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【マンガ業界Newsまとめ】鳥山明さん急逝 など|3/10-144

マンガ業界ニュースの週1まとめです。マンガ・アニメ業界向けイベントIMART(https://imart.tokyo/) を運営する筆者が、動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、マンガ業界の方が短時間で1週間分の情報をチェックできることを目指しています。

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訃報:漫画家の鳥山明さん死去 68歳

集英社と、地元中日新聞による訃報

 鳥山明さんが3/1に急性硬膜下血腫のため死去しましたと、集英社が8日に発表しました。68歳。葬儀は近親者のみで行われたとのこと。中日新聞の記事の中には、生前鳥山明さんが顔写真の公表を好まなかったということで、記事もそうしたところからなるべく選んでいます。

集英社の発表の中では、鳥山明さん個人の会社であるバードスタジオと、ゲームや映像関係の版権業務を行うカプセルコーポレーション・トーキョーからのコメントの他、ドラゴンクエストで親交の深かった堀井雄二さん、漫画家として特に親しくされていた桂正和さん、尾田栄一郎さん、岸本斉史さんから、コメントが寄せられています。

SNSでは、多くのファンや、身近な存在とも言える漫画家たちなどが、その喪失感を表していました。x(旧Twitter)の話題は、ここ数日鳥山明さんとTARAKOさんのことに埋め尽くされたといっても良い程でした。これは、世界的にも波及しています。

各国の声

タイトル訳:メキシコのテレビ局が鳥山明をバイラルドラゴンボールマラソンで表彰

その影響力は大きく、イギリス、アメリカ、フランスの大使館や各国首脳のほか、珍しい所では中国からもコメントが出ています。パリのサッカー、サンジェルマンのスタジアムでは、コレオグラフィー(人文字)で哀悼の意を示したり、メキシコでは一つのテレビ局がドラゴンボールマラソンを放送するなど、各国において、歴史に残るアーティストと同列か、それ以上の弔意が示されています。

その影響力の一部

日経新聞記事より

漫画・アニメ・ゲームなど、正に現代最高の世界的ヒットを生んだ偉人を失くし、業界に近い所の現場では様々な影響が出ています。

この余波をうけ、「漫画全巻ドットコム」のTORICO社はストップ高。

書店では、ジュンク堂、紀伊國屋など特設コーナーを検討。

鳥山明さんがキャラデザを担当するドラゴンクエストの次回作12の開発については、制作を継続するとスクウェア・エニックスが発表しています。

ドラゴンボールのゲームを開発したCC2社は臨時休業となりました。

訃報のわずか数日前、SAND LAND Projectということで、鳥山明さん自身から今後意欲的に作品を制作していくコメントが出ていました。今回の訃報が急なことであったことを物語っています。

業界ニュースまとめということで、ニュース的なことをまとめましたが、かくいう私も、最初に買った単行本は『Dr.スランプ』1巻で、記憶に残る最古の漫画のギャグは第1話の「は、はかせ!! 飛べません!!」ですし、自宅にはDr.スランプ最終話の最後のページの複製原画を飾っています。

多くの方にとってそれぞれの心に残る鳥山作品やシーンがあるかと思うのですが、今はただ弔意をそれぞれの胸に納めていくより他にないのでしょう。


TARAKO氏のご逝去について

そして、今週は大きな不幸が重なり、ちびまる子ちゃんのまる子役を長らくつとめてこられたTARAKOさんも、3/4に亡くなられたとのこと。不世出の方が相次いで亡くなられ、多くの方の別れを惜しむ声がでていました。なんともいえませんね、こう続くと。


クランチロール・アニメアワード日本で開催

クランチロールのアニメアワードが日本で開催されました。
同社は、米国発祥で日本アニメを世界に発信した最先行サービスですが、これまで多くのイベントを米国などで行ってきました。

その同社が今回日本でアワードを開催した理由は「日本のクリエイターを直接祝う」「なんなら、海外の著名人も日本に来て日本のクリエイターを直接祝いたい」という狙いがあったようです。

たしかに、海外では沢山の映像系の祭典が行われ、アワードなどが出されていますが、多くの場所で日本のクリエイター不在で式が行われることが繰り返されてきました。各国の主催者も、日本の方を呼んでないわけではないのですが、なかなか渡航してまで日本のクリエイターが海外に行くというのは難しいのですよね。

そうした意味で、非常に積極的で面白いイベントだなと思います。クランチロールには日本の資本も入り、スタッフにも日本人が増えたと思いますが、そうした影響もあるのかもしれませんね。

そしてこの課題、日本の漫画家も同じかもしれないなと思っています。


今週のセクシー田中さん関連

今週、小学館が日本テレビの社内調査とは別に、特別調査委員会を設置したとのこと。また、『セクシー田中さん』と同じ、小学館の原作作品『たーたん』の春ドラ放送を取りやめていた日本テレビは、「小学館マンガ原作の連続ドラマ枠」について、別のドラマを制作する予定とコメントしています。

後半2つの記事は、法的な部分や作品へしっかり踏み込んだ記事などが出ています。


国内News

斎藤経産大臣が、大臣直属の「書店振興プロジェクトチーム」を設置とのことで、界隈で話題になりました。今の所声掛けだけなのと、具体的な内容がないので何とも言えませんが、クールジャパン機構はじめ、これまでのこうした国策が、ことごとく現場の信頼を失う内容であったため、どうなるかというところですね。やるならしっかり実を取って欲しい所。


外務省の該当Webサイトのサムネイルがでないもので、受賞した台湾サイドのきじをリンクをご紹介。

今週は大きなニュースがありすぎたか、この件で記事がみつけられませんでした。取組そのものは良いと思うのですが、発信力は課題ですね。


先行していたサイト「SHURO」の公開に対して、異世界特化のレーベル。異世界に強い別の版元から移籍した編集さんが担当されてます。


ブックリスタ社のクリエイター向けサービスYOMcoma内で、漫画を動画にするサービス開始とのこと。BGMつけたり、読み上げ機能や背景色塗り、まとめ機能などユニークな取組ですね。記事内のサンプル動画を見ると、なるほどと思います。


ビッグコミックスペリオールが、毎号紙の雑誌が家に届く定期購読サービス開始とのこと。ビッグコミックオリジナルなど、より高齢な読者対象のレーベルでは、この取組が先行していましたが、スペリオールでも開始するようです。特典がついてますね。


セルシス社はNAVER系LineDigitalFrontierと資本業務提携していましたが、そのあたり人事に反映され、現LDF、つまりLINEマンガのトップの高橋氏が社外取締役で経営参加するようです。


Adobeがマンガに特化して導入したフォントを、セルシス・クリスタでも導入とのこと。


KADOKAWAが韓国でSNSマーケなどの BY4Mグループと合弁会社を設立とのこと。


電子書籍取次の「電書バト」による利用者(作品を提供する漫画家側)の顧客満足度アンケートです。取次のアンケートは珍しいですね。


コンサートホールということですから、2.5次元ミュージアムなどにも使用できるのではないかと思いますが、こうした集積が東京に集まるのは良いことですね。


選挙の余波で、唐突に開催見送りを発表したマチアソビですが、今後の継続が前向きに出て来たとのこと。京アニの代理人などをつとめた桶田弁護士が入り、実のある交渉がなされたと推測されます。端的に申して、クリティカルヒットだと思います。非常に価値の高い一打です。


森川ジョージ先生、たゆまず都に通いつめ、青少年育成条例のアドボカシーを進めてくださっているのですが、この辺り進めることによって議論が今後固まっていく局面に至るかなーと、最近の投稿を拝見して思いました。


最新の記事では無いのですが、見落としており今回にて。

当の奥様の遺族ですら朴さんが犯行に及んだと考えていない状況で、お子さんたちのためにも朴さんのためにも、早く今の方向で結論に至って欲しいと考えています。このことの直前に、飲みに行きましょうって話してたんですよね。果たしたい。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

小学館では、名作『ギャラリーフェイク』を、新体制のノックトゥーンは『サイボーグ009』を、LINEマンガではテレビアニメ作品「メタリックルージュ」を、ドリコムはテレビ東京で連携で新作をと、ということでそれぞれ新しい動きを見せています。Webtoon作品増えて行きますね。


SORAJIMA作品は、BUMP上で今度はショートドラマ配信開始です。


お色気レーベルのリビッシュでは、青年・少年向けのWebtoonレーベルとしても指導とのこと。ヤンマガ・マガジンあたりの路線でしょうか。


No9、ヒット作の『神血の救世主』に続き『俺だけ最強超越者』も好調のようです。


ユニークなWebtoon背景の提供を続けるロケットゥーンですが、今度はいわゆる背の高いタクシー「JapanTaxi」の素材のようです。乗り心地良いですよね。いや、今時で良い素材ですね。


もともとcomicoの立上時からWebtoonに関わり始め、LINEマンガではLINEマンガインディーズなど、Webtoonクリエイター獲得・育成の取組に深く関わっている小室氏が、Nola社のCMOになられました。事情を知る人は、みなさん驚いたんじゃないでしょうか。

2014年に、当時comicoの北室美由紀さんのインタビューをしたのですが、

記事より

この北室美由紀さんの写真の右にいる、ボーダーの袖が小室さんです。
本当です。もう、この業界に10年いらして、ヒット作を連発する北室さんともども、Webtoon界の2ムロと呼ばれ、comicoマフィアの2トップとして君臨して実績を重ねてこられました。

すいません、2ムロは嘘です。私の中だけでした。ヒット作を生み出したLINEマンガインディーズなど、実績を重ねてこられたのは本当です。今後のご活躍が楽しみですね。


電子書籍、電子コミックのEPUBファイルを制作するツールというのは昔からありますが、今回スマートゲート社がこのWebtoon版を展開とのこと。


現在、日本のWebtoon環境から見た際に、最も海外への玄関口となる体制を持っているのがLINEマンガです。最近は、国産Webtoonのヒットも出始めていますし、今年以降の海外展開、期待されるところですね。


海外News

*: ここから、外国語の記事も紹介します。自動翻訳などご活用ください。

タイトル訳:NAVER ウェブトゥーン、新たなデジタル コミックのヒット作を模索し世界展開の 10 年を迎える

NAVERの展開では、各国ローカルのクリエイター支援もWebtoonの振興に重要と捉えられています。一つ上の記事にある日本の動きもそのひとつですし、記事ではインドネシアのクリエイターの作品が、インドネシア内で映像化されていることにも触れていて、英語圏では「ロアオリンポス」も評価されていますし、そうした狙いを少しずつ進めていることがわかります。


タイトル訳:受賞歴を誇るレイチェル・スマイスのウェブ漫画「ロア・オリンパス」がスマ経由でブラジルに到着

こちらは、その英語ネイティブ作品「ロアオリンポス」が、ブラジルですから、ポルトガル語で出版されるということですね。既にいわゆる3国間展開が成立しているようです。米国法人の動きだと思いますが。


タイトル訳:タイ、カカオエンターテインメントと提携した全国ストーリーコンテストでウェブトゥーンに注目

こちらはカカオですが、タイでの漫画賞開催とのこと。


タイトル訳:トップコメディア、日本ウェブトゥーンプラットフォーム「トップトゥーンジャパン」加入者が200万人を突破

これは韓国トップトゥーン社のアプリですが、日本で200万人といいますから、アプリダウンロードでしょうか。そんなに広がってるのですね。


これは韓国での施策ですが、リコメンドサービスが上手く回っているようですね。AIで動かしているのでしょうか。


タイトル訳:100 冊以上の Marvel Unlimited Infinity ウェブトゥーン スクロール コミックが無料

米国マーベルの提供するMarvel Unlimitedでは、無料で読めるマーベル作品のWebtoonが100作品を超えているとのこと。いつの間にやら、かなりの作品数にのぼっていますね。


タイトル訳:中級小説から漫画へのブーム

こちらは、北米でもグラフィックノベル(広い意味で漫画)が伸びることにより、小説原作のコミカライズが増えているとのこと。どこもそうなのですね。


タイトル訳:グラフィック ノベル トップ 20 - 2024 年 2 月
コミックストアのPOSデータによる売上ランキング

これは米国の「コミックショップ」なので、一般的な書店ではなく、所謂アメコミの専門店流通網(日本だと例えようのない、流通が独立した専門店。日本で言うアニメイトなどの漫画専門店とも、流通的には意味が違う)のランキングです。

ここではアメコミが強い(専門なので)ですが、チェンソーマンやドラゴンボールなど、最新刊は数が出てるみたいですね。そういうものなのか。


タイトル訳:漫画はそれをそのままにしておくべきでしょうか?

こちらは、上の記事と同様、米国コミックショップの話題です。独自の流通網が生まれて50年だそうです。記事のニュアンスを読み取ると、日本の出版不況と違い、悪くないみたいですね。


インド・チェンナイのコミコン、3万2000人とのこと。


タイトル訳:ファンフィクションでお金を稼ぐ人はたくさんいます。著者だけではない

タイトル訳:「扇綴じ」という新たな芸術

2つの記事は、海外で言う同人文化のお話です。
日本では「2次創作の電子化」はタブーとされ、男性向けでは度が過ぎると、女性向けは少しでも踏み込むと、書店の営業が立ち行かないレベルでクレームが来たり、クリエイターが血祭りになったりする炎上トリガーになっています。

これに対して、海外ではフェアユースやファンフィクションという文脈で、日本だと割と禁忌的なことがWeb上で行われてきました。

これはいい悪いではなく文化的なものですので、この辺りの折り合いはちょっと今後の課題になりそうですね。まずは相互理解からとは思いますが。


libroさんの海外ニュースまとめです。今週もいくつか紹介させていただきました。Shogun、ディズニー+から外に出るまで待つかどうか迷ってます。


AI・画像生成関連

アニメの現場におけるAIの仕様などの概況のほか、様々な考察があります。
慢性的人手不足や賃金の低さを問題となっているアニメ業界ですが、AIは福音か破壊の使途かというところから、いかに使うか?みたいなフェーズに入っていきそうですね。


ワコム社はセルシス社とともに、AIに対するスタンスに慎重さを求められる存在ですね。この辺りは愚直さと同時に、Adobeのような見せ方の上手さも求められるようにも思います。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等


記事のみ紹介


告知関連

3/15から、新潟国際アニメーション映画祭が開催されます。
開催情報やチケットの詳細は以下より。

ビジネス書のアワードなどをしているフライヤー社のチャンネルで見つけたのですが、この動画がめちゃくちゃ面白いのです。キングダム&歴史や経済ネタが好きな方は是非。キングダムから、今の中国の思想にも繋がるところがあります。
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主に週末に週1更新ペースで書いています。原則日曜、月曜以降が休日の場合は、週初めの平日の全日公開にて。たまに番外編も書きます。
マガジンx(旧Twitter)をフォローしていただくと、更新情報が届きますので、よろしくお願いします。ご所属のSlackにRSSで流す方も多いと聞いています。

今年2023年11月24日~26日に、第4回IMARTというマンガ・アニメの国際カンファレンスを開催しました。
基調講演に鳥嶋和彦さんを迎え、マンガ・アニメの現場から22のセッションやピッチが行われました。

アーカイブ配信のチケット購入がこちらになります。

インプレス社『電子書籍ビジネス調査報告書2023』のWebtoonパートの執筆を担当させていただきました。

筆者個人へのお問い合わせなど、以下まで。


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