。

グローバル展開においては、既にアニメで知名度を高めている作品やキャラクターを軸に、白黒横漫画をどうしても読んでくれなかった海外ファンに、読みやすいWebtoonの形で届けることも有望そうです。

Webtoonを作るのは漫画より予算がかかるのも定説ですが、同時にアニメよりははるかに安く作ることができます。このあたり、日本漫画×Webtoon展開の今後において試金石となる作品が始まったと言えるのではないでしょうか。


モーニング・ツーがWebマンガサイトとして再創刊、8月4日より毎週木曜日に更新

Newsそのものは、モーニング・ツーがWebマンガサイトとして再創刊というものなのですが、ここには現在の漫画を取り巻く環境が、アプリからWebへシフトしていっている文脈が読み取れます。

講談社では先行して、&Sofaがアフタヌーン編集部より昨年創刊しています。構造としては、ComicDaysという講談社が持つマンガを読めるプラットフォームをいわゆるバックエンドとして、ガワとしての雑誌の表紙にあたるページを新設し、裏側の作品掲載の仕組みはComicDaysの既存システムと共通化しています。

これと同様に、KADOKAWAにはComicWalkerというWebで漫画を読める大型PFがあるわけですが、ここには「電撃コミック レグルス」や「MF系 アパンダ」と言った、旧電撃系、旧メディアファクトリー系を統括した媒体ページが存在しています。ここでも、前述の講談社同様作品を読むバックエンドを共通化しながら、雑誌のガワの部分を、各編集部や事業部が作っている形ですね。

2010年代の電子コミック成長期において、コミックアプリを各社が作るトレンドが続きましたが、20年代に入り、Web広告によるユーザー獲得単価の高騰と、国内においてアプリはWeb広告以外に新たなユーザーを獲得する方法が無いという問題から、上記のWebシフトがひたひたと進んでいます。

この次の流れは、こうしたWeb雑誌が単純な認知向上に留まらず、読者などのデータを取ったり、より多くの販売機会に繋がる動きをしていく流れで、著者の所属するコミチがヤンマガWeb上で行っている、「新しい雑誌の定義」なのですが、長くなりますのでこれはまたの機会にて。ご興味ある方はお問合せ下さい。


DMMがMastercardの取り扱いを突然終了へ いきなりの発表に利用者から困惑の声、もちろんFANZAも

諸条件が折り合わず、masterカードがDMMのサービス上で使用できなくなったということなのですが、これは先の参院選で焦点となった「表現規制問題」の別の形となってきています。

クレジットカード会社(決済会社)は、アダルトや過激な表現をしているサービスで決済を認めていると、第3者から「こんな〇〇なコンテンツを販売する企業の決済をするということは、貴社はこの表現に賛成しているのか?」などと問われるリスクにさらされています。

これに対応するため、決済会社はおおまかに「アダルト表現」と括ったり、より細かい場合では「〇〇」という言葉が入るページは決済を認めない。というような通達をするケースがあります。

この禁止ワードが、例えば「ロ〇コン」であったり、少し前のブームだと「催眠」など、コンテンツでトレンドとなるワードが禁止されたりしていきました。プラットフォームやクリエイター側は、使いたい言葉に〇を入れて作品の紹介をしたりなど、追いつ追われつです。

今回、詳細はわかりませんが、masterカードが、アダルトコンテンツについて、何らかの条件で決済を認めないという措置に出たと推測されます。これは、国や法律ではなく、決済会社による表現への圧力とも取れますね。続かなければ良いなとは思うのですが。


「漫画BANK」摘発の舞台裏 中国農村に住む運営者を直撃 驚きの言い分とは…

先週のまとめでは、告知で紹介させていただきましたが、今回のクロ現では、実際に「漫画BANK」を運営していた人間を重慶まで取材しにいってまして、このサムネのおっさんが、漫画BANKをやっていた人なのですね。

その動機、開始した経緯、訴追があってからの対応と、その後の日本側の対応など、生生しい表現が続いています。この番組の見逃し配信は、NHK+で7/26の20時くらいまで無料視聴可能です。業界関係の方は、是非ご覧ください。少なくとも、↑の記事はご確認ください。


今週のWebtoon新規参入

先日発表されたトゥーンワークス社の新作『俺のターンは終わらない』ですが、この制作協力として「リンクベリ社」が名乗りを上げたリリースです。会社Webによると、2D3Dの映像制作やゲーム開発などしている会社とのこと。


こちらは直接的なWebtoon参入の記事では無いのですが、グッドコミックというアプリ不要の電子書籍ストアをオープンするというリリースです。

同社の所在地が、先日HykeComicをリリースしたアカツキ社と同じであったため、関連サービスなのであろうと思われます。


海外News

ユニコーン企業とは、未上場で企業価値が10億ドル以上ある企業をここでは指しています。香港上海銀行等がユニコーン企業を各国に何社あるかとレポートを作っているのですが、韓国には12社ユニコーン企業があり、どうやらその中にWebtoon関係の企業もあるようです。

そのうちの一つと目されるのがRIDI社で、以下の記事にあるように10億ドル以上の企業価値を算定されています。

非上場企業を中心に、制作・編集権の独立を基本とする日本の出版界とは一線を画す、現在のWebtoonまわりの動きですが、日本からもこうした規模感のWebtoon企業がどんどん生まれると良いですね。


韓国の投資運用会社が、傘下のWebtoon計企業「テラピンスタジオ」を通じ、同じく韓国系Webtoonプラットフォームであるトゥーミックスを1億6000万米ドルで買収したとのこと。金額が大きいです。

プラットフォームを買収するという行為は、単純に販売網を広げるだけではなく、そのPFが得意とするエリア・領域のユーザーにアプローチする方法を得たり、場合によってはクリエイターとの接点を作るなどの意味もあるのですが、この辺り国内においても活性化を期待したいところではあります。


韓国でも、ウェブトゥーンそのものの歴史を追うことを学問・研究として確立しようというニュースです。

日本でも、1995年に京都精華大学で漫画を教えるコースが出来たと話題になり、それが学科となり、学部となり、修士、博士課程が出来ていくまでに20年くらいの歳月がかかっています。その間、従前は社会科学系の範囲で研究されていた、マンガの制作技術以外の、表現や社会への影響など、様々な研究がなされてきています。

現状を考えると、韓国ではもう少し短くなりそうには思いますが、同様に単純な制作技法以外のWebtoon学問も確立していくと思われます。


この辺りは、日韓でも洋の東西を超えてもずっと課題になり続けるところですね。

ローカライズに積極的な韓国Webtoon業界でも、足元の国内からこうした不安があるのですね。これは悪いことというより、どこであろうと時代に合せていく折り合いをつける必要が出てくることでもあり、合せないで貫くこともあり、表現に関わる側が悩み続ける問題だなと思う次第です。すいません、何も言っておりません。勧善懲悪には語れない本当に難しい問題なのです。


ちょうど先週まで、フランスのパリではJAPAN EXPOが開催されていまして、この中で良く日本以外の韓国や中国のコンテンツなども紹介されていた時期が続き、「実質、ASIA EXPOになってるんじゃないか?」という声もありました。このニュースでは、「アメイジング・フェスティバル」ということで、また別のイベントとして立てつけているみたいですね。


国内News

制作中のWebtoonを、PC上でもスマートフォンのような見栄えで見ることが出来るもの。その他、プレビューや校閲などの機能があるようです。


全3回のうち連載記事第3回です。

この週は、韓国のWebtoonスタジオの成り立ちから、現在の日本のWebtoonスタジオとは、そのかたちがかなり違うということが丁寧に書かれています。

個人的には、日本のクリエイターにとって良いかたちになれば良いなということと、ヒット作品が生まれる形がはぐくまれて欲しいなと思います。


comicoによる新人賞なのですが、原作コンテストになっています。取り上げさせていたのは、このコンテストが「Nola」という小説家専用のクリエイター支援ツールとセットになっているようなのがユニークと感じたためです。

小説家の制作支援ツールは、アイディア出し、構成づくり、校閲など、様々なツールが以前からありましたが、Webtoon原作制作に向けて、プロットづくり、登場人物管理、執筆などをサポートしてくれるようです。

また、出てきた原作のWebtoon化も、comicoがサポートするとのこと。スタジオ的な機能が、コンテストに含まれているところもユニークです。もちろん、そこから販売へも展開するとのこと。

原作募集というアプローチは、ヒットしたWeb小説を原作にする考え方とは一線を画しますが、長年国内でWebtoonに携わってきたcomicoが、ここにきて、この制作ツールとコラボする新人賞を行うことは、非常に気になったところでした。


これはもう、とても良い記事でしたので通しで読んでいただきたいなと思います。最近では『俺だけレベルアップ』のアニメ化を発表したアニプレックス社ですが、大きな会社ですけども、アニメを売っていくことにおいては名人芸的な動きをするなと思っています。


記事のみ紹介


告知関連

東京トイボックスシリーズ「トイボ展」 開催のお知らせ

トイボ展
【会場】〒171-0052 東京都豊島区南長崎3-4-10 味楽百貨店 1階「E Gallery」「マンガナイトBOOKS」
【会期】2022年7月28日(木)〜8月28日(日)


注目の「台湾マンガ」が東京・日本橋に集結!

台湾漫画喫茶(たいわんまんがきっさ)
【住所】東京都中央区日本橋室町3-2-1コレド室町テラス2階
【営業時間】11:00〜20:00
【会期】2022年7月28日(木)〜8月28日(日)

厳選された台湾マンガ35作品の展示販売および、併設の台湾茶ドリンク専門店「HAPPY LEMON」にて限定メニューが展開。8/13には台湾在住の漫画家・高妍さんのトークショーも実施。


ライトノベルとWebtoon(縦スクロールコミック)の未来

【講師】:三木一馬(ストレートエッジ代表 )× 山田凌央(HykeComicプロデューサー兼ディレクター)
【住所】角川第1本社ビル・2Fホール(東京・飯田橋)
【開催日時】2022/8/29(月) 19:30~2022/8/29(月) 21:30
【会期イベント受付開始時間】 2022/8/29(月) 19:00~


アニメとマンガの深い関係とは…? ウェブトゥーンはどうなる?

先週告知させていただいた、藤津亮太さんの「アニメの門チャンネル」で、デジタルコンテンツ白書のマンガ部分書かれいてるまつもとあつしさんと2人で、マンガーアニメの現在の関係について色々お話ししました。直近の数字なども拾ってきて話していますので、面白い感じになってるかと思います。


―――(編集後記)
今週嬉しかったのが以下のリリースです。所属するコミチで開発、デジタルマーケティングをお手伝いしているベストカーWebが、運用4年で1億PV突破、サポート期間中に約200倍くらいの規模まで成長したというニュースです。

代表の萬田さんもこういうことを言っています。

このベストカーさんでの順調な推移を見て、コミチはヤンマガWebで同様に開発・デジタルマーケ・運用をさせてもらうことになりました。そこから作ったコミチ+という漫画雑誌のWeb化パッケージも、やっと来月には1号展開をご報告できそうです。
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主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに別途特集を書きます。マガジンTwitterのフォロー、よろしくお願いします!

現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。

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菊池健
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