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【マンガ業界Newsまとめ】「ちゃおデラックス」休刊と「増刊号」の役割 など|9/29-170

マンガ業界ニュースの週1まとめです。
マンガ・アニメの業界カンファレンスIMARTを主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関連のニュースを、ビジネス系を中心に、短時間でチェックしていただけるようにまとめています。
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「ちゃおデラックス」休刊と「増刊号」の役割

少女漫画誌「ちゃおデラックス」休刊ーー新人漫画家の“育成の場”である「増刊号」は役割を終えたのか?

少女漫画誌「ちゃお」の増刊である「ちゃおデラックス」が休刊し、掲載作品がWeb版の「ちゃおプラス」に移管とのことで話題になっています。
最近のこうしたReatlsoundさんの記事は切り込んでいて良いですね。

さて、記事には増刊号の役割は「新人育成の場」とあり、その通りだと思うのですが、ここについて少し切り込んでみます。

増刊号と申しますか、一つの編集部が本誌を持ちながら複数の雑誌を出すことにはいくつかの意味があったと思います。

1, 新人育成の場
2, 本誌ですくいきれない雑誌の特徴とは違う作品の掲載
3, もう全くの別レーベルを同じ編集部で持つ

1は記事の通りです。この話題の中では連載作品を取り上げていますが、もうひとつ、新人作家の登竜門である「読切」を載せる場としても増刊号の役割は大きかったと思います。週刊少年ジャンプ(以降WJ)だと、旧赤マルジャンプ(後のジャンプGIGA)などがその特徴を強く持っていたと思います。

2は、いわゆる本誌連載とは作風の違う作品を並行連載したいときの場としての機能です。例えば、青年誌に女性向け作品を載せるとか、週刊や月に2媒体のペースだと厳しい作家のペースに対応して、季刊(年4回)の増刊に連載を開始したりすることですね。

先日映画化して話題になった『北極百貨店のコンシェルジュさん』は、ビッグコミック系の増刊号「ビッグコミック増刊号」(年5回発刊)で連載していたものですが、作品制作ペースが遅い作家の連載場として機能していました。

また、WJなどの週刊誌で掲載していた作家が年齢を重ね、週刊連載が厳しくなった際に月刊誌に移るパターンも多く『JoJo』『ワールドトリガー』最近ネーム連載を開始した『キャプテン翼』なども、同じ理由で月刊誌移籍していました。月刊のウルトラジャンプから週刊のヤングジャンプに移籍した『テラフォーマーズ』の場合は、逆のパターンでのステップアップですね。

3は、例えば「アフタヌーン」に対する「good!アフタヌーン」など、重めの作品が多い本誌に対して、ライトな増刊というようなキャラの違いなどがあると思います。WJから、ホビー誌・児童誌の要素が高い「Vジャンプ」が生まれた経緯は、必ずしも完全には当てはまらないかもしれませんが、本誌からの別レーベルの誕生の類型と言えるのではないでしょうか。

さて、昨今は媒体や出版社の規模に関わらず、編集部として作品を掲載できるWebやアプリを持ってない媒体をみつけるのが難しいくらいになっています。

ジャンププラスの例を見ると、これまで増刊号に掲載されていた「読切」がバズり、多くの読者に目に触れるというケースが多発しました。最たるものは、長編読切「ルックバック」で、大変な大バズのあとにそのまま単行本化、映画化とヒット作品になっています。力のある作家の事例ですからこれは例外かもしれませんが、ジャンププラスに限らず多くのWeb媒体で「読切」が多くの読者を媒体に呼ぶというケースが珍しくなくなっています。

紙の増刊号(本誌でも)読切を載せるということは、基本的に新人を育成するコストでしかありませんでした。雑誌を買ってくれる読者の中での人気を得ることは可能ですが、見たことの無い読切を目当てを雑誌を買う人はなかなかいません。

一方、Web雑誌に掲載された「読切」は、時たま起こるSNSのバズによって、多くの新規読者をサイトやアプリに連れてくることがあります。これは「読切」というコストが、Web広告と同様な「宣伝」の機能を追加されたことになります。もちろん、全ての読切がバズるわけではありませんが、ジャンププラス位多くの有力な作家を抱え、SNSでの話題を作れる媒体にとっては「読切」に新たな役割が加わったと言えるかもしれません。

これは1の「新人育成」でもそうですが、2の「違うタイプの連載」でも同じことが言えるかと思います。男性読者が多い媒体で女性向け作品を試したい際は、Webのほうが本来の読者へのアプローチが強いでしょう。

3の別レーベルに至っては、現在の各編集部は、多くのユーザーを抱える大型プラットフォームとの、先行配信を含めた共同レーベルを複数作ることが当たり前になってきました。

2023年から2024年に、シーモアで共同レーベルを開始した媒体
漫画ビジネス」より引用

上記は一例ですが、このマンガ業界Newsまとめ上で紹介させていただいた、近年にコミックス―モア上で各版元が作った共同レーベルです。昔ならこれが「増刊」の位置に少し重なるところかなと思います。

そうしたわけで、
(1) これまで増刊号が担ってきた役割は、かなりDXしている
(2) 紙雑誌の制作コストや流通コストが高騰している
など、紙の増刊号の置かれている状況は厳しいです。

ただ、こうなるとなったで、逆張りで維持して価値とするところも出て来るかもしれないのが、またこうした勝負の難しい所かとは思います。


国内News

メディアドゥが「ピッコマ」の電子書籍流通システム連携開始ということで、単純に作品を卸すだけではなくシステムの提供も同時に行うということなのでしょう。これは以前、メディアドゥがLINEマンガに対し行っていたサービスに近いものになるかなと。

ちなみに、ピッコマはサービス開始当初から、作品数を絞り込んで、その絞り込んだ作品を強く推すという形で展開してきたのですが、今回これを機会に帳合する作品数を増やしていくのかなと思いました。そのあたりは、記事からはうかがい知れないですね。


トップの記事紹介で、紙の雑誌が難しくなってる話を紹介しましたが、アンケートが取りにくくなるのも紙雑誌が減ることによる弊害のひとつです。Webやアプリは、ユーザーの動態データを克明に入手できますが、一方で定性的・定量的な意見を取りにくくなります。そこに対する新施策のようですね。サービス名の最後に「~key」とあるので、あの会社さんかなぁ?と思ったり。


ファンギルドが新BLレーベルとのこと。コミックシーモアで先行配信スタートの様子。


SHIBUYA TSUTAYAがZ世代やインバウンド観光客に好調とのこと。
手前味噌ですが、私の著書も沢山置いていただいてます。

思い切りが良いですよね。ありがたいです。

そしてブックオフは、会社としての業績が良いにも関わらず、本のブックオフだけ大量閉店とのこと。むしろ、他の業態の店舗が好調がゆえに、本の弱さが際立っちゃったのでしょうか。古書流通に影響がありそうですね。

「まんだらけ」はインバウンドに対して好調とのこと。
本よりブツや体験というところなのでしょうか。


アルファポリス社が、フランス語翻訳した作品を、自社で運営するアプリ『Alpha Manga』内で提供するとのこと。自前の海外アプリを持ってデジタルから販売していくことが独自の戦略になりますね。


VISAの使用に制限のかかってるFANZAでPaypayの使用が開始しました。出来る限りの対策を打つというところでしょうね。


「BLソムリエ検定」という言葉で、何をするのかはすぐイメージできますが、合格率1.7%とは凄いですね。出題者が「東大試験より難しく」と息巻いていらっしゃるようで、どんなものかと過去問を見たら、私は1問たりとも正答する自信がございませんでした。
記事にある過去問見るの、迫力ありますので、とりあえずおすすめです。


こちらはクイズですね。以前、みんなでマンガクイズを手作りして持ち寄って、クイズ大会を開いてみたのですが、とても楽しかったです。公式クイズも良いと思います。


京橋にアニメ・マンガの展示施設とのこと。場所がまた不思議ですが、新しい良い施設みたいですね。


京まふ、今年は3.5万人超とのこと。


数土直志さんの記事です。
アニメ市場が活況で、政府は市場規模の拡大をうたい、大きな成長目標数値を掲げていますが、コンテンツビジネスはそういうものじゃないですよと。
私も、全く同じ思いで、今回本を書きました。


Jetroが、前の記事の続きの様なレポートを書いています。海外で「ある作品に人気や知名度はあるが、商品展開出来てない」みたいなところは、かなり伸び代があるのは事実でしょうね。と、読み取れる記事です。


例の傘立ての件の記事です。「正気を疑う」とありますが、シーモアすごいです。


さすが芥川賞の市川さんと申しますか、大変読まされる「異世界転生考」でした。


個人的に今週一番笑ったポスト。ハイコンテキスト過ぎて面白いですw


ジャンププラスのエース編集者、林士平さんがフリー編集者になりながら引き続きジャンププラス編集部で仕事を続けていることを報告しています。

編集者がどう働くことがベストなのかというのは、昔から難題でしたが、現在は更に環境が複雑なってなかなか難しいですね。例えば、職位が上がると作品制作から離れないとならない現場もあり、そういう場合はフリーになることで、管理職にならずに作品を作り続けられるなんてケースも聞いたことがあります。


Webtoon関連

ソラジマWebtoonアニメ化、DNPのライトアニメでの制作なんですね。ショート動画と言い仕掛けが早いですね。


ノイタミナアニメに続き映画化


俺レベ新作10/1よりです。ゲームAriseのスピンオフ作るという話がありましたが、これでしたかね。そういう風には書いてないですが。


東映アニメーションがNAVER系のWebtoon作品『高手』をアニメ化


「STUDIO ZOON」がAmebaマンガにて、独占先行連載開始。
多分、ビルが同じくらい関係が近い所での展開。


アミューズとディー・エル・イーが共同製作したwebtoonがリリース


フーモアの資本政策。
良くわからなかったので、AI先生に聞いたところ、様々なケースがあると回答がありました。文章長くなりますので、ご興味ある方はGPTさんあたりに聞いてみることをおすすめします。勉強になります。


海外News

韓国で、第1回のWebtoonフェスティバルが開幕とのこと。

そのフェスティバルの中で、Webtoonの第1回国際アワードが開催されまして『俺だけレベルアップな件』が、最優秀賞を受賞とのこと。


シーモアが、国内で売れた作品の米国展開を続けています。


タイトル訳:DC が 2024 年 12 月のコミックの全ラインナップと表紙を公開。スーパーマン、バットマン、ジャスティス リーグ、サンタクロースなどがフィーチャーされている

DCがクリスマス商戦に向けて、今年のラインナップを発表したようです。心なしか、絵のクオリティが上がっているような。


libroさんの北米エンタメニュースまとめです。

タイトル訳:インタビュー:佐々木と宮野の禁止はいかにして起こったか

先週もお伝えしましたが、この詳報を見ると、作品に対する正確な理解をしているとはとても思えず、完全にとばっちりだなぁと。それが政治的衝突の飛沫みたいなものなのでしょうか。あまり日本では見ない争いです。


タイトル訳:WEBTOON Entertainment、ファンに人気のクリエイター、パネル、ファン体験を盛り込んだニューヨークコミコン2024のプログラムを発表

とのこと。今度は10月にNYCコミコンですねぇ。行けるのなら行きたかったのですが。


AI・画像生成関連

「2032年の予想売上高は約20億ドル」とありますね。
そういうリサーチを出しているところがあるようです。
ほんまかいな。


Pixivの開発者向けイベントでの一幕に、画像生成AIに対する同社のスタンス「棲み分ける」について、考える至った経緯が書かれています。なるほど。


日本アニメーター・演出家協会(JaniCA)によるAI技術アンケートです。
AIにして欲しいこと、懸念などを聞いています。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

トーチ10周年ですね。おめでとうございます!

めちゃコミのクリエイター向けサービス。「めちゃコミック クリエイターズ」による、自社&外部レーベルの、連携漫画賞ですね。なるほど。


記事のみ紹介


告知関連

東京都「アニメーション海外進出ステップアッププログラム」開催
(参加費無料)
「海外ビジネスセミナー」「海外プレゼンスキル向上ワークショップ」を開催し、都内のアニメーション制作/製作事業者等の皆様の海外進出を支援とのこと。最大100万円の賞金など様々なサポートを得られるようです。

個人的に、この阿佐ヶ谷ロフト行きたいですね。多分中村さんの家の近所だから阿佐ヶ谷なんじゃないかなw

筆者単著「漫画ビジネス」クロスメディアパブリッシングより発売中です!

新生なった、あの渋ツタにも並べていただきました。鼻血出るくらい沢山一気に注文していただきました。

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余談ですが、ゲーム業界の平均年収や就業人口が発表されています。
私としては、MANGA総研でこうした基礎データを調査して、業界に広く共有したいと考えているんですよね。こういう数値は、思考の足掛かりとなります。

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