映画グリーンブックをみてきた

グリーンブック見てきた!

何年かぶりに、初日に、しかも事前にチケット予約をして観に行ってきました。以下、感想です。

・ヴィゴ!!ヴィゴ!!なんて素敵な!
太った気のいいデタラメなイタリアオヤジを装っているけど ふとした瞬間・・・薄暗い画面で雨に打たれている場面とか、、、照明が一方方向から
当たって顔の影がシャープに出ている時に醸し出されてしまう「馳夫」っぷり!
その度に私は心の中で「馳夫!」と呼びかけてしまったよ。
あと、どんなにガサツを演じようと、14kg増量しようと、一時はらりと前髪が一房落ちると途端に超イケメンになってしまうヴィゴ・・・。

・そんでマハーシャル・アリの素敵な神経質演技。
とっても上手だなと思ったのは図らずもヴィゴにあることを「カミングアウト」してしまった後の打ち解けた表情!あーこれが本当のドク・シャーリーなんだな、と誰でもがわかるという。「世間知らずのおぼっちゃま演技」は超・超・マブい(死語)です。きゃわいいーーー

この二人がほぼ出ずっぱりな時点で、見る価値あり!!です。

・しかし。しかしですよ。私はこの作品、好きです。重たくならずにエンターテイメントとしてとっても良い映画になっていて、心が温まる映画だった。でも、やはりこの映画が物議を醸していたのも理解できた。
というのも、この映画は一見すると黒人と白人が差別を乗り越える、いわゆる黒人差別についての話のように見えるし、関係者の話も一聴するとそのように思えるけど、実際は一方的な目線しか持っていなかった者同士が正反対の相手と共に過ごす事で新たな視野を得る、という話なんだよね。


そしてここが難しい所だけど、「差別」に対して「視野が広がる」という解決方法をとるとそれは上から目線になってしまうということなんだ。
だってそこに被差別者の気持ちはなく、差別していた側にとっては「視野が広がった」ことで解決するかもしれないけど、被差別者にとって差別された経験は「視野が広がる」ことでは解決しないと思うから。

これがこの映画の批判の原因の一つだと思う。つまり、見る側が想定したテーマと映画が描いている本質が微妙に違っている。そしてそれが作中でも明示されず、また前情報でも掴みづらい。

そしてドク・シャーリーの黒人としての特異性を描こうとしたことで、逆に「その他の黒人」の人たちを非常に一元的に描いてしまっている。この映画に出てきた「その他の黒人」の人たちで、きちんと個人の特性があるキャラクターがいたかというと首をかしげてしまう。皆、映画の場面を説明するための役割しか与えられていなかったと思う。
立派なピアノが弾けなくても、黒人として差別されながらも気高い人はいたはずなのに。

その割に、ヴィゴだってイタリア系移民ということで白人の中でもマイノリティのはずなのに、「その他の白人」の人間性が描かれていなかったかというとそうではなくて、悪い描かれ方だとしても個々の特性が描かれていたキャラクターが何人かいたと思う。
この比がアンバランスだなと思った。

そしてもう一つ言ってしまうと、シャーリーが「育てられ方は気高いのに」「差別を受けてショックを受けている」場面は多かったけど、では日常的に差別を受けている一般の黒人の人たちが、当たり前のように日々直面している尊厳を奪われる苦しさとかはどうかというと、描かれていない。作中に何度か、後何日だから我慢しろ、というセリフが出てくるが、南部に住んでいる黒人にとってはそれが日常なわけで。どんなに過酷でも逃げられないわけだから、ここも被差別を経験した人からすると、違う、と感じるのかもしれない。
一応、酒場で暴行を受けたシャーリーが「NYでも同じだ」と言うシーンがあるけど、ここはそういったことに接合性を持たせる意味があるのかなーとも思いました。

だから、これを見た黒人の人がこれは本当の差別を描いていない、白人目線の映画だ、と批判するのは、本当によくわかるのだ。

なのでこれがアカデミー賞の作品賞になったということは、この映画で良しと思っている人がまだ沢山いる、少なくとも一年のベスト作品に選んでもいいという人が沢山いるということなので、
映画業界というのはやはり少し遅いのだなという気がしてならない。

黒人の人たちが望んでいるのがブラックパンサーで、アカデミー賞がこの作品というのはかなり大きな隔たりを感じる。アメリカのこの問題はまだまだ大変なのだなあと思わされた一作だった。

でも調べてみたらオクタヴィア・スペンサーがプロデューサーをしていて、私は彼女の演技が大好きなので、(ドリーム最高だった!)
これからも彼女が作った映画を見たいと思います。たとえ今作が不評でも、一発で正解を作れるはずもなく、むしろ正解が完成してしまったら次はないしね。

それに、この作品をレイシズムの映画だと攻撃的に批判する人(ユーチューブの予告編にはそういうコメントが並んでいる)は、ちゃんとこの映画見たの??とは思いますし。

その他気になった場面は、シャーリーの「あること」についてヴィゴがニュートラルな反応を見せたところで、あの場面でそもそもこの人はただ無知なだけで人を蔑んでやろうという気持ちはもともとない人というキャラクター
であるということもわかって、私はすごくいいなと思いました。

いろいろ言いましたが、私にとって大好きな俳優さんツートップが出ている映画なので、何度か見に行くと思います。ちなみに初日の夜の回、大きめのシネコンで見ましたがほぼ満席でした。アカデミー効果すごいですね。次はもっとこじんまりしたスクリーンで、人がまばらな回に見たいなあと思いました。心温まるクリスマス・ストーリーでした。

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