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より良い最期の時を

心疾患をもつYさんは、特養で最期の時を迎えようとしていました。
 私の働いている特養では、看取りケアをしますが、それに酸素療法や点滴治療など、医療的なケアも可能。
 全身状態が悪かったYさんは点滴治療が開始されましたが、日を重ねる毎に痰が多くなり、朝一番に様子を見に行くと、喉に痰が溜まり、spo2が80%まで低下していました。痰吸引して、1度は上がるものの、しばらくすると再び痰が出てspo2が下がりました。
 点滴のせいで窒息する恐れがある。
ご家族に相談すると点滴をやめてほしいと言われました。

 点滴をやめると痰は絡まなくなり、呼吸が楽になったご様子。時々眼を開き、娘さんの姿を追う表情もみられました。
私「やっぱり娘さんのことはちゃんと分かるんですね。」
娘さん「いやいやそんな、仲悪かったんですよ〜ぶははっ」
つられて一緒に笑い出してしまった私達を、Yさんが優しい眼差しで見ていました。
乾いた舌の上に好きなジュースを浸したガーゼを絞ると味わう仕草もありました。

 その2日後、ご家族に見守られ、眠るように亡くなられました。
 
 2日ぶりに見たYさんは、穏やかで眠っているような安らかな表情でした。

 よかったですね、苦しくなかったですよね。
よく笑ってくれましたね。
Yさんと一緒に過ごした時間は私の宝になりました。ありがとうございました。
心の中で挨拶をすると、涙がぶわっと出ました。
悲しみ、寂しさ、安堵、感動が一気に押し寄せてきました。
 命が尽きる最期の時、より良い時間を過ごせたと信じたい。

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