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【マンガ業界Newsまとめ】流通やデータ活用などで新会社新サービス登場など |3/27-045

マンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。
今週はいつもにまして堅いです。

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講談社・集英社・小学館などが流通新会社設立 AI活用で返品率抑制

総合商社「丸紅」と出版大手が、出版流通の新会社パブテックスを設立しました。AIを活用して最適発行部数を算出したり、ICタグを活用してい在庫管理の効率化や万引き防止を狙うとのこと。

総合商社が、食品や衣料品などの分野で、こうした流通子会社を作る動きは良くある話なのですが、出版でこれを行うのは新しく、既存の取次の業務と大きく被るところかと思います。

その動機となっていそうなのが、ここにも書かれているデータを活用して流通を最適化するという観点で、丸紅側のリリースでは「出版流通をサステナブルなものにする」ことを新会社設立の目的としています。

紙の取次事業者は、再販委託制度のもと、納品部数をコントロールする代わりに、一旦納本された書籍分の金額は出版社に全額支払うという商慣習があり、金融機能も持っていたわけですが、おそらくこの新しい取組がそうした機能を担わず、流通の最適化を目指していそうなところは、想像しやすいところです。

この話は電子書籍ではなく、主に紙の本の流通をメインとした話ですが、データということをテーマに、出版のビジネスの在り方が大きく変わっていくひとつの流れととらえることができるかと思います。


DB WATCHとWINがCANTERAに一元化、4月20日に第1弾リリース

一方で、既存の出版流通各社も動きを見せています。

ここでは、TSUTAYAの「DB WATCH」と日本出版販売(日販)の「WIN」の一元化サービスが4月に開始すると書いています。これは何を言ってるかというと、まずTSUTAYAは紙の書店最大手、日販は書籍取次の最大手ですが、それぞれが「DB WATCH」「WIN/WIN+」といった、販売データを出版社が見ることができるツールを提供しています。CANTERAとは、この2つの大きなデータサービスを統合したものということです。

実際、出版社の販売の現場では、紙書籍においてデータを活かしての販売予測や、販売データから重版や販促などのマーケティングに活かしていたわけですが、両社のデータサービスが統合化することで、より効率的に紙の書籍の販売データを見ることができるようになるというものです。

対応が遅れていると言われてきた、紙の書籍のデータまわりですが、2022年に来てこうした既存勢力や、先述の丸紅のような新勢力の動きも顕在化してきています。興味深いのは、各出版社はこの既存企業、新規参入企業両方に出資しているということですね。それだけデータを重要視しているということなのでしょう。


第3回:「データを活かしてマンガを売る」コミチとは

こちらは、ヤンマガWebなどのWeb雑誌の仕組みを提供するコミチ社代表萬田さんのnoteです。

ここでは、Web雑誌を通じて読者データを入手し、そこから出版社自身がデータを活かして作品作りや新作認知などの販売を行うことを説明しています。

もともと、紙雑誌が全盛の時代は、雑誌についてはその印刷部数や販売データの他、いわゆるアンケートで出版社は読者データを得ていたわけですが、アプリや電子書店で膨大なマンガが販売されることが主流となった現在、その読者のデータのほとんどは出版社外の、IT企業が持つようになりました。

それに対して、出版社が読者データを持つことをあらためて目指すということが、コミチの考え方で「データを活かしてマンガを売る」ことを、出版社自身が往年の雑誌時代のように取り戻すということを提唱しています。

世に言う「DX」とは、アプリやWebなどのユーザー対面部分の仕組みのみならず、その結果から生まれるデータを活かすという考え方がその基礎にあります。ここまでのニュースは、紙の書籍と電子書籍の違いはありますが、こうしたデータを活かす形が出版業界にも強く影響を与えていく流れが、2022年は起きているという証左なのでしょう。


ピッコマ、スマホ漫画1100作品 21年国内販売額首位

今週もピッコマのニュースが沢山あったのですが、日経新聞の記事ということもあり、こちらは多く読まれた記事のようでした。

タイトルに21年販売額首位とありますが、これはマンガアプリとしての首位ということで、電子書店としての話ではないのではないかというのは、引用されてるデータエーアイ社の資料を見てないので何とも言えませんが、そうなのでしょう。

個人的には、最近こうしたWebtoon周りを中心とした、一般誌などの取材を2つほど受まして、こうした一般誌がWebtoonを扱う記事はこれから増えていきそうです。


【POD特集】福浦社長「POD市場を拡げたい」、マーケットは「個人と出版社のあいだ」 インプレスR&D × メディアドゥ新会社「PUBFUN」

PODとは、原則的には注文があるとその注文都度に1冊ずつ書籍が印刷され、紙の本として読者の手元に届くというものです。初版で数千・数万という本が印刷され、書店などの店頭に並ぶものとは違う、新しい書籍流通の形です。

このPODの分野においてインプレスと、メディアドゥ(もとは合併した出版デジタル機構の事業)は、力を入れている2社だったのですが、パブファンという会社の設立を持って一本化しています。

既存の流通方法だと「絶版」した書籍は古本流通に頼るしかなかったものが、PODの準備さえすれば、絶版知らずとなるというわけです。ただ、印刷のクオリティが種々雑多ある書籍の装丁に追いつかず、認知も進まなかったところもあるのですが、最近は印刷技術も上がり、ハードカバーやカバー装も出来たりなど、市販の書籍と変わらないクオリティまで追いついてきています。

また、Kindleなどの個人出版やボーンデジタル作品が、PODにも対応して、書店には並ばないけど紙の書籍はあるにはある。みたいな状態も作れるようにもなってきています。

この分野はもうちょっと注目されても良いのではないかとおもったりはするのですが、これからというところなのでしょう。Amazonだけで累計27万冊、6.4億円の売り上げが上がっているという情報は初めて聞きました。これから成長しそうですね。

個人的には、個人出版した電子書籍をPODで印刷して、著者の地元や作品の聖地にあたる地域の書店などで、置いて販売できたら素敵だなぁと思ったりしています。


海外News

日本や北米などでWebtoonの進出でしのぎを削るNAVERとカカオですが、次はフランスを中心にEUが舞台というわけですね。

ピッコマは単純にフランス進出という動きですが、NAVERは欧州統括法人を新設ということですね。これはRHQ(リージョナルヘッドクォーター)という考え方で、欧州、アジア、北米、などと大きな市場がある地域経済圏でグローバル企業が取る経営体制で、その地域にあった意思決定や戦略がとれるように、エリアごとに設置する各地域別の本社といった位置づけのものです。NAVERについては、この拠点を中心に欧州を攻めていくのですね。このあたり、企業としてすべきことをやっているなぁと思います。

ということで、ピッコマは3/17にフランス版ピッコマをローンチしたのですね。まずアンドロイドからとのこと(ここは日本とちがいますね)

しかし、Webtoonがフランスで影響力を持ち始めると、JAPAN EXPOの内容もより移ろっていきそうですね。もともと、JAPAN EXPOの中に韓国企業の動きが目立ってきていたという潮流が近年ありました。


アルファポリス社が英語圏向けに提供する英語版マンガアプリ「Alpha Manga」が、米国のアニメ配信大手クランチロール(CR)に原作提供というわけですね。

このAlpha Mangaの存在を初めて知ったのですが、国内でもPF発オリジナルIPのコミカライズで手堅い動きを見せる同社が、同じ英語圏内でCRに原作提供するというのは、とても良い流れに見えます。

英語圏でマンガとして良く読まれる原作が、CR起点でアニメ化されるとなると、ローカライズとは別の意味で英語圏対応をしっかりされて、日本よりむしろ海外でヒットするなどという展開もあるのかもしれませんね。


タイトルとはずれるのですが、北米でNAVERのプラットフォームから生まれた『Lore Olympus』の作家さんがニュージーランドの方と知り、英語圏は広いなぁと感じました。

ヒットしても周囲の人が外国企業での仕事にあんまりぴんと来てない(詐欺扱いされたり)なんていうところも、昔の日本漫画界であったような話だなと思ったり。


国内News

セルシス社のCLIP STUDIO(クリスタ)が、検定試験を始めるという記事です。

クリスタは、マンガを描くツールとしては内外でも最も普及しており、マンガ制作や、その仕事を受けるには必須ツールのような位置づけになっています。また、最近はNAVER社とセルシス社の提携が発表されるなど、Webtoonでも標準ツールとしての地歩を固めつつあります。

日本の漫画界隈でも、アシスタントの仕事を探すにあたり、クリスタ利用経験は問われたりするわけですが、スタジオ制作の多いWebtoonの仕事の場合は、より以上にクリスタ使用経験は運転免許証なみに問われることになるでしょう。

その際、こうしたクリスタ検定というような、一定の技量を保証してくれる資格試験があると、依頼側も迷わず新しいクリエイターとの付き合いを始めやすくなるなど、使う側にも仕事依頼側にもメリットの多い取組だと思います。


鳥獣戯画から現在に至るマンガの歴史を、ビジュアルで見せるという取り組みで、そのサイトをGoogleが担っているようですね。文化遺産をオンラインで紹介するGoogle Arts & Cultureという枠組みの一環だそうです。

こうした取組は、美術館など比較的閉じたところではまま展開されてきましたが、Googleがネットで公開するというのは新しいですね。協力も手塚プロや横手市増田まんが美術館など、しっかりしたところが抑えられていて好感が持てます。

実際にサイトに行くと、Webのつくりもとてもお洒落で、一度ゆっくりご覧になることをおすすめします。

追記:関係者の方がManga Out Of The Boxについてツイートされてました


コロナ禍でなかなか開催もままならなかったリアルイベントですが、ちょうど東京のまんぼう明けの週ということで、元気に開催されたようです。一安心ですね。

最近のネットマンガの話題と言えば圧倒的に「タコピー」だったわけですが、完結ということで記事になっていました。

驚異的なのが、最終回にあたりジャンプ+として閲覧数が350万に到達していることですね。1作品でそれはすごいですね。そして、ジャンプ+としては、「各作品の閲覧数」を、気にしているというのが編集長の細野さんの言葉として紹介されています。「各曜日に100万PVを超える作品を作る」など、具体的な目標としているようですね。

マンガアプリなど有料課金を目的とするサービスの場合、ユーザー数としてMAUなどを指標にするケースが多いですが、PVを優先するジャンプ+の考え方は、ここに書いてある説明も含めて、新作認知を最優先事項としているのであろうということが見て取れます。まさに雑誌の新しい形なのでしょうね。


記事のみ紹介

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<編集後記的ななにか>
3回目のワクチンを打ちまして、翌日1日ぼーっとしてたのですが、もう一晩寝て、なんとか復調したのでまとめを書きました。なにかいつもと違う感じになってる気もするのですが、お見苦しいところありましたら申し訳ございません。
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