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6年好きだった彼は私と一文字違いの名前の人と結婚した

その年の冬は暖冬だった。
2週連続でよばれた結婚式は宝塚と鹿児島、
メンバーも元勤務先と地元同級生。
全く別物だったので
どちらも青いベロアのスーツを着て参加した。
11月末の宝塚も
12月最初の鹿児島も
コートなんていらない暖かさだった。
このスーツがとてもとても好きだった。

あの頃、私はいつも飲んだくれていた。
月曜から金曜まで
毎日夕方から夜中まで飲んでいた。
ただ実家暮らしだったから
土日は必然的に休肝日。
健康でいられたのはそのおかげかもしれない。
2週目の同級生同士の結婚式前夜
行きつけの店に一人で行き
浴びるほど飲んだ馬鹿な私だった。

どのくらい飲んだか、とか
何時まで飲んだか、なんて
そんなこと覚えているはずもなく
式当日の朝はひどい二日酔いだった。
予約していた美容院は9時。
いつもより1時間早く開けてもらってたのに
時間より遅れて駆け込んだ。
どすっぴんで、素敵なベロアのスーツ着て笑
仲良しの美容師のお兄さんは
そのスーツにあわせて
とても素敵なヘアーアレンジを用意してくれた。
私はといえば、
吐き気を抑えるのに精一杯で
化粧するのも忘れて会場へ向かった。

誰よりも早く着いたホテルのトイレで
化粧を始めた私だったが
式から参列していたご年配の方々に
少し白い目で見られていたらしい。
とりあえずみんなが出揃うまでには
体裁を整えて席に着くことができた。

私が小学5年生から
高校1年のバレンタインデーに玉砕するまで
大好きで大好きで仕方なかった彼と
高校3年の時に同じクラスになった
私の名前と1字違いの友達の結婚披露宴。
背の高い彼が、職場の音楽隊の制服を着て
「君といつまでも」を歌いながら入場してきた。
羨ましい気持ちも妬ましい気持ちも
どちらも胸の中にあったかも知れない。
でもその時の自分の気持ちは覚えていない。
彼に未練があったわけではない。
もうとっくに普通の友達になっていた。
この結婚式の数ヶ月後には
自分の結婚式が控えているはずだった。
数ヶ月前に破談になった自分の運命を呪いつつ
ひたすら笑ってひたすら飲んだ。

宴は深夜まで続き
その夜、新たな恋へ繋がる人と出会うのだけど
それはまた今度。

#結婚式の思い出

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