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言えよ!

長年、理容師として勤め
なによりも困る……と、いうより悩む注文

それは「お任せで」と、いう注文だ。

困ると表現したのには理由がある。
「お任せで」と、いう割に仕上がりに不満気な
客が圧倒的に多いからだ。

先日、見慣れない客が来店した。
見慣れないがインパクト大だった。

つるっ禿げなのだ。

「いらっしゃいませ。
 今日はいかがしましょうか?」
「お任せで」

お任せと言われても……。
よく見れば、髭も生えていない
まさに卵肌とはこのことかという姿。
歳のころは……初老? 年齢が読めない。

「今日は日差しも強いから暑いですよね。
 頭を洗いましょう」と、脂ギッシュな頭を洗う。

(洗髪料金は500円なのだが
500円頂いて良いものか……)と、考えながらツルッツルの頭をしっかり洗った。

軽く肩揉みを施し「お待たせしました」と
座席を回し会計台へ誘導すると
『不満』の表情。
しかし、客は文句もなく店を後にした。

翌週、その客が来店した。

「いらっしゃいませ。
 今日はいかがしましょうか?」
「お任せで」
「先週と同じでよろしいでしょうか?」
「お任せで」
「お顔剃りもされますか?」
「お任せで」

(とは言っても、頭も顔もツルッツル。
 ……眉毛か?)

「眉毛を整えますか?」
「お任せで」

先週のように、ときおり手を滑らせながら
ツルッツルの頭を洗い
眉毛カットを任せていただくことにした。

顔に似合わず、毛量感ある眉毛。
眉を左右対称になるように揃えてカットした。

軽く肩揉みを施し「お待たせしました」と
座席を回し会計台へ誘導する。

不満気!?
客はその日も文句もなく店を後にした。

また翌週、その客が来店した。

「いらっしゃいませ。
 今日はいかがしましょうか?」
「お任せで」

(剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。)

頭を洗いながらしばらく悩んだが
その後
眉毛を全剃りした。

軽く肩揉みを施し「お待たせしました」と
座席を回し会計台へ誘導する。

毛のない顔で、客は満面の笑みを溢していた。


以上、四苦八苦しながらバッサバサ削り、800字に収められました☺️
山根あきらさんの面白い企画、参加したくなってしまいました🙋‍♀️

楽しかったです🎵ありがとうございます💡

やっと他の参加者さんの作品も見に行けます♪
楽しみだぁ✨

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ありがとうございます😊 小さくても沢山の幸せを届けられるように頑張ります!