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【マンガ業界Newsまとめ】俺レベアニメ化、DMM-GIGATOON、フーモア他、進む日韓のウェブトゥーン連携、など|7/10-059

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。

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韓国Webtoon人気作「俺だけレベルアップな件」アニプレ&クランチロールがアニメ化

ついに『俺だけレベルアップな件』のアニメ化が正式に発表されました。
座組としては、プラットフォーム(PF)がクランチロール、製作アニプレックス、制作A-1 Pictures、そしてもちろん原作が韓国REDICEという形です。

ちょうど日本では『梨泰院クラス』の日本ローカライズ版『六本木クラス』がTV放映中で話題です。この『俺レベ』の座組は、Webtoonとしての原作は韓国製で、これが日本のPFであるピッコマで大ヒットし、日本でヒットした作品として、日本のアニメ会社が製作・制作を行い、日本系アニメPFとも言えるクランチロールから配信されるところは、新しいものとなっています。

上記の経緯で韓国原作を日本アニメ化して世界展開するというのは、珍しい形ではあり、この型が成功するかどうかは注目したいところです。とはいえ、『鬼滅の刃』で世界に向けての仕掛けを成功させたアニプレックスの製作ですので、信頼感があります。

なお、『俺レベ』は国内で紙コミックス化する際にKADOKAWAから出版しており、そのKADOKAWAには、ピッコマの親会社であるカカオから8%以上の出資が入っていると伝えられています。(カカオはKADOKAWAの筆頭株主)

また、アニメ側から見ると、クランチロール - アニプレックス(SONY) - KADOKAWAのラインもがっちり垂直に資本業務提携されており、蓋を開ければかなり手堅い原作調達から、製作・制作・配信という流れの座組になっています。


DMMグループのウェブ縦読み漫画スタジオ「GIGATOON Studio」韓国大手KidariStudioと業務提携を締結

DMM社のGIGATOON Studioは、韓国KidariStudioと業務提携をしました。

KidariStudioは、レジンコミックス向けの男性向け作品を制作しています。こうなると、同系列で、レジン作品を多く扱っているFANZA-EROTOON側への作品提供に繋がるというストーリーが見えてきます。

男性向け成人分野では非常に強いFANZA内のアダルトWebtoonであるEROTOON向けに、より強い作品が多く提供されていきそうですね。日本の成人向けジャンルの出版社や同人作家との動きなども、どうなっていくのか注目したいところです。


韓国webtoon大手のGOLEM FACTORY、フーモアと共同制作に関する戦略的業務提携締結

小説制作やWebtoonスタジオとしてヒット作品も制作するGOLEM FACTORYと、近々ではHykeComicへ作品提供を開始したフーモア社が「共同制作」を行う提携を発表しました。

Webtoon参入宣言以来「アニメ制作会社で言う所のufotableのような、ハイエンド制作会社を目指す」としてきたフーモア社ですが、ハイエンド制作会社に欠かせない「強い原作」を獲得するための一つの手段として、韓国GF社との共同制作ということなのでしょう。

強い原作は、プラットフォーム上での交渉材料として強い手札となりますので、そうした狙いに向けて着実に地歩を固めているといったところでしょうか。


ここまで、「俺レベアニメ化」「DMM GIGATOON」「フーモア」と、Webtoon界隈での、日韓の大きな動きが続いています。恐らく「間違ってないWebtoonの手立て」は、このあたりにあるのではないでしょうか。



苦境のNetflixが日本のマンガ発コンテンツを次々に投入、反転攻勢の“起爆剤”になるか

世界的なサブスク動画配信サービスの競争激化と、その中でユーザー獲得の鈍化から苦境が伝えられているNetFlixですが、日本の漫画原作に期待するところが多いということで『ONE PIECE』や『今際の国のアリス』など、大きな予算で実写化に向かっていることを報じています。

また、一部業界内でのみ有名だった、突然北米で支持され話題となった漫画家伊藤潤二さん作品の、その名も「アニメ伊藤潤二『マニアック』プロジェクト」からの2023年アニメ化ということで報じられています。国内でも知る人ぞ知る作家であった伊藤潤二さんが、ひと頃から北米でカルト的人気を誇り、当時の『進撃の巨人』など、いわゆるヒット作品と張る人気を誇った経緯から、北米圏を狙っての掘り起こしとなったようです。

そうでなくても、アニメ化などで原作とされてきた日本漫画ですが、改めてその注目度が高まり、より深く掘られていくようです。こうした時は「マンガ図書館Z」の作品などは、アニメ制作系の会社さんにとっては掘ると金鉱になったりするんじゃないかなと思ったりします。


日本漫画家協会、インボイス制度に反対声明 “本名バレ”のリスクなど指摘

7/10の参院選の争点のひとつにもなったインボイス制度について、日本漫画家協会からの声明です。特にこの声明は最近理事になられた、過去の漫画家協会の理事年齢層からすると「若手」の理事による動きのようです。

全国に1500万人規模とも言われるフリーランサーや小規模事業者にとって「増税」「手続きの煩雑化」「取引関係解消の危機」など、一般的にも様々な問題があるインボイス制度導入ですが、漫画家においてもそうした個人事業主が大半を締めます。

その際に「身バレ」することの危機も同時にあるということで、もう一個追加して困るのが漫画家だという特殊事情もあり、2023年の施行に向けて、改正の争点になりそうな部分が多々あります。このあたり、協会からの積極的な発信などをもとに、今後も働きかけが必要な部分かと思います。

この問題は人によって観点が違っておりまして、
「自分は本名でやってるから身バレは良いけど増税はやだ」
「増税も事務作業も構わないけど、身バレだけは絶対にいや」
「事務作業、これ以上勘弁して。作品作りに集中させて」
など、漫画家の中でも色々な意見がありそうです。

このあたり、協会の方に様々汲み上げていただき、上手く進めていただきたく、変な分断はなきよう調整を続けることが大変なお仕事になりそうです。何卒です。


今週のWebtoon新規参入

株式会社エヌ・エフ・トゥーン社が、日本デザイナー学院と業務協約を締結し、同校の就職機会提供などを目指すとのこと。

NFToonという名義だと、NFTまわりではいくつかの動きが海外に見えます。同社とこの海外の動きが同一か確認が取れないのですが、いずれにせよNFToonというウェブトゥーンスタジオが国内で活動をしていて、その情報初出がこの専門学校との業務協約であったということのようです。


オタライゼーション社が、日中漫画家を支援する形でウェブトゥーンスタジオ「アルトコミックスタジオ」を立ち上げるとのこと。

「オタライゼーション」という社名は、同社Webによると、
「日本のOtaku文化を世界各国の言葉にLocalizeして、世界中で楽しんでいただけるようにGlobalizeする、『世界をオタク化する集団』」
という意味だそうです。なるほど。


海外News

WEBTOON CANVAS」という、日韓をのぞく多言語向けWebtoon-CGMサービス(クリエイターが自分で作品を掲載し、販売できるサイト)をNAVER系のWEBTOON社が運営しています。そこに、先日同社と提携したセルシス社が、CLIP STUDIOで連携するというものです。

クリスタをこのサイト上で購入出来たり、実は動画も作れるクリスタの機能から、直接動画を流し込むなど出来るようです。

セルシス社2021年のIRによると、クリスタ関連売上は既に70%以上が海外となっており、今後もこうした提携からより一層加速化していくと思われます。既に国内の制作者でクリスタを使わない人は少数派となっており、セルシス社の狙いと、良い作品を作り作家を囲い込みたいWEBTOON社(NAVER社)の狙いは、合致しているものと思われます。


NAVERウェブトゥーンが系列会社であるMUNPIAに147億ウォンを追加出資するというNewsです。日本でも多くの電子書籍プラットフォーム(PF)があり、スタジオも沢山出てきていますので、ここのところ続いているこうした動きは、これからも内外で多く起きていくであろうと思われます。


Netflixと韓国Webtoon原作提供の関係性、および韓国のコンテンツ振興院(KIOCCA)の動きについてコンパクトにまとまっています。日本でも漫画原作とNetFlixの関係性は良く取りざたされますが、韓国の場合はこのKOCCAの良い動きが上手く相乗効果を出しており、日本のクールジャパン系の動きはここをモデルにしていただきたいなぁと切に願うものであります。

KOCCAは、Webtoon全体の市場規模について、作品売上の他に、映像化などのIP展開も含めた市場全体の数値を調べて発表しています。日本の漫画市場のデータは、作品販売売上のみで発表される、歴史的経緯があります。

日本の政府・行政系の動きとしては、成果の上がらない事業支援は手控えても、こうした市場調査による基礎情報整備などの、外れの無い側面支援などについて力を入れて欲しいなと思います。


韓国で翻訳の教育を受けた人たちの就職先として、Webtoonやコンテンツの翻訳を現場研修を提供するなどして連携するというもののようです。このあたり、韓国はやはり国ぐるみが強いです。


BTSのWebtoon化については、何度か本まとめでも紹介しましたが、その際に名前の出ていたBTSをプロデュースするHYBE社側からの狙いを語る記事です。

BTSのWEBTOONが商業的に成功したかどうか?という声に対して、NAVER×HYBE×BTSの中でのWebtoonやNFTの取組は、単体の売上というよりは相互のユーザーをやり取りする包括的な取り組み。ということなのだと思うのですが、ここではもうちょっとゆるっとした感じの内容の紹介にとどまっています。


中国製Webtoonが、国内大手電子書籍プラットフォームのBookLiveで好調とのことで、中国で発展しつつあるWebtoonをベースとしたマンガ動画の取組や、中国作品の日本におけるIP展開を日本の大手PFを経由して行うなど、見どころが多くありそうです。


Twitter買収を合意したはずのイーロンマスク氏とTwitter社ですが、マスク氏が要求するスパムアカウントの情報提供が認められず、買収取りやめという話が持ち上がり、違約騒ぎとなっているようです。マンガに影響力の高いTwitter社の動向は、日本マンガ業界にとっても重要であり、ここからでもなんとか上手く良い方向でまとまって欲しいところですが。。


「ジェームズ・ボンドがコメディでハートウォーミングな物語だったら?それがSpy&Family」という一節が非常に良いなと思います。


国内News

公開中で好調とされる映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』に絡んで、集英社に2016年に設置された「ドラゴンボール室」の紹介記事になっています。

ちょうど2010年代半ばあたりから、出版社の売り上げ構成として、本の売上以外の版権収益、いわゆるIP収益が爆増していました。中でも、ドッカンバトルなどの大ヒットゲームを出したドラゴンボールはその筆頭で、世界的な認知度もあって、IP活用推進のために生まれた同部署です。

今回の映画の好調さとクオリティを見ると、取組が順調に推移していることを感じます。


集英社の人事ニュースですが、「機構改革」と称して新部署の発表がなされています。

総務部内にあった「情報システム室」を、新設する「情報システム部」に移管とのこと。IT/ネットまわりの強化がうかがえます。
また、新規事業開発部には「事業連携室」を新設し、NFTやXRといった、新しい取組名に改称しています。出てきている部署名が、最近新たに集英社が動いていて、当Newsまとめでも過去に紹介させていただいていたところも多く、今後の発信が待たれるところです。

人事ですが、集英社内でも大きな要の存在である、週刊少年ジャンプを管轄する「第3編集部」の担当取締役が元ジャンプ編集長の瓶子吉久さん(編集長在任中に『鬼滅の刃』などを輩出)で、目新しいところとして、第3編集部の新部長として、元ジャンプSQ編集長で『NARUTO』を立ち上げた矢作康介さんの名前が見えます。

10年ほど前に書いたのですが、矢作康介氏のインタビュー記事は、こちら。


先日、ECや新事業fantiaの好調で初の300億円越えの売上を発表したとらのあなですが、その少し後のタイミングで、今度は旗艦店であり創業の地でもあった、秋葉原の店舗を含めた主要店舗を、女性向けの池袋店を残して引き上げることを発表し、界隈がざわつきました。

同人誌を購入する読者や、提供するクリエイターから見て、全国に広がるとらのあなの店舗は、売買の起点として長く存在し続けたものであり、一種の郷愁のようなものも伴う強い存在感のある場でした。

また、出版社、業界側から見た場合、とらのあなの店舗はいわゆる「マンガ専門店」の一つにカテゴライズされ、中でも成人向けやそれに近い作品の販売現場として男女向け問わず貴重でした。

世の中が『鬼滅の刃』ブームで、どこの書店でもキメツキメツと大騒ぎだった時に、とらのあなでは『五等分の花嫁』が一位だったり、女性向け各種の作品も細やかなラインナップで販売されておりました。


本屋で新しい本と出会いたいか?あらかじめ買う気で来店した人が欲しい本をすぐに手を取れるようにするか?どちらを目的に来店するお客さま向けに対応するのかという、悩ましいところですね。


アニメ製作会社アーチ社のWebtoon初出はピッコマ向けでしたね。アニメ系の良さを生かし、非常に美麗な作品に仕上がっているようです。アカツキ社からの出資のお話もありましたが、まずはスマトゥーンからということのようです。


メディアドゥ社が直接運営する「コミなび」という電子コミックサービスを起点に、クレディセゾン社と業務提携し、購入額の50%ポイント還元するなどの取組を進めていくというものです。

メディアドゥグループ内には、フライヤーというビジネス書籍要約サービスがあるのですが、ここでも個人向け以外に法人向けのサービスを行ったりしていました。電子書店の競争が年々厳しくなっていく中で、B2CからB2Bに活路を求めたものではないかと理解しています。

実は、わたしはも以前この「コミなび」を運営する部署に所属しておりまして古巣になります。ここでは敢えて、何も中の人には聞かずに書いていますと一応念のためです。


図鑑分野が好調というのは以前から伝えられていることなのですが、更にそこにキャラ立ち要素が入り、キャラやストーリー性を付けた細分化がなされている過程が非常に日本っぽいですね。良きかと。興味深いです。


なんだか最近、私の半径数メートル内のごく一部で話題になってるのですが、北海道の書店で万引きが起きると、なぜか作品のタイトルまで事細かに報道されるので、我々Newsまとめ人界隈(日本に数人いますw)のニュースまとめのネタ探しの際に、都度目に入っちゃって気になるんですよね。

なぜ、北海道の万引き犯ニュースだけ、盗難書籍の作品タイトルを入れるのか、謎が深いのです。なぜなのでしょうか。


Webtoon界隈の出版文脈で中の人感がある、とても良いエントリーでした。かなり解像度の高い説明があるのですが、マンガにもビジネス的な抽象化にも手練手管を発揮する著者の「そこらへんの漫画家」さんは、ホントに何者なのだと思います。

本当に知りませんので、この件で「この人は誰?」と私にお問合せになるのはおやめください。本当に存じませんのでお問い合わせはご本人Twitterへ直接どうぞ。本当に誰なんですか?

ここに抽象化されたWebtoonのビジネスとしての側面は、本当にその通りで、見回すとビジネスサイドの方々では、こうしたことを重々承知したうえで戦略的に取り組んでる方から、さっぱりわかってないけど、なんかWebtoon流行ってるからやってみよーぜーという方まで、濃淡が果てしないグラデーションとなっているのが現実かなと思っております。

事業者はその点自己責任で良いとは思うのですが、これに伴ってクリエイターさんたちが酷い目に合うという事例が身近でも散見されるようになり、そのあたりなんとかならないかなと思い始めております。


記事のみ紹介


告知関連

開館2周年記念展示「漫画少年 大展覧号―幻の雑誌 完全揃い101冊―」|トキワ荘マンガミュージアム

会期:2022.7.7 (木) ~2022.10.16 (日)
開館時間:10:00-18:00
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌平日)
入館料: 無料 ※事前予約優先制
「漫画少年」など沢山展示されるみたいで、オールドファンには眼福になりそうです。


手抜きなんてとんでもない!「マンガの相棒」トーンの魅力を伝える珍しい展示会

■会場:明治大学 米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館 1階
https://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/
■期間:2022年6月17日(金)- 10月3日(月)
■開館日:月・金14:00 - 20:00、土・日・祝12:00 - 18:00
■休館日:火・水・木(祝日の場合は開館)、7月22日(金)- 25日(月)
先日「タモリ倶楽部」でトーンの特集してたのは面白かったですね。


世田谷文学館で「漫画家・山下和美展」 初公開のデビュー前作品も

「漫画家・山下和美展 ライフ・イズ・ビューティフル」が7月30日、世田谷文学館(南烏山1)で始まる。開館時間は10時~18時。月曜休館。入場無料。9月4日まで。


―――編集後記
選挙終わりましたねー。お疲れ様でした。
そして、赤松健さんの当確でましたね。
速報記事がナタリーさんからも出てました。
今回はやはり特別な選挙だったと思います。
今度は、政府与党内での実務フェーズが始まりますね。頑張っていただきたいです。

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