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【マンガ業界Newsまとめ】 ピッコマ時価総額8000億円超で上場に向かう道/集英社最新決算 など|8/28-066

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。

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漫画アプリ「ピッコマ」が日本上場へ、時価総額8000億円超も-関係者

金融情報の専門誌ブルームバーグが「複数の関係者への取材」を根拠として、カカオピッコマ社の2023年上期の上場を示唆しました。ちょっと気をつけないといけないのは、同社が正式発表したわけでは無いということですね。観測気球的な面もあるかもしれません。

話題なのがタイトルにもある時価総額8000億円超という点です。
いかにピッコマが好調とはいえ、同じく最高潮の日本の漫画市場も市場規模全体で6759億円ですので、7000億円に届きません。

この8000億円の出処は、2021年7月に同社が600億円を調達した際に、投資ファンドなどが算定した企業価値が8000億円であったところから、現在価値というよりは、これまでの投資の経緯から、最低限超えるべき上場時の目標金額として設定されているようにも推測できます。

とはいえ、グローバルマンガ市場の成長性は3兆円とも言われていますし、

ピッコマはフランスなどへの海外進出も既に行っており、NFTや暗号通貨への展開や、日本の出版社との協業など、マンガを起点とした事業拡大へ向けて、多角的に動いていることが見て取れます。

マンガは勿論、それ以外も含めた合わせ技で、高い目標を狙っていくのではないかなと推測しました。

実はこの件、冒頭のニュースソースの問題からか、他ではあまり記事になってないのですが、以下のように仕手筋っぽいところでは記事になってます。

非上場企業の多い日本の出版産業では、あまりこういう仕手筋的に浮いた話は出てきにくかったと思うのですが、これもまた流れですかね。ピッコマ以外でもWebtoon関連で新規の資金調達を行う際には良い後押しになるネタ元になりそうです。

つまり、Webtoonにはまだまだ外部からお金が入って来そうですねと。


【決算】集英社 第81期決算は減収減益に

売上が約1,952億円で、先期の約2,010億円から2.9%減となり、2000億円は割ってしまいました。純利益が約268億円で、先期の約457億円に対して41.3%減となっていますが、ここは新収益認識を適用とのこと。

売上としては、『鬼滅の刃』特需の80期の翌年に『呪術廻戦』が続いたことなどで手堅く低減を抑えたであろうことが作品群の層の厚さを感じます。純利については、80期の20%台の純益率のほうが大変な数値なので、この新収益認識適用の折になんらか調整を加えたのかなという印象はあります。減収減益とありますが、社会的規模の大ヒット作品が出た翌年の漸減と考えれば、問題は全く無い水準というか、むしろとても健闘されてるのではないでしょうか。

非上場ですのでむべなるかなですが、キャッシュフローの投資周りの金額や内訳を見てみたいなと言う80‐81期の決算でした。出版社の場合は、投資以上に新人~ベテラン作家に支払う原稿料や印税、ライセンス収入こそが、一番の投資ではありますけども。

いずれにせよ、集英社の好調は続いていることから、それにより外部ステークホルダーからの意見や意志に邪魔されることなく、作品(作家)や様々な取り組みへの投資は続いていくと想定されます。

集英社の存在は、日本エンタメの根源にある心臓部のようなところがあります。決算が好調に続き、この「自社で自由に投資に充てられる資金」が作品作りに向かって行き続けることや、経営体制が安定し続けることは極めて重要なことです。一企業の決算ということに留まらず、良いニュースだと思います。


株式会社アカツキIR「経営方針」

ウェブトゥーンプラットフォーム「HykeComic」を運営するアカツキ社が、経営方針を発表し、その中でウェブトゥーン事業などに触れました。

・国内市場に閉じたプロジェクトへの事業投資を凍結
・グローバルポテンシャルを持つ大型プロジェクトへ集中投資
・長期間の継続運営で大きなリターンを目指す

株式会社アカツキ 2022/8/22 経営方針資料

とあり、ゲームには4年間で200億、ウェブトゥーンにはモデル確立までに20億円を投じるという投資規模とのこと。

アカツキ社IRより https://aktsk.jp/ir/

経営方針資料のコミック部門の中には、事業の計画やHykeComicリリース後の利用者数実績などを示しています。やはり海外展開を強く意識しているところが資料からも読み取れます。

一部例に取ると、ここから3年の2025年までには1000作品を生み出し、2022年中に韓国・中国への作品販売、2023年内に英語版を数十か国にリリースする予定とのことです。こうしたところ、明確に先に計画として出すところは、ゲーム系の上場企業らしいところで、頼もしいですね。


文化庁メディア芸術祭が今後の作品募集を行わないことを発表

アート、エンターテイメント、アニメーション、マンガの4部門ですぐれた作品を顕彰してきた「文化庁メディア芸術祭」が、25年で事業を終了するということのようです。

メディア芸術祭がこれまで日本のエンタメに与えてきた影響はとても大きいのですが、この記事というか現時点ではあまり情報が無いのと、業界全体としても「そうか終わっちゃうのか」と、放心して思考停止してるような状態ではないでしょうか。私も、今の時点ではただ言葉がありません。


日本アニメ 約1万5000作品のデータベースが初めて完成 公開へ

日本動画協会が、これまで困難とされてきた日本のアニメについての情報をまとめたデータベース「日本アニメ大全」を公開しました。15,000作品の公開時期や監督、スタッフ、声優などの情報を検索可能とのこと。

マンガ同様散逸しがちなアニメの情報を、アニメ製作会社などが集まった業界団体である日本動画協会が情報としてまとめたということです。日本動画協会は、毎年「アニメ産業レポート」という、アニメ産業の市場規模などをまとめたレポートを発表している団体です。


「鳥取での販売がもはやリスク」──県の有害図書指定でAmazonから排除 三才ブックスが抗議のPDF公開

これはかなりマズイです。ことは鳥取県一県の問題では無いですし、それ以前に指定プロセスで恣意的な検閲に近い整備状況であるとすると、事態の重さに鳥取の行政の方々には気づいていただきたいところ。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

ジャンプラの縦スクロール漫画賞を受賞した『ロマンティック・キラー』がアニメ化とのこと。PVも面白かったです。

これは私の認識違いかもしれないのですが、恐らく「出版社発の縦スクロール漫画アニメ化」という意味では第1号では無いですかね。同社マンガMeeの『サレタガワのブルー』は実写化しておりますが、出版社発のWebtoonがそもそも少ないので、そうではないかと思ったのですが。


マンガアプリなどを提供するLink-U社が、俺レベのIPホルダー韓国D&Cメディアの制作スタジオ「スタジオブーム」と、東京に共同出資会社を設立するとのこと。


2022年10月にも、マンガ・アニメ業界横断イベントIMART2022が開催します。

IMART2022のテーマは「ウェブトゥーン」で、基調講演のマンガ部門は、アカツキHykeComicの香田哲郎CEO、アニメ部門は『神の塔』をアニメ化したMAPPAの木村誠企画部長が登壇します。より詳しくは「告知」部分にも記載します。


海外News

韓国製作ということで海外Newsに仕分けましたが、「地獄が呼んでいる」並みのCGや全体の出来で上がってきた場合、とても跳ねるんじゃないかなとも思いました。

以前から、日本漫画原作のハリウッド、海外配信サイトの実写作品の賛否については、様々話題にのぼってきましたが、日本原作ー韓国映像化というラインも新しくて良いですね。実写だと他にも『重版出来』ほか沢山出てますが、この『寄生獣』は、大跳ねを期待したいです。


日本でもWebtoonの時点で話題になっていた『ナビレラ』ですが、既にこの8月でNetFlixで映像化されているのですね。


ウェブトゥーンデータ分析専門会社「今日のウェブトゥーン」が21億ウォン(2.1億円)規模の投資を集めたとのこと。

「今日のウェブトゥーン」は、作品の商業的な成果を制作の初期段階に分析できるデータ分析サービス「ウェブトゥーンアナリティクス」を個人クリエイター対象に提供しているようです。


先日『俺だけレベルアップ』の作者の痛ましい死去という報のあった韓国で、働き方改革を実際に行っている企業の具体例として、5社が選定されたようです。


作品のモニター制度となると、日本の場合は影響力のあるレビュアーや著名人に先行で作品を見てもらい、プロモーションとする手が最も多いというか思い浮かびます。

ただ、ここでの韓国情勢における説明では、最近も話題になった盗作やトレースなどのリスクヘッジや、社会問題につながる表現の事前チェックなどが主な目的とのこと。このあたりは、グローバル展開に先立っての手堅い一手というところでしょうか。

現在日本では、海外向けのサイマル配信の動きが複数伝えられていますが、このあたりは今後の課題となるかもしれません。


日本でも評判も興収も良かったDB超の新作ですが、北米でも好調なようです。北米コミック市場の好調さも伝えられている中で、好影響を期待したいところです。


この記事、海外の日本エンタメファンを語るうえで重要な切り口だと思います。ハイエンドというか、真性の日本エンタメオタクだけを相手にすると、高齢化しちゃうというのはホントだと思います。


フランスにおける日本漫画人気などに触れた記事です。フランスのマンガにあたるバンドデシネも含め、このジャンルの実に半分が日本漫画になってますということです。

個人的に興味深かったのが、隣国ルクセンブルクの高級フィギュア制作会社が、しっかりと正規版権をとってのフィギュア制作のビジネスをしているということでした。いわゆる造形師がEUにも広がってるんですね。


ドイツの書店で、ドイツの出版社が横断して日本漫画の無料配布を行うというちょっと興味深い取組です。いわゆる販促冊子でもなく、商品版を無料で配布するわけでも無く、1冊120ページほどの取組用の本をしっかり作って配ったそうです。

公式なニュースではなく、現地にお住まいの方のnoteなのでビジネス的な詳しいところまではわかりませんが、配布対象のリストを見ると、『SPY×FAMILY』『らんま1/2』『BEASTER』から『ドロヘドロ』まで、なかなかにガチのラインナップであることもわかります。


サウジアラビアのコンテンツ制作会社マンガプロダクションズが、ダイナミックプロとともに、グレンダイザーの新しいプロジェクトを立ち上げると発表しました。

フィリピンではボルテスVが人気ということと同じく、アラブ等ではマジンガーZを通り越し、グレンダイザーが人気ということは伝えられてきていましたが、しっかり正規版権として大きな展開を見せそうです。


これは良くないニュースですが、先週の本Newsまとめにおいて、内容があまりに酷いので、思う所を指摘させていただいた日経新聞の記事について、朝鮮日報にも転載されちゃいましたというものです。

日本の経済誌の中でもクオリティペーパー筆頭である日本経済新聞なわけで、そこに書けば当然こうして広がっていきますよね。編集委員の石鍋仁美さんには、きちんと責任を取るというか、誤謬の広がりへの対処をしていただきたいと願います。

ほんと、しっかりしてください。お願いします。漫画もウェブトゥーンもみんな現場で頑張って日々努力しており、対立したい人などいないのです。
と、現場からは哀切の念をお伝えいたします。


こちら、同様な趣旨で書かれてますが、データの見方も↑日経のような脇の甘さは感じられず、ちゃんと書かれていると思います。ウェブトゥーン側の課題もしっかり認識されているのは、フェアだし見る目も正確だと思います。


国内News

国産で最も普及しているマンガ・イラストの作画ソフトCLIPSTUDIOが、買い切りのパッケージ版の販売を辞め、サブスク版のみの提供にシフトするとのこと。フォトショップなどのAdobe製品同様の形になるということですね。


一見ほのぼのニュースにも思えますが、新世代のデータサイエンスだなぁとも思いました。


無事終わってホント良かったですね。記事にもありますが、台風に降られちゃった時にたまたま待機列だった方には哀悼の念がありますが、夏コミ復活はまさに「ハレの日」の出来事だと思います。


店舗数が激減するもDXが進むと各所で伝えられる「とらのあな」ですが、リアル店舗現状の代案として、こうして一般書店内に出張所(ショップインショップ)を設け続けています。

今回は、精文館書店内にポンポンと2つ連続で増やしてます。こういうB2Bの取組って最初は様子見をして、良い結果が出ると増やしていくスピードを上げて行くものですから、そこに加速がかかってきているのかなと感じました。


そのリアル店舗からネットビジネスにDXした「とらのあな」として、今度は新たなビジネスをする社長候補を選出して、支えていくという取り組みが始まるとのこと。

最近、改めてテレビ出演などでも注目を浴びている、同社創業者で最高責任者の吉田博高氏が、CEOを選出するオーディションのアンバサダーになられるとのこと。(記事の写真がなんかとても良い写真なので必見です)

なんといっても、ホントにDXを成功させて、1年で200億円から300億円の売上アップを実現している会社ですので、この取組がどうなるのか楽しみです。


記事のみ紹介


告知関連

KADOKAWAタテスクコミック大賞コミチ支部 は8/31まで

月初に告知させていただいた、こちらの賞ですが締め切りまであと3日です!応募条件も緩和されてまして、ご応募しやすくなっております!


10/21-23「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima 2022(IMART2022)」の開催決定IMARTは第3回開催

“マンガ・アニメの未来を作る” をテーマにしたイベント「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima 2022(IMART2022)」の開催が決定。10月21日から23日までの3日間にわたってオンライン配信されます。

IMART2022のテーマは「ウェブトゥーン」で、基調講演のマンガ部門は、アカツキHykeComicの香田哲郎CEO、アニメ部門は『神の塔』をアニメ化したMAPPAの木村誠企画部長が登壇。その他にも、例年通り業界を縦断した多彩な登壇者が登壇予定です。

キーピクチャーは日本の縦スクロール漫画初のヒット作『ReLIFE』の作者、夜宵草さんです。

IMART2022イメージイラスト 作画:夜宵草

左側がマンガ、右側がアニメを表し、中央にWebtoonが流れていく展開で過去から現在までを繋いでいます。ちなみに、こちらのイラストの依頼から監修まで一通り担当させていただきました。楽しいお仕事でした。夜宵草さん、良いイラストを本当にありがとうございますです。

10月の生配信視聴のほか、開催後のアーカイブ配信を視聴できるチケットは5000円で、Peatixで販売を開始しました。本Newsまとめでは、今後も続報をお送りします。



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