オリジナル短編小説 【一時避難の旅人〜小さな旅人シリーズ04〜】
作:羽柴花蓮
ココナラ:https://coconala.com/users/3192051
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「じゃぁ、明かり消すよ。マギー」
「はい。おやすみなさい。あ、少しいい? マリー」
二段ベッドの上から声が降りてくる。
「何?」
電気のスイッチを消す動作を一時止めて万里有は聞く。
「あなたにもカードを使ってもらおうとおもうのだけど、要望はある?」
「私が、カードを?」
いつかは持って見たいと思っていたが、こんなに早く言われるとは思わなかった。
「あなたには資質がある。早い内から慣れておくのも手でしょう?」
「駆け落ちして占い師になったらお父ちゃま達、腰抜かすでしょうね」
笑いがこみ上げてくる。
「冗談じゃないのよ。マリー」
「ええ。マギーありがとう。考えておくわ。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
電気を消してすぐ、規則的な寝息が聞こえてきた。相変わらずマーガレットは寝落ちが早い。万里有はさっき言われたカードの事が頭に残ってなかなか眠れない。どんなカードだろうか。この家にはどれだけそれが眠ってるのだろう。使ってくれる主人を思って。カードに意思があるとはなかなか思いがたいが、今までマーガレットを見ていてそんな視線で見るようになってきた。相変わらず、許嫁殿達はそんな事、知ろうともしなかったが。
翌朝、相変わらず、一姫と大樹の声で目が覚める。思わず窓から怒鳴りたい万里有である。
カーテンを開けて窓を開ける。その手をマーガレットが止める。
「怒鳴っちゃだめよ」
「どうしてわかるの?」
「いかにもうるさい、って顔してるから。さぁ。着替えましょ」
「そうね。ほっときましょ。それに尽きるわ」
「一姫、試合をせぬか」
大樹が手を止めて言う。
「い・や。負けたふりするから」
「私が勝てば?」
「あの万里有に熨斗つけてくれてやるわよ」
「どういうことだ? 万里有はもうすでに許嫁だが」
「でも、あなたと大河は嫌、って言ってるんでしょ? 大樹は誰が好きなの? その人に熨斗つけてあげるわよ」
「いや、私が・・・好きなのは・・・」
大樹が言いかけたが、一姫は背を翻す。
「やっぱり、別の女の名前なんて聞きたくないわ」
「一姫!」
一姫はそのまま、屋敷に入った。大樹は額に手をやる。
私が愛しているのは・・・。
つぶやきかけて、止める。
「気合いが入ってないな。私も・・・」
再び竹刀を振り始めた大樹だった。
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