もしも無職に恋したら その3
さらに続きました
これの続き、これのその3である(*1)。すごい。
今回も、その1をご覧になったという「好きなひとが無職」の方がTwitterでご連絡をくださった。ありがとうございます。たまたまだが、3回連続で女性へのインタビューとなった。
ところで私は大変な失敗をしていて、今年1月に頂いたDMに6月まで気付かず(*2)、インタビューの実施はさらに遅れ8月。それだけでも大変申し訳ないうえ、なんとその間に「好きなひと」は就職なさったという。not無職。どうしよう……と思ったが、それでもお話を聞かせてくださるとのことで、ご厚意に甘えこれまでのご様子や就職の経緯などを伺うことにした。
というわけで1・2とは趣旨の異なる部分もあるが、よろしければぜひお読みください。
*1
一連のインタビューについて、趣旨はその1の「事の発端」・「公園で散歩もいいけれども」を参照ください。
また募集にあたり、対象となる方の性別・性的指向等は当初より現在に至るまで一切限定していないことをあらかじめ述べさせていただく。
*2
頂いたDMの通知がアプリ版Twitterで出ず(初期設定で何かのフィルタがONになっていたらしい)、PCでログインした際に発覚した。青ざめた。重ね重ねお詫び申し上げます……。
今回のお相手
Nさん(20代前半・女性)はフリーターと会社員を経て現在休職中。過去のお二方と同じく、このインタビューが初対面だ。「好きなひと」は同い年、学生時代に出会った方だそうで、就職は今回が人生初とのこと。
出会いから交際、彼の就職を経て現在までの、特に "フリーターと無職のカップル" だった時期を中心にお聞かせいただいた。
パートナーシップのあらすじ
ラブまっしぐら(以下、ラ) : 一緒に住んでらっしゃるんでしたっけ。
Nさん(以下、N) : 最初にご連絡した1月の時点では、私はまだ東北に住んでました。彼は東京で、半同棲みたいな……私がこっちにしばらく滞在して、の繰り返しを。
ラ : 行ったり来たりを。
N : 往復するにもお金かかるじゃないですか、基本的にその時期は全部私が出してました。
ラ : おお……ひとまずなれそめを伺っていいですか?
N : 知り合ったのが大学1年の冬くらいです。サークルで私が東京遠征したときにイベントで知り合って、Twitterで相互になって、1年くらいやり取りして付き合うことになりました。その前からほとんど私がお金出してましたけど。
ラ : 彼はひとり暮らし……ではない?
N : ひとり暮らしです。ただちょっと……親からわりとひどい扱いをうけて、耐えかねて高校の途中で家を出て、その後は知り合った人の家を転々としたりホームレスとかネカフェ難民になったりしてたんですよね。仕事には……親の追跡を逃れたくて本人確認書類を捨てちゃったから就けなかったって。で、趣味の物を作って知り合い向けに売ったりして、ずっと日銭を稼いでて。
ラ : 己の力で……。
N : そういう状況っていうのも知り合ってからだいぶ後に聞いたんですけど。最初はむこうも学生って言ってて、でもだんだんお金ないことがわかってきて…… "私はバイトもしてるし奨学金ももらってるから、ひとりで生活するには足りてるし、だったら私がその分は出そうかな" みたいな感じで会ってました。こっち(東北)は遊ぶ場所ないから、月1くらい夜行バスで私が往復して。
ラ : おお……。
その時歴史が動いた
N : 彼、初めて1対1で遊ぶことになったとき30分か1時間くらい遅刻してきたんですけど。
ラ : 遅いな、だいぶ遅いな。
N : こっちは電車で……「〇〇駅に何時に着く」って連絡してたんですけど、寝坊したらしくて。
ラ : 寝坊エピが初回から。
N : 自分もちょっとルーズなほうなのであんまり気にしてなかったんですけど……最初からそんな感じでした。後で彼の友人とかに聞いたら、1時間2時間余裕で遅刻してくるって。
ラ : 立場ができあがってるんですね、仲間うちでね。
N : なので他の方の記事読んで「あっ……共通項なのかな」って……ご連絡した次第です。そのとき(2019年1月)はフリーターで、4月に東京で就職しました。体を壊して辞めることになってしまったんですけど……。
ラ : それはそれは……。
N : 4月の時点では彼がまだ働いてなくて、これから一緒に住んでくつもりでふたりで暮らせる部屋を借りて、私が就職、って形だったんですけどちょっと……働くことに理解がないというか。
ラ : ?
N : ケンカになると、次の日仕事あるから「もう今日はストップして寝る」って言っても起こしてくる。
ラ : 寝かせてほし〜。
N : 明日も早いからって言うんですけど……。もうひとつ、入社すぐに歓迎会をひらいてくれて、「何時解散になるかわかんないから迎えに来なくていいよ」って言ったんですけど迎えに来てて……(お店の)窓からちょうど見えるところにいて目が合う、みたいな。言ったんだけどな〜って。外でずっと待ってるんですよ、もういたたまれないっていうか。
ラ : プレッシャーがすごい。
N : 依存が激しいんですよね……私が友だちと遊んでるときもついて来ちゃって、店内の別の席に座ったり、最終的に合流したがるとかっていうのがたびたび。そのときはそんなにおかしいと思わなかったんですけど今思うと……。
ラ : あんまり聞かないかな……。
N : 私も依存的なタイプではあるんですけど、彼はさらにそれを超えるような。
ラ : なかなかそこまでいかないですからね。
N : かつ無職で時間がたくさんあるのでついて来ちゃう。
ラ : あー……最近はどうですか?
N : もう、一応定職についているので。
ラ : そうか、お仕事のほうはいかがですか?
N : 遅刻はちょこちょこしてるみたいなんですけど続いてますね。ちょうど2か月くらいになります。
ラ : こう言っては失礼ですが、なぜ就職を……?
N : さっきの、職場の飲み会のことでケンカになっちゃったんです。数日。あまりの理解のなさに耐えられなくなって、追い出しちゃったんですよ。「仕事決めてくるまで会わない」って言って。そしたらわりとすぐ見つけてきて……。
ラ : 本気度。
N : しかも普通に正社員で。
ラ : あるんですねそういうことって。
N : もともとポテンシャルは高いというか……高校の途中で家を出ちゃったんで学歴的には高校中退になっちゃうんですけど、すごい頭はよくて、あと物作って生計立ててた頃のスキルを買われて……即戦力として一気に。
ラ : すごい……言われて就職して帰ってくるのなかなかできないですよ。
N : すごかったです。もともとは就職しなくてもいいと思ってたんですよ。全然養うし、生活はたてるからと。大学行くんでもいいし、バイトとかでもできる範囲でやってもらえれば家計助かるし、就職したいところが見つかれば就職してもいいし、趣味の道を極めるんだったらそれはそれでいいし、何してもいいから人生に希望を見いだせるようになってくれればって感じだったんですけど……私が正社員になってみたらあまりにも理解が少なかったので。
ラ : それは想像できない展開でしたよね。
N : あと彼の将来考えても職歴はあったほうがっていうのもあって。今のうちに、早いほうがって。
生き抜け! エブリデイ
ラ : 色々なことが起きますね……交際期間どのくらいでしたっけ。
N : 4年目ですね。
ラ : それだけ続くってかなりの粘り強さですよね。距離遠かったところをずっと通ってっていうのも。
N : 通じ合うところが……私もあんまり家庭環境良くない感じだったので。あとやたら話が通じるというか、思考・言葉・感じ方とかがかなり近いんですよ。言葉を尽くさなくてもほとんど伝わるみたいな。最初から異常に波長……話が合う感じで、それが正直いちばん大きいですね。コミュニケーションのコストが異常に低くて。
ラ : 最高ですね。
N : あと生活水準とかも近いので。
ラ : 重要ですよね。
N : 私も貧乏生活には慣れてたし、彼も極限で生活してて、わりと生命力が……精神的には脆いんですけど、貧乏耐性がある者同士なのでやってこれたっていう。
ラ : 今のお住まいはふたりで見て一緒に決めたんですか?
N : はい。東北に住んでた時期に、日帰りで3件くらい見て。結構しんどかったですね、たぶんそのとき青春18きっぷ使ってたから。
ラ : やばすぎる。
N : 片道5、6時間くらいなんで、始発で出て昼から18時くらいまで見て回って終電で帰るっていう。
ラ : ヒー。
N : 夏とか冬とかのお休みの期間って高速バス高くて、18きっぷのほうが安いから……そういうときは遊ぶにも就活にも。あと大学生のとき、付き合って1年記念で彼と18きっぷ2枚使ってふたりで5日間旅行もやりました。
ラ : それはめちゃくちゃいい旅ですね。
N : 地元から出発して東京行って、鎌倉江ノ島行って、石川と岐阜と京都回って帰ってきました。
ラ : すごーい! そういうのを一緒に楽しめるっていうのもいいですね。
N : その辺の感覚も近かったのでよかったのかなとは。そのときも段取りからお金から全部私がやったんですけど。
ラ : ウーッ。
N : 他の方の……計画を立てられないっていうのがあったじゃないですか、もしかして共通点なのかなと思っちゃったり。
ラ : 彼は計画立てる機会も少なかったかもしれないですね。
N : あんまり長期的な視点が……私と一緒にいること以外にやりたいこと、行きたいところとかも思いつかない、何が好きとかもよくわかんないみたいで。好きなものとか全部否定されて育ったみたいで、どうしたら何か好きになったり楽しんだりって気持ちが持てるようになるかなと……生計立ててた趣味は、彼の中では珍しく真剣に好きでやってるみたいだったんで、それならと彼が欲しそうな物を買い与えたりとかしてました。
ラ : ほぼ養っている。
N : お金限界だったんで彼も無理して仕事とったりとかしたんですけど、それでも月に3万あればいいほうで。ぎりぎりでしたね。ひと月1万前後くらい。
ラ : なかなかシビアですね。
N : 常に口座の端数のお金を……小銭を引き出し、ポイントカードを駆使し。2人で行動するとどんどんお金飛んじゃうので、交通費けちって5kmくらい……ものすごい大荷物持って2人でえっちらおっちらひたすら歩いたりとか。これまでに正直きつかったのが……ファミレスで、晩ごはん兼ねて夜を明かして、それが4日続いたくらいでもう……もう外でいいから横になりたいって。
ラ : 4日……。
N : きつかったですね。なんとか遊ぶお金捻出したくて……公園のベンチでひと晩過ごしたこともありました。結構寒い季節だったんですけど……文字通り身を寄せ合って暖をとりながら。1人だったら凍えてましたね。
ラ : まいったな……。
N : あとは街なかの階段で座って寝たりとか。まともな宿に泊まることほとんどなかったですね。お金ちょっとでもあったらネカフェとか、1泊5千円のラブホとか……どうしても布団に寝てシャワー浴びたいってときは。上限はラブホ、下限は公園。
ラ : 公園下限すぎるなあ……。
N : かなり限界の行動を繰り返して。
ラ : なんか……生き抜く力ですよね。
N : 大抵のことはもう、みたいな。
ラ : おふたりで住まいをみつけてっていうのは本当に、本当にたどり着いた感じが。
N : 本当に。私の住環境も……実家出て、最初大学の寮が4畳しかなくて、風呂トイレとか全部共同。その次に借りたアパートが6畳の1Kで、彼とそこに2年くらい一緒に住んでて……1Kで2人、ちょっと限界でしたね。
ラ : 彼が東北に住んでた時期があるんですね。
N : 私が大学卒業してフリーターしてたときに。でも1Kはだめですね、2人住む場所ではないです。お金なくて毎日ごはんどうしようみたいな感じで、ストレスがすごくてしょっちゅうケンカになったんですけど、部屋がないからクールダウンするのに……彼、ケンカになったときも離れたがらないんで、私が家を出るんですよ。私名義の部屋なのにって思いながら毎回。初めて追い出したのがこないだの4月で。
ラ : こたえたでしょうねえ。しかし大変だ。
N : 大声出したり物叩いたりするんですよ。苦情は私に来るんだからっていうのを何回言ってもわからない……社会的信用みたいなものが、頭ではわかってても私とケンカになっちゃってつらいっていうのが先に来ちゃうんですよね。切り替えができなくなっちゃうみたいで。
イマジン / イッツ・ソー・ハード
N : さっきの18きっぷ旅行も、まず電車で2駅のところから夜行バスに乗って東京に、って計画なのに出る段になってケンカに……時間が迫ってるときに、切羽詰まっちゃってケンカってしょっちゅうで。
ラ : 大変だ……。
N : 私は直前までだらだらしてても時間が迫ったらバッて(荷物を)まとめちゃうんですけど、彼は "ついていけなくてペース乱される" って……私が準備できたのに彼があわあわして、みたいな、それでケンカに。で、いつまで経っても気持ち切り替えて準備して出るってならないから終電も逃しちゃって……しょうがないからタクシーで2駅分。
ラ : 頑張りましたねえ。
N : あれは怒りました。結構根に持ってて……せっかく企画したのにって。
ラ : まあ……根に持ってしまうかもしれませんねえ。
N : 高速バスって時間決まってるじゃないですか。彼が間に合わせられないってことがちょこちょこあって、お金払っちゃってるんだからっていうのがわからないというか……自分のお金じゃないからっていうのもあるのかな、人のお金だと思って、って思ったり、腹が立つことはたびたびありました。お金を使うってことをリアルに想像できないのは無職だから? って。
ラ : よくわからないものなのかも、と?
N : 多分そのときの食事とかに使うんだったら目の前でお金出すしわかるんですけど、先に払ってて決まってるものに時間を合わせるっていうのがちょっと抜けちゃうというか……目の前のことでいっぱいいっぱいになっちゃうんですね。
ラ : うーん。
N : 他には……珍しく彼が "観たい映画がある、時間とか電車とか自分で調べる" って言って、彼から何かしたいって言うのって貴重だから任せたら……その映画館、私が会員カード持ってるところで。割引になるはずだったのに、彼はそこまで調べず予約しちゃってて、でもお金は私持ち……ぎりぎりの生活だったんで、ケンカになっちゃって。
ラ : あらー、悲しいな……。
N : 映画行くってなったら、支払方法とか値段も映画館によって変わるじゃないですか。あとそもそも駅から映画館までどれぐらいあるのか……電車の時間と上映時間しか調べてなくて。
ラ : ガンバレ!
N : 電車乗って、駅に着いて、映画館まで歩いていって、支払はどういう形で……みたいなのを、段取りを組むときって考えるじゃないですか。でも思いつかなかったみたいで。そのときも私は怒ってしまって……そしたら、"段取り組んだりとか全然慣れてないからそういうこと思いつかなかったし、映画って全部決まった料金なんだと思ってた、変わることがあるって知らなかった" って言われて。
ラ : もしかしたら……自分で映画観に行くこと自体なかなか機会なかったんですかね。
N : そうですね……あんまり娯楽にお金割けなかったと思うんで。
ラ : 色々な意味で環境的に……。
社会人っていいな
N : (お金を)食事と宿と交通費ぐらいにしか割けないっていうのは……私も、学生とかフリーターの1馬力で2人で生活してっていうのを4年ぐらいしてすっかり慣れちゃってたんで、生活水準そういう感じだったんですけど。でも社会人になってみたら……社会人の経済感覚ってこんな感じなんだ、銀行に端数いくら残ってるとか正確に把握しておかなくても食うに困らないんだ、って。
ラ : 価値観変わりますよね。
N : 変わりましたね。あと彼も、実際ちゃんと働いてみてコスパがいいって言うんですよ。
ラ : ハハハ、なるほど。
N : 雇われて働いてれば、決まったことをやればお金が入って私にも褒められる……働いてない時期は、どう仕事とるかとかいつまでにどう終わらせるかみたいなのを全部考えなきゃなんない上にあんまり割に合わなくて、私にも怒られて肩身が狭くてみたいな……だから働いてる今のほうが全然楽だって思ってるみたいで。
ラ : それはそれは。
N : 彼としては、大学・卒業・就職っていうステップを普通に他の人みたいに進んでいきたかったのにっていう…… "こんなに楽に生計立てて遊ぶお金もあって……深く考えなくてもそういうレールに乗れて羨ましい" って思う部分もあるみたいでした。働いてなかった期間のほうが精神的につらかったから、なんであんな時間を過ごさなきゃなんなかったんだろう、みたいな。今でもケンカになると「もう仕事行かない」とか言うんですけど……。
ラ : 仕事行きたくなくなる気持ちはわかるけど。
N : まだ "人生長く生きてく" っていう風には気持ちが切り替わらないみたいで……彼にとっては、仕事は私が行けって言うから行ってるだけっていうか。慣れた作業だから苦じゃないけど、やりがいとか楽しいとかって気持ちは全然なくて、「職歴積みたい」とか「自分の人生のために」って段階にはきてないんですよね。
ラ : まずは外から動機なんですね。
N : とりあえずは……長い時間かけないと「自分の人生」って思えるようにならないかなと思うんですけど、今仕事続けるのは彼自身のためになるとは思うんで、是が非でも。
ラ : それはね、是が非でも。
N : 高校中退でバイトもしてなくて、ってなると今の待遇は次はないんじゃないかなっていうのが……能力は高いし頭もいい、でも世間からみたらそういう経歴になっちゃうんで。これを逃しちゃまずいなって。
ラ : ぜひ続いたら嬉しいな……。
N : いずれ自分のためにって思えるようになってほしいんですよね。
幸せの青い鳥
ラ : それにしても彼からの信頼、厚いですねえ。
N : 彼は基本的にすごい人間不信なんですけど……彼からしても私は異常に話が通じるっていうのと、境遇も近いというか。ただ私の方が全然……一応大学は出られたし……親に奨学金取られたりしてるんですけど。
ラ : 最悪だ。
N : で絶縁したりとか、ジャンルとしては同じ立場だったので。
ラ : そうでしたか……。
N : 親がアレだと大変だよね、っていうのでお互い理解しやすかった・話が早かったっていう。
ラ : 言ってみたら通じた、みたいな?
N : 最初Twitterでやり取りしてたときに……彼が、夜になると結構ちょっと情緒不安定そうなツイートをするんですよ。
ラ : 夜はなあ〜。
N : で、私もたまに愚痴を。
ラ : 夜はなあ〜〜。
N : で、私のそういうツイートにふぁぼ(現「いいね」)が飛んでくるんですよ。
ラ : なるほど!
N : だから、もしかしてわかる人なのかなって……リプライとかなく、心情を吐露するようなツイートにふぁぼし合うみたいな……だんだん "なんかわかる人なのかな" っていうのをたぶんお互いに。
ラ : 理解を得ているぞと。
N : 似たようなこと考えてるなっていうのを。Twitterが "好きにツイートをしてそれに共感したらふぁぼ" ってできる媒体だったからこそっていうのが結構あるかも。
ラ : すごい。
N : Twitterがなかったらそういうやり取りはなかったかもしれません。私LINEあんま使いたくなくて、最初からTwitterでっていう。もし最初がLINEだったらお互い、そのままただ友だちに入ってるだけの人だったかなって。
ラ : おお……。
N : 彼は、一応その場ではTwitter交換するけど話ができるタイプじゃなかったらブロックしちゃおう、くらいの感じだったらしくて。でも "あれ? わかる人なのかな?" みたいな、徐々に信頼されたっていうか。
ラ : ふむふむ。
N : しばらくして鍵アカからフォローされて、最初わかんなかったんですけど彼の新しいアカウントで。で、こっちも鍵アカからフォローを……1対1の鍵アカを作って。ずっとそこでやり取りしてたんですよね、リプライも使わないでただツイートでずっと。
ラ : え、すごい……。
N : 頑なにお互いにLINE使わなかった……。
ラ : 気が合いますね……。
N : (笑) そうなんですよ、その辺の価値観はやっぱり近かったみたい。
ラ : それはすごいですよ。なかなかそうはならないです。美しい……。
N : 付き合い始めかその前後ぐらいに、ちょっとさすがに面倒になってきたとかいってLINEに切り替えた感じですね。
ラ : お見事です。
何のために俺たちは
ラ : 彼、帰ってきたんですっけ。
N : まだです。今は友だちのシェアハウスに住んでるらしいんですけど、友だちが起きてると眠れなくて一緒に起きちゃってたり……こないだ寝坊して仕事1時間遅刻したみたいです。
ラ : アー。
N : モーニングコールして起きなかったらハウスの人に(連絡して)起こしてもらったりしてたんですけど、でもやめようかなと……すごい心配で、つい先に手を回しちゃうんですけど私もそのままじゃだめだなと。突き放したらすぐ就職したわけだし。
ラ : まあまあ、それは確かにそうですけど。
N : 優しくしてる間に就職なり進学なり……先に進もうとしてくれればよかったんですけど。本人に言ったら、あのときの状態じゃ無理だった、追い出されて必死だったからそうしたけど死にそうだったって。気力がないっていうのはわかるんですよ……あんまり親に安心感もらえずに育つといつもHP削られてっていう、だから見守ってたんですけど。
ラ : 支えるというか……人生への向き合いかたを作り直すみたいな。
N : 私も自分のためには頑張れなくて、誰かの……彼のためにって思ったから大学も卒業しようって頑張れたし、就職に対しても奮起できたなと。そうじゃなかったらドロップアウトしてただろうなって……自分の人生歩めてないのはお互いさまですね。
人 meets 人 ―2nd season―
ラ : ある意味共同体ですね。「お付き合い」って形になったのはどうしてですか?
N : 私わりと誰かいないと生きていけないタイプで、彼と知り合ったときも別の人と付き合ってたんですけど、そんな好きじゃないのに何となく付き合っちゃったから相性が悪くて……っていうのを相談してて。
ラ : 彼に。
N : それで親しくなって、けど好きとは意識してなくて。でも彼は私のこと好きになってたらしくて「他の人と付き合ってるの耐えられないから」って……付き合おうって言われて。
ラ : おお……。
N : 私、付き合うなら結婚前提じゃないと嫌で。彼は話も価値観も合うんですけど結婚とかまで考えられないって言ってて、でも私が「じゃあ付き合えない」って言ったら「じゃあ考える」って。
ラ : 言えばやってくれる。
N : 自分がどうしたい、じゃなくて私にいなくならないでほしいが全部なので……だましだまし。
ラ : 彼も変な人を好きにならなくてよかったですね。
N : そうですね……もともと「性格悪そうで根暗なタイプが好き」って言ってました。
ラ : 自分で言う?
N : あと「初対面のとき性格悪そうだし暗そうだったから好きになっちゃった」って……。
ラ : どう受け止めたらいいんだ。
N : でも付き合ってみたらそうじゃなかったので、ねじ曲げられたな、って言ってました。
ラ : ……楽しそうだからいっか。
N : なんだかんだお互い好き同士なんですよね。
ラ : なおかつ内に閉じこもらず、お互いどう外に目を向けるかの取り組みになっているのは……うまく合致してラッキーでしたよね。
N : そうですね。過保護すぎるのは直したいですけど。
ラ : まあまだ就職して2か月ですもん。
N : 私も転職活動進めてて、面接決まったんです。これから働きだしてまた一緒に住んで、ってなったらどうなるかなって。次のステージはそれかな。今の家は私が会社の近くでって借りたんですけど、退職したので……彼が社宅借りられるらしいので、そうすると家賃も浮くし、彼の近くで仕事探してるんです。
ラ : それは楽しみですね。
N : ふたりとも働いてれば自立もできるし経済的にも楽になると思うし。2馬力で。
ラ : 2馬力は最高。
N : お互いに安定を目指したいですね。
ラ : 応援してます! 転職活動も頑張ってください!
まとめ
生き延びるためにずっと協働してこられたおふたりだった。経験どころか想像すらしたことのないようなお話がたくさんあり、つくづく「無職」とひとくちに言っても人それぞれなのだなと実感した。
それと、もしかして運命の出会いって本当にあるのかもしれない。私はあんまり信じない派だったが、今回ばかりはちょっと信じた。人だけじゃなくて、就職先とか。
おふたりの転機を改めてお祝いするとともに、今後の強く豊かな暮らしを祈念します。
のあとに
現在10月、インタビューから2か月が経過。書き起こした内容をNさんにご確認いただいたところ、お返事とともに近況をお知らせくださった。
サバイバルだ……。転居、そしてご就職おめでとうございます! ご無事で本当によかったです。
最後に
また機会があれば、今後も色々な方のお話を伺えたらと思う。
好きなひとが無職またはそれに準ずる(*3)、かつインタビューをこのような記事にしても大丈夫という方、いらっしゃいましたらお気軽にご連絡ください(*4)。お待ちしています。
*3
フリーターなど、雇用や収入が不安定な有職者を想定している。この趣旨もその1「公園で散歩もいいけれども」を参照ください。
*4
前回までと同様、
『フリーターカップルとか 女性が無職サイドの男女とか 同性どうしで片方が無職サイドとか さまざまな「好きなひとが無職」パターンのインタビューが実現したら嬉しい』
(自分のTwitter投稿より引用)
と思っています。話したいと思ってくださる方はぜひ。
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