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【マンガ業界Newsまとめ】『セクシー田中さん』芦原妃名子さん訃報と原作・映像化の関係性、韓国から見たWebtoonの日本市場 など|2/4-139

マンガ業界ニュースの週1まとめです。マンガ・アニメ業界向けイベントIMART(https://imart.tokyo/) を運営する筆者が、動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、マンガ業界の方が短時間で1週間分の情報をチェックできることを目指しています。

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『セクシー田中さん』著者芦原妃名子さん訃報と原作・映像化の関係性

芦原先生の訃報は本当に残念で、居たたまれない気持ちです。どうか安らかにと哀切とともに祈念いたします。事実関係追及はともかくとしつつも、追い込まれた方に寄り添える方法は無かったか?ともすれば、過熱化した周囲の反応と距離をおいたり、その声がもっと抑制されたものに出来なかったかと、答えは私にもありませんが考えるだに無念です。

このまとめを始めて約2年半になりますが、1週間分のニュース記事をさらう作業の中で、一つの話題に対しての記事数としては最大でした。筆力の及ぶ限り、なるべく抑制したかたちでまとめを試みます。

事件の初期報道

訃報は1/29でした。

関係各社のコメント

セクシー田中さん|日本テレビ (ntv.co.jp)

今回関係する日本テレビ、小学館双方からコメントが出ました。

日本漫画家協会、及び漫画家のコメントなど

今回目立ったのは、漫画家・及び漫画家協会からのこの件に関する発信でした。特に、協会関係者から芦原さんの死を悼むもの、これを今後は繰り返さないようにというメッセージが多数発信されました。

原作と漫画の関係性などに触れるもの

記事の他にも、SNS上では沢山の声があがりました。特に同じ立場の漫画家さんたちや周辺の中では、哀悼の意や様々な意見が百出し、多くの方が意見をコメントしたり、それを読んだりすることでより悲しみを抱えることにつながったのやもしれません。(個々の記事を批判するものではありません)

派生的に起きていること

原作と映像化サイドの件については、ともすると攻撃的なコメントも含めて多数出ています。これにより、大切な議論となる前の攻撃的なものも沢山あり、それにより、関係者やご親族などにいわれのない攻撃があったり、共感することにより多くの方が傷ついたりしています。そうした2次被害的なことは出来る限り抑制していきたいところです。

全体に、本論から外れるなどヒートアップした議論もありました。芦原先生が最後にのこされた言葉の通り、それはご本人の本意ではないと思います。今はただ悼み、落ち着いて過すことを何よりにと思います。

大事な議論から外れ、捉われないように

今回、多くの記事に、以下のような相談窓口がつけられました。
この件についての議論が大切であることは間違いないですが、皆さんの気持ちが落ち込んでしまっては、それは2次被害であり、芦原先生の本意ではないと思います。

しんどいと思ったら、ネットやテレビなどから離れて、どうか深呼吸をしてください。どうしてもおつらいときは、ためらわず、以下の窓口などにご相談ください。

相談窓口

<電話による相談>
いのちの電話(一般社団法人 日本いのちの電話連盟)
ナビダイヤル:0570-783-556(10:00~22:00)
フリーダイヤル:0120-783-556(毎日16:00~21:00 / 毎月10日8:00~翌日8:00)

<相談窓口一覧ページ>
厚生労働省 まもろうよこころ


韓国から見たWebtoonの日本市場

*: 英語記事です。本文は自動翻訳などご利用ください。

タイトル訳:インタビュー:ネイバーウェブトゥーンの日本市場子会社のCGOは、ウェブトゥーンが日本でより存在感を示していると語るー韓国のウェブトゥーンが日本のコミック市場で過去最高を記録

タイトル訳:ネイバーとカカオ、マンガ大国日本でオンラインマンガで成功

作品的にもビジネス的にも韓国を起点として動くWebtoon事情ですが、ここに来て、やはり他に比べ大きな市場規模を持つ日本市場の重要性がより高まっていることが読み取れます。

現在、カカオピッコマ、NAVER系LINEマンガともに、Webtoonと言えば韓国作品が高い売上を上げています。

しかしながら、過去のこのまとめでも紹介して来たとおり、国産Webtoonスタジオも多くの作品を世に出し、かなりの売上を上げる事例も出てきました。

昨年11月に開催した業界イベントIMART内では、No9社の『神血の救世主』が、国産勢としては過去に類を見ない売上を上げ続けているという話題も、具体的な数字を示されました。
 *: 筆者の関わるイベントです。
 **: イベントの配信視聴は有料です。ただし、サイト下部にある協賛企業・団体の方は無料で視聴可能です。自社内での視聴のご案内をご確認いただくか、どうしても判らない場合は、IMARTまで視聴方法をお問合せ下さい。会社名のドメインが入ったアドレスでお問い合わせいただければ、視聴方法をご案内します。

昨年の電子書籍ビジネス調査報告書2023では、国内Webtoon市場が約520億円と試算を発表しました。このままWebtoon市場も伸びて行くと推測されます。その中で、国産Webtoonの存在感が増していくと、いわゆる韓国タイプのWebtoon以外の作品も市場の中で徐々に存在感を増していくことが考えられます。

思えば、日本の横漫画も海外から入ってきた後、日本なりに変貌を遂げて現在の様な形になっています。新たな市場の成長とともに、日本におけるWebtoonの形も日韓が交わり少しずつ変わっていくのではないでしょうか。


国内News

DMMグループのCLLENNが、新コミックレーベルRopopoをスタートしました。CLLENNは、DMMグループにあったコミック制作に携わるグループ会社4社のうち「株式会社コミックストック」「株式会社フューチャーコミックス」「株式会社GIGATOON Studio」の3社が合併したものです。

今回、その統合レーベルとしてRopopoをスタートしたようです。社名もそうですが、レーベル名もポップな感じですね。


老舗電子書籍ビュアー「PUBLUS Reader」をACCESS社から取り込む体制として株式会社PUBLUSをグループ会社とし、代表に株式会社ブックウォーカーと同じく、森田岳氏が就任するとのこと。


講談社が国際ライセンスに関する情報を提供する英語版サイト「Kodansha Licensing Website by C-station」をローンチとのこと。


小学館公式通販サイト「マンガワンSHOP」内で、新サービス「マンガワンオンデマンドCOMICS」がスタートとのこと。1冊単位の印刷(プリントオンデマンド)で、紙の単行本が発刊してない作品も紙で購入できるとのこと。これはボンデジ作品にも良いですが、絶版作品にも適用できるとよさそうですね。


かねて、国策による漫画原画の散逸防止について、日本漫画家協会会長のちばてつや先生の原稿をもとに検証を進めるということがありましたが、デジタル保存などの方向性で検証を行っていくとのこと。


現在、漫画賞と呼ばれるものは多岐にわたります。
昨年開催したいIMART2023の中で行われたセッション「漫画賞の今」の中では、「マンガ大賞」「このマンガが凄い!」「次に来るマンガ大賞」などの関係者を集めセッションが行われました。

IMART2023 セッション「漫画賞の今」より

ここ10年ほど、様々な漫画賞の運営やプロモーションに関わらせていただきましたが、この沢山できた漫画賞は、ひとつの「盛り上がり」とも捉えられるかなと考えられます。

実際、複数回行われている漫画賞を運営すると、なかなか作家が集まりにくくなっていることは感じます。ただ、漫画賞を集めて掲載するポータルサイト「マンナビ」などもある中で、漫画家側はその見極めを行い、自分にあった漫画賞へ応募できる環境が出来てきているとも言えると思います。


なかなか不安定なx(旧Twitter)に対して、Tiktokによる漫画のプロモーションが結果を伸ばしています。わかりやすい記事です。


漫画家から作品を預かり、電子書籍サイト・アプリなどで販売を行うNo9社の月間販売額が2億円を突破とのこと。その中で、どんな施策を行っているか5つの例を挙げています。どれも地道なものですが、作品紹介用のアカウント「あくせるちゃん」のフォロワーが15万人に及ぼうかとしていて、凄いなと思いました。


マンガ・読書は10番目でした。


有料記事ですが、ユニークな作品を生み出す漫画という土壌を、アニメが広げていく日本にとっての王道が語られていました。

個人的には、ユニークな作品作りは属人が正道なので、天才の発生率を高める環境づくりが重要と思っています。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

2031年にはWebtoon市場が849億米ドルに及ぶ試算とのこと。
本日の円ドル相場(148.38 円)で、12.6兆円。
ほんまかいなですね。


BLアワードノミネート作が発表されましたが、その中にcomicoのWebtoonが9作品ノミネートとのこと。長くWebtoonを作ってきたcomicoですが、積み重ねてきた作品数がここまでエントリーされてくるようになったのですね。


独特な制作手法、販売、プロモーションを行っていたサイエンスSARUですが、MBS系でアニメ化とのこと。


これについては最早、クリスタの存在感がでかすぎて、クリスタとどう差別化するのか訴求しないとあかんのでしょうね。


掛け声が若干あらぬ方向に行っている感


海外News

*: 海外ニュースが続きます。記事本文は自動翻訳等をご活用ください。

タイトル訳:2023 年通年 CIRCANA BOOKSCAN - 作家、スーパーヒーロー、マンガ グラフィック ノベルのトップ 20

ICV2による2023年のコミック売上ですが、ジャンル別になっていて日本のコミックもランキングになっていました。

ICV2 記事より https://icv2.com/articles/markets/view/56135/full-year-2023-circana-bookscan-top-20-author-superhero-manga-graphic-novels

鬼滅、チェンソーマン、スパイ、呪術とジャンプが続く中、トップ20のうち2か所に、白泉社ベルセルクと、講談社ブルーロックが爪痕を残した形です。ジャンプ、本当に強いですね。

これはそのまま、アニメの強さと言えると思いますが、同時にMANGA Plusによる直接プロモーションも効いているように思います。


タイトル訳:韓国政府、漫画を5年間で10億ドル成長させるという野心的な計画を発表

5年で現在の市場サイズを超える1500億円の上積みをねらうとのこと。詳しい計画がこれから上がってくるのでしょうか。


タイトル訳:NAVER第4四半期の純利益はコマース、フィンテック、ウェブトゥーンのおかげで129%増加

Webtoonを含むコンテンツ部門は前年比6.6%増とのこと。


タイトル訳:さらなるウェブトゥーンの改作により、ストリーミングの世界でカカオの影響力が増大

カカオも、俺レベアニメ化や、24本も出たというテレビドラマなどをもとに、成長中とのこと。


タイトル訳:Solo Leveling アニメは本当に伝説のウェブトゥーンのレベルにあるのでしょうか? 4話を終えて、最初の感想を述べます!

俺レベアニメが4話まで進行したところでの、割としっかり目のレビューです。内容的には、割とちゃんと出来ているのではないかという見方をしています。


タイトル訳:HYBE のウェブトゥーンが紙単行本への参入に成功

HYBEによるKPOP連携Webtoonですが、紙単行本になったようです。これがファングッズとして売れてくると、これまたWebtoon×Kコンテンツの独自のスタイルになりますね。どうなるでしょうか。


タイトル訳:Wattpad、第2弾の人員削減を実施、従業員の15%を削減

NAVER系PF、北米Wattpadは昨年に続き今年も15%の人員削減を行ったとのこと。数字が出ていることを見ると、ある程度効果のあるリストラなのでしょうか。


タイトル訳:マドリードで「K-Webtoon」無料展示、韓国漫画「オンライン」

スペインでのWebtoon施策で、これは政府主導のようですね。


タイトル訳:ウェブトゥーンがアングレームの漫画を取り上げる:「フランス人作家のネットワークを発展させることが不可欠である」

有料枠が多い記事なのですが、フランスアングレームでは、NAVERがカンファレンスに参加するなどして、積極的にWebtoon推進をしているとのこと。


タイトル訳:漫画とウェブトゥーン 金の卵を産む鶏

内容的には凡庸なものですが、ベトナムのWebtoon関連記事です。韓国は、Webtoon以前より映像コンテンツや自動車、家電など、多くをベトナムに輸出しており、重要な取引国と見ていると思います。


libroさんの北米ニュースまとめです。

ジブリが中国アリババグループと提携、日本の男性アニメがついにNHKワールド(海外で放送されているNHK)、北米での日本アニメ浸透度調査など、面白い数字が出ています。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等


記事のみ紹介


告知関連

講演タイトル:BLと女性オタク向けコンテンツの相関関係(仮)
実施日時:2024年3月14日(木)14:00~15:00
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番外記事

国内にコアファンを抱えるCreepyNuts提供のマッシュル2期ED曲が、YOASOBIに続き海外でもヒットとのこと。その打ち出し方の中に、曲に合わせたダンスをアニメPVに入れながら、TiktokでCGM化されることを狙うという型が確立しつつあるとのこと。これだと、呪術のEDなんかも良さそうですよね。日本らしい型だなと思いました。

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主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに番外編も書きます。マガジンTwitterのフォローしていただくと、更新情報が届きます。

今年2023年11月24日~26日に、第4回IMARTというマンガ・アニメの国際カンファレンスを開催しました。
基調講演に鳥嶋和彦さんを迎え、マンガ・アニメの現場から22のセッションやピッチが行われました。

アーカイブ配信のチケット購入がこちらになります。

インプレス社『電子書籍ビジネス調査報告書2023』のWebtoonパートの執筆を担当させていただきました。

筆者個人へのお問い合わせなど、以下まで。


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