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【マンガ業界Newsまとめ】『KADOKAWA統合報告書2024』公開 WEBTOON Entertainment 失速 など|10/6-171

マンガ業界ニュースの週1まとめです。
マンガ・アニメの業界カンファレンスIMARTを主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関連のニュースを、ビジネス系を中心に、短時間でチェックしていただけるようにまとめています。

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『KADOKAWA統合報告書2024』公開

多彩なIP創出、多面的なメディアミックス、拡大するグローバル展開など、成長を続けるKADOKAWAグループの取り組みを特集!

2024年版のKADOKAWA統合報告書が公開されました。

今年のKADOKAWAとしては、やはりサイバー攻撃関連の話題は大きく、P40-41と2ページ渡り総括されていました。今回の事案の推移や原因などが整理されています。外部調査により、フィッシングが原因とされており、その点への今後の対策を取ると言及されています。

その後に、ガバナンスやコンプライアンス、リスク管理に関するページがかなり続くのですが、フィッシングとなるとこれはシステムセキュリティというより社員の意識や統制みたいな部分が多いと思いますので、そこが多いのかなとも思いました。

個人的に注目したいのは今後の方針です。

KADOKAWA統合報告書2024-P21より

今後の重点投資分野として、「M&A」や「AI翻訳」があげられています。

「海外M&A」については、その規模的筆頭たる米国YenPressのほか、今事業年度では、インドネシアの合弁会社設立など、積極的につづいていくと読み取れます。

個人的には、今年の7月のロスAnimeExpoにて、恐らく期間中最大のパーティーになっていそうな交流会を、KADOKAWA傘下のAnimeNewsNetworkが仕切っており、私も参加させていただきました。北中南米最大のイベントであるAXに、しっかり根をはれているなぁという印象が残りました。

「AI翻訳」とありますが、同じくこの事業年度で、AI翻訳のMantra社に出資するなどがその起点となりましょうか。いずれにせよ、翻訳出版やローカライズのスピードアップに注力するところかと思います。

KADOKAWA統合報告書2024-P22より

また、出版IPの創出量拡大については、
2023年-5600点 => 2024年-5900点 => => => 2028年-7000点(目標)
と、引き続き目標に向けてIPを増やし続けていることが報告されています。
このあたりは、創業一族の角川歴彦氏のイズムが継承されているように読み取れます。

個人的に「そうなのか」と感じたのが、「ところざわサクラタウン」内のデジタル製造工場・物流設備がの本格稼働が2024年3月からという点です。圏央道工事も終了し、日本の陸上物流のへそとも言える所沢から、少量印刷でもオンデマンドに対応、小口の紙書籍を流通させる体制を整えたということは、今の時代の紙書籍流通に合った試みではないかと期待しています。

アニメ事業は、IPの大型化とともに長寿化ということも目指しているとのこと。例として「このすば」が出ていますが、確かにKADOKAWAらしい作品ですよね。SAOはじめ、こういった方向性の作品意識して行くのだろうなぁと。

アニメと言えば、国内スタジオ買収なども積極的ですね。


韓国発の縦読みウェブ漫画「ウェブトゥーン」が大失速…ユーザー離れに株価急落、集団訴訟まで

今年6月に上場したWEBTOON Entertainment(WBTN)が、株価急落のうえ集団訴訟もというニュースです。

以前も当noteで少し触れたのですが、ここ数週間の間、この記事の元ネタになっているであろう、いくつかの法律事務所による集団訴訟の英語記事が大量にネットに上がっているのですが、同じような内容で弁護士事務所への連絡を促すというフォーマットのコピーされたような記事ばかりでした。

なんと申しますか、同じような記事ばかりで少々不気味で、法的に何かテクニカルなことが仕掛けられているのでしょうけども、実際のところは良くうかがい知れませんでした。

今回紹介している記事は、経緯が書かれています。

・日韓でユーザーが減少、売上は横ばいも、業績成長予測値を下回る
・結果、WBTNの株価が急落したまま(上場時の半分くらい)
・以上から、投資家に損失をもたらしたので、集団訴訟が提起されてる

ということのようですね。

現在のWebtoonやマンガ関連のデジタルプラットフォーム展開事業は、海外においては新たにユーザーを開拓しないといけないことや、海賊版対策など課題が沢山ある大きなチャレンジとなる事業です。

加えてWBTNは、短期的な売上だけではなく、各ローカルサービスに投稿サービスを備え、各国・各言語で新たな作家を育てようとする日本に近いスタイルで戦っているため、よりコストは高いが、将来を見据えた戦いをしています。

拙作「漫画ビジネス」でも執拗に書いていますが、作品作りとは時間とお金が膨大にかかる長い道のりで、NAVER WEBTOON 創業者のキムジュンク氏は、高いレベルでこれを理解して世界展開をはかっているように見えます(単に売上だけ短期的にあげれば良いとは考えてなさそう)個人的に、WBTNはめっちゃ頑張ってて良く戦ってると思っています。

そうした意味では、今後も幾度も迎えるであろう正念場の一つではあるのでしょうけども、予想された事態だとも思えるので、ただただ踏ん張りどころなのかなと。ただ、12月に機関投資家のロックアップが解けて、さらに株が売りに出される可能性があるというのが、少々怖いですね。


国内News

秋田書店の社長に山口徳二氏が就任とのこと。プレイコミック編集長などの編集畑から、販売、製作、総務といった秋田書店で言う所の管理部門取締役を経て現任です。同じく漫画編集畑から代表となった樋口氏は相談役、「刃牙」シリーズ立上編集者の取締役澤孝史氏は常務取締役に昇任とのこと。

直接的にこの人事とは関係なさそうですが、社屋老朽化に伴う新社屋建て替えのため、仮社屋として都営三田線千石駅そばに移転するとのこと。返す返すも「千石自慢ラーメン」が閉店してしまったのは残念でしたね。


海外ユーザーが勝手翻訳をし、これをチェックしたうえで正規作品として販売するDLSiteの「みんなで翻訳」が、開始3年で累計15億円を突破とのこと。海外ユーザーも増え、14言語に対応、翻訳者も1万人を超えるとのこと。

CGM的翻訳サービスの挑戦はこれまで沢山ありましたが、商業的に成功したというもの聞いたことが無く、これは凄いですね。


おすすめ電子コミックサービスのランキングをoriconが発表しています。

出版社側が「1位Palcy、2位マンガMee、3位少年ジャンプ+」
書店側が「1位シーモア、2位Booklive」ということのようです。

割と、女性がマメに答えるタイプの調査だったのかなと思いました。


10/1のラノベのBookBaseの資金調達2.5億円というニュースに続き、10/3に今度はコミカライズ作家の募集で1.5万円の原稿料というニュースです。調達までの経緯のマンガが面白いので、読むのおすすめです。赤裸々です。

端的に、原作付き作画で原稿料が1.5万円と大手出版社の中堅以上作家並み金額で、それが2日前に発表された2.5億円の資金調達で担保されるという、ちょっとあんまり無かったなぁという明快な文脈です。面白いですし、この勢いは楽しみですね。積み重ねて行ってもらいたいなと思いました。

経営者のオタペンさんのnoteです。
「全部、うるせぇ。」あたりが見どころですねw


特に今回は、相模原で予定されているアーカイブについて、専門人材の配置などを検討されているようですね。これが誰かというと、国内でも限られていますので、あの人かこの人か、というところですが、大事なお話です。


9/30に行われた「海賊版対策官民実務者級連絡会議(第1回)」議事録とのことですが、この中の資料2で対策の実務がロードマップとして、対策ごとに書かれています。やはりこれ、大変な工数ですね。漫画だけでは無くというか、まず動画の対策で、優先順位としては続いてのマンガや音楽となると思いますし、この大きな工程をどう進めるかですねぇ。


この問題は、これまで何度も繰り返してきましたけども、今回は森川先生が入ったこともあって、割と大きくニュースにも取り上げられましたね。

表誌に稿料を払うかどうかというのは、確かに重要な要素とは思うのですが、漫画家から見た出版社や編集部の選択については、作品制作に伴う制作力や原稿料、販売時の営業力や出版社の強さによる置いてもらえる棚や面の強さ、様々に要素がありますので、ビジネスで考えるとなかなか難しい所です。気持ちの問題も大きそうです。

出版社は作家を育む役を担っているの確かなのですが、表誌の稿料にしても他のことにしても、あれも払うべきこれも払うべきとしてしまうと、漫画家の掲載スタート地点が厳しくならざるを得ないというも同時にありますしね。


日テレ4月期ドラマ制作中止 漫画原作 民放関係者「原作者側と調整つかず」とのことで、理由が「ドラマの内容をめぐり、原作者・出版社サイドとドラマ制作側で調整がつかなくなり、中止に至ったと聞いています」とあり、これは良いのではないかなと。

個人的には、これからのTV局のドラマ制作は海外配信を意識していく流れと考えています。必然的にアニメ同様制作費をあげていけるのではと考えていて(結果を出すのが先ですが)そこに、原作強度の強い日本のマンガ原作作品がはまれば、コストや制作期間などのリソースが上がっても、なんとか新しい組みあいにならないかなぁと期待しています。色々な面で脱皮の機となればですね。


この調査ちょっと面白くて、中学生は「本屋などのお店で買う」が7割と最も多かった一方、高校生は「電子版を無料で読む」が約7割とのこと。なるほど。中高生全体では「マンガはまったく読まない」と答えた人は約2割とのこと。マンガ離れそこまででもないかなと思いましたが、どうなんでしょう。


NFT漫画というと、何となく日文のイメージですが、今回は実業之日本社からのNFT漫画プロジェクトです。PFはZaifなんですね。作品自体の話題をどうつくっていくかですねー。


エンタメ向けのファンド組成ということで、どんな人が?と思いましたら、スケブ創業者のなるがみさんがいて、ちょっと面白いなぁと思いました。目利きが利きそうなファンドです。


堀井ゆうじさん、鳥嶋さんがDQ3リメイクに伴い、キャラデザの改変に言及している動画です。特にマンガ業界からすると見慣れた話なのですが、これをイーロンマスクがxで拾うなどしたのと、その中に割と致命的な誤訳が混ざり込み、ちょっとこれ大変なことになりませんかね?という状況です。

鳥嶋さんは起点ではありますけど、これは途中誤訳した人がクリティカルなんですけどね。こういう展開になると、どうなるのかなと。あとやっぱり、鳥嶋さん持ってますよねぇ。


今春の参院予算委員会では、当時の岸田総理から「コンテンツ産業を国家戦略に」という声がありました。総裁選後の石破新総理の発言の中には、今のところコンテンツ産業に対する言及はありません。

一応、総裁選の前に政策会見資料はあるのですが、現状を見ると、支持基盤の無かった石破総理は、当初考えていた方針があったとしても、完全にアンコントローラブルになっているように見受けます。こうなると、これまでの路線が踏襲されるのか、どうなるのかですね。


Webtoon関連

コミックナタリーによるWebtoonのアワードが開始とのこと。
これは、Webtoon関連で、どこか1企業の意向に寄らない国内アワードとしては最初にのものになりますね。これをナタリーが始めるというのは良いですね。


SORAJIMAが東京と大阪で「SORAJIMA展」とのこと。会場が丸井なのが面白いですね。丸井側の企画なのでしょうか。

そんなSORAJIMAの9月ラインナップのプレスリリースですが、ライトアニメの話題もありますけども、作品の数と言い品質と言い広報と言い、ものすごくちゃんとすべきことをしているなと思いました。


10/1より俺レベ新シリーズスタートですね。


Webtoonとショートドラマの、韓日翻訳コンテストとのこと。
それぞれを1部門として、プロからアマまで参加可能とのこと。
ショートドラマもあるというのが、今時ですね。


海外News

タイトル訳:ネイバーウェブトゥーンが人気ポップアップストアをオープンし、知的財産権(IP)の拡大に乗り出したが、運営と安全管理が不十分との批判が出ている。ネイバーはシステム改善やレジ係の追加など、混乱防止策を準備している。

とのこと。人気は人気のようですけど、またそれはそれで大変そうです。


ウェブトゥーンフェスの様子の記事ですが、細かい展示などなかなか面白そうです。


libroさんの北米ニュースまとめです。
今週は、アンドリーセン・ホロウィッツの記事が面白いです。

タイトル訳:アニメが世界を飲み込んでいる

現在の、アニメ・ゲーム市場を俯瞰してみると、ついでにVtuberやAIの話題まで多岐にわたって、IP串刺しでビジネスが見られています。海外ってこうなんですよねー。あんまり別けて見ないでIPで括ると言いますか。


AI・画像生成関連

韓国のWebtoon系AIの記事です。
製作ツールとAI翻訳ツールが協力するということのようです。なるほど。


生成AIのホワイトペーパー的なものですね。
森川先生の言う通り、ここに意見を入れるのが実利的かと思います。
誰か一人を叩いたり、影で悪口言っても、全くなんの役にも立ちませんので、そんなことしてる暇があるなら、ご意見入れるべきと思います。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

いいですニャー🐈


記事のみ紹介


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菊池健
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