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【マンガ業界Newsまとめ】小学館社長交代・MANGA議連「メディア芸術センター」など|5/14-051

マンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。最近、あまりにWebtoonのニュースが多いので、それ以外のマンガ業界関連ニュースを掘り起こして前に押し出すようにしております。(5/14に作ったものを5/15に公開していますので、ナンバリングは5/14にしてます。)

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小学館社長に39歳・相賀信宏氏が昇格へ…現社長の相賀昌宏氏は会長に

今年100周年を迎える小学館の社長に、39歳の5代目、相賀信宏氏が昇格しました。現社長の4代目相賀昌宏氏は会長就任です。信宏氏は北米BizMediaでの業務経験もあり、海外勤務を経ての社長就任の道筋は、なんとなく現トヨタ自動車代表の豊田章男さんと重なるところがあります。

個人的には数度お会いしましたが、シャキっとした方で、当然ながら出版界にしっかり根を張った人脈をお持ちです。最近した会話の中からは、ブロックチェーン技術をベースとしたコンテンツ活用の話から、出版社間の調整を担う業界団体の話まで幅広く、新旧広く見渡す目線を持ってらっしゃるなという印象です。

大手出版社が業績面でのデジタルシフトをしていく現況の中で、若手経営者がその一角というか、小集講角のうち実質半分を率いるという状況になることは、歓迎して良いと思います。

その中で、出版社の持つ削ぐべきでない大切な部分にもしっかり目配りをされている様子も見て取れ、頼もしさを感じます。良い塩梅のDX推進、期待させていただきたいです。


MANGA議連「メディア芸術センター」設置目指す 議連の山下元法相に聞く

麻生さんの東京アニメセンター構想以来、出ては消えしてきた本事案、MANGA議連での扱いになっていきそうですね。

京都国際マンガミュージアムについては、良い立地や建物に、京都精華大学という良き運営団体や、担当する京都市の新産業振興室も優秀な担当者に恵まれ、最早京都の代表的ランドマークの一つに定着しました。MMでは何度か仕事をさせていただきましたが、様々な意味で良くできております。

こうした箱の魂は、企画、運営や行政側で動く担当者も含めて、人がとても重要です。箱を作るのは良いので、ともかくそうした人材のアサイン、そしてそこにきちんと予算と権限を渡し、行政や政治文脈のつまらないノイズを遠ざけるなど、最大限留意してもらいたいと思います。それさえできれば、良い取組となって、末永く東京のランドマークの一つになってくれると思います。


コンテンツプロデュース企業のMinto、株式会社カカオピッコマと資本業務提携

Webtoon制作事業開始をリリースしていたMinto社が、ピッコマ他数社から6.6億円の資金調達を行ったと発表しました。

資金を調達しつつ、Minto社はピッコマとの連携を強め「カカオピッコマが保有する漫画コンテンツ運用に関するノウハウを活用」とのこと。これまで独自のプロモーション力で作品やアイテムを売り伸ばしていたMinto社が、ピッコマ社との連携で作品を作っていく形にシフトすることを示しているのかなと感じました。

それにしても、単独スタジオのWebtoonに注力する資金で6.6億円は大きいですね。Webtoon制作は1話30万円以上、最低限30話スタートで、一本900万以上と言われてまして。仮に諸経費や上積み込みで一本1000万円として、66本!!ですね。大変だぁ。頑張っていただきたいです。


集英社「マンガMee」、縦読み漫画の制作スタジオ発足 初作品はOLと御曹司のオフィスラブコメ

作品PRのリリースですが、さらっと、集英社初のWebtoonスタジオ制作の作品リリースが発表されています。

「Studio Mee」は、集英社「マンガMee」編集部による、縦スクロール漫画の制作スタジオですが、既に『サレタガワのブルー』(スタジオ制作ではない)などの女性向けWebtoonでヒットを出しているマンガMeeからのオリジナル作品制作発表となります。


CJENMとスタジオドラゴンとの提携により合弁法人「スタジオドラゴンジャパン(仮)」を設立

座組としては、韓国の映画などのエンタメ大手CJENMの子会社スタジオドラゴンの日本法人に、LINEマンガのLINE DigitalFlontierも出資し、スタジオドラゴンジャンパン(仮)を設立とのこと。

この会社がWebtoon作品の映像化などをしていくという風に読み取れます。Webtoon原作の実写やアニメ映像が、NetFlixなどのグローバルプラットフォームに配信され、急速な勢いでヒットしていく型は、最近のトレンドです。

そうした事例を多く持つ韓国映像大手が、日本や、別けてもLINEマンガのWebtoonを原作ととらえ、IP展開をはかる座組と読み取りました。


TBSが電子マンガ・プラットホーム「NAVER WEBTOON」(韓国シェア1位)と縦読み電子マンガwebtoon制作会社を韓国に設立

今週のWebtoon進出企業のひとつは、なんとTV局の「TBS」ということで、LINEマンガの親にあたるNAVER WEBTOONと、日本でマンガ制作を行うSHINE Partnersと3社合弁で「Studio TooN」を立ち上げました。

TV局にとってWebtoon周りの動きは、海外進出への布石となるというところでしょうか。同じTV局だと、フジ系はFODが漫画事業などしていますがそちらにも動きがあるか?また、TBSグループ内にはアプリのマンガボックスなども入っていますが、そのあたりどういった関係となるのでしょう。


株式会社ワールドエッグスが、WebtoonでIPを創出する事業ブランド「WONDER WAVE」を始動

こちらもWebtoon進出ですね。アニメ、映像、マンガ、書籍などを制作するワールドエッグス社によるWebtoon事業っで「WONDER WAVE」とのこと。

既に映像事業など手掛けていることから、クロスコンテンツ事業ということを標ぼうされており、既に年内3作品のリリースが予定されているようです。


海外News

少し前に、2020年の韓国全体のWebtoon売上が1兆ウォン(1000億円)
を超えたとニュースがありましたら、今度はNAVER社単独で1兆ウォン超えとのこと。

NAVER全体で、2017年に4600万MAUだったものが2022年3月には1億8千万MAUに成長とのことで、爆発力を感じる近年の成長です。

今後も、グローバルナンバー1ストーリーテックプラットフォームの地位を保つとのこと。この立ち位置は、追撃する日本勢としても狙っていきたいところですね。

*: なお、日本において「マンガ市場」といった場合、これは純粋にマンガ雑誌、単行本、アプリ売上などのいわゆる作品販売のみを指すのですが、韓国の「Webtoon市場」の統計はIP展開やグッズ販売などの周辺事業を含む場合が多いので、単純に比べられないところもあります。(本記事では明示が無いです。個人的には、ビジネスの変遷を考えると、日本側がこの指標に合せたほうが良いようには思いますが。。


韓国のWebtoonと言えば、NAVERとKAKAOというイメージですが、現在その後ろにつける3番手として「ポスタイプ」というプラットフォームが追撃しているようです。

まだまだ小さい存在とは説明されていますが、2015年に一人のエンジニアが始めたとのこと。クリエイターが投稿した作品を販売できる、いわゆるCGM型のサイトで、大手2社に作品を出せなかったクリエイターが作品をアップして、人気になることもあるようです。

近い存在として国内では、コミチが似ていそうです。誰でも(企業でも)自由にWebtoonをアップして、話売り課金や24時間待つと読める仕組みなども自由に設定可能で、いわゆる媒体のインディーズサイト(投稿の意味が強く、売るところではない)とは違う存在です。日本でも伸びますかねぇ、WebtoonCGM。


国内News

先にWebtoon進出を発表していた、ウェイブ社のstudio73が、comico社との共同制作プロジェクトを発表しました。comicoというと、SORAJIMA社とも密に連携を取っていますね。

ピッコマやLINEマンガなども各社との連携を相次いで発表してる流れが早く、PFやStudioの思惑が色々と動いている昨今ですね。


既にWebtoonへの参画を発表しているゲーム制作のドリコムが、マンガ・ラノベ・アニメ事業への進出ということで新ブランド「ドリコムメディア」を設立します。

Webtoon周りの進出は、やはりWebtoon単独ではなく、こうした複数メディアを横断する取り組みが目立ちますね。


マンガで勉強?

企業研修や東大生が勉強の場などで、マンガを活かすという記事が立て続けに出ていました。

勉強においては、ただ暗記するだけではなく、知識を繋げて覚えるのが漫画なのだそうです。

また、企業研修においてはITリテラシーやハラスメント、ダイバーシティの基礎知識などを漫画で読む形で、サブスクなどによる提供もあるとのこと。確かに、物語で説明されると、こうした振る舞いに必要な部分もしっかり入ってくるかもしれませんね。

各社決算

各社決算が出る時期になってきましたね。

KADOKAWA2022年3月期

通期決算資料
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9468/ir_material_for_fiscal_ym1/117387/00.pdf

KADOKAWAの2022年3月期は、売上、営業利益で過去最高とのこと。詳細を見ると、出版も営業利益の前年比ベースで35%アップ、ゲームに至っては大ヒットしたエルデンリング(フロムソフトウェア)の影響で89.5%アップとのことです。

マンガにフォーカスすると、紙とBWによる海外施策が好調なようですね。決算書の情報内でも、新人育成、強化する事業や、注力作品など、しっかり整理されて書いてあり、当面KADOKAWAは盤石であろうという印象でした。これは強いですね。


アルファポリス2022年3月期決算

通期決算資料
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9467/ir_material_for_fiscal_ym/117662/00.pdf

売上から営利経利まで全てアップして、売上は90億円の大台に乗り、100億円が見えてきています。アルファポリス社はずっと好調な決算を続けていましたが、最早底堅さを感じますね。利益率のダウンは期中のアニメプロモーションに投資とのことで、納得のいくものです。

決算書の中に、実際に注力したり結果を出した作品の書影とともに累計発行部数や初版発行部数などもあり参考になります。ラノベで万を超える初版をこんなに出してるんですね。すごい。コミックも累計・初版ともども、ふっといな~という状況のものが増えてるように思います。つよい。

また、「タテ読み漫画」への施策としても、CGMとして投稿機能をこれから5月中に実装とのことで、明確に強化ポイントとしているようです。決算書中にある「人材への投資」も含め、きちんと投資をしているようです。


KADOKAWA・アルファポリスと2社の決算情報を紹介させていただきましたが、営業マンとしてはムラムラしてくるくらい、両社とも良い決算ですね。さすがです。


記事のみ紹介


告知関連

590回以上続く、老舗のアニメ情報ネットラジオ「のら犬ブラザースのアニメ!ギョーカイ時事放談」に、ゲストとして出させていただきました。

リンクになってる第590回で自己紹介と最近のマンガ業界話を、次に来週5/18に公開される第591回ではWebtoonに特化してお話をしています。

このまとめ内で言うと、私の話よりも、このパーソナリティの方が豪華で、ワーナーの川瀬浩平さん、ライデンフィルムの里見哲郎さん、という両アニメプロデューサーのお2人に、Webtoonの近況を解説するみたいなしつらえです。お話も上手でスタジオも本格的になっていて、良い経験をさせていただきました。


Voicy最新回の22回では「みずほ産業調査」や「NAVERの世界戦略」などを深掘りしていますー。作業BGMのラジオ代わりにどうぞー。

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(編集後記)

先週はGWだったので特集を書いたのですが、沢山呼んでもらえました。最近、ネットラジオやイベント、大学の授業など、ともかくいろんなところでWebtoonの話をさせていただくようになりました。まだしばらくこういう状況は続きそうな気がします。

そうしてお話ししていた人の中で、「今なら、Webtoonの本を書いたらいいんじゃないですか?」という意見をくださる方がいらっしゃいました。自分事だとあまりそうした自覚は持ちにくいのですが、実際出版社の方やWebメディアの方はどう思ってらっしゃるんでしょうか。

Webtoonについては、特に近年動きが早すぎて、制作に半年もかけてしまうとすっかり古い話になっちゃう気がするんですよね。なのでWebメディアが良さそうなきもしますが、こういう企画ならというのがあれば、お話くださいませ。ただ、そうした動きの速さを捉えて、毎週noteにまとめて、Voicyで深掘りするという形を作ったのではありますが。

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