第2回 関根史織ファンクラブ

第1回目は調べれば分かる/知ってる人は知ってる話ではあるものの、それらをファン目線&ファンの熱量でまとめてみました。

第2回は、これまたベタではありますが、単純にファンの一人として、関根嬢をオマージュした音楽をセレクトしてみます。プレイリストのような感覚で楽しんでもらったり、音源やライヴをより楽しむためのちょっとしたきっかけ、「そういえば何か書いてる人いたな」という予備知識にして貰えればと思います。


01.SAYONARA-NOSTALGIA

今では関根嬢のヴォーカル、コーラス、バッキングヴォーカルは定番で、3人編成になったこともあってさらに存在感を増していると言えますが、最初期(インディーズ時代の曲)では、コーラス自体が珍しいです。サビで少しだけ歌ってますね。ベースラインもシンプル。


02.抱きしめたい

ひたすらダウンピッキングでベースを弾く曲。ある意味ベース然とした典型的なルート弾き曲であり、まさに初期関根嬢という感じ。そしてここまでベタベタなことやってる曲も珍しい気もする。現在は基本フィンガーピッキングなので、そのあたりの微妙なニュアンスの違いとあいまってかえって新鮮に聞こえます。


03.プレゼント(LA-PPISCH)

関根嬢率いる【stico】メンバーとしてベースを担当している【LÄ-PPISCH】のtatsuさんは、関根嬢の尊敬するベーシストの一人。ベボベの1stアルバム「C」では、プロデューサーとして制作に関わられています。ユーミンのラジオに出演した際に「目標にしている曲」として関根嬢がセレクトしていたようです。役割としてはシンプルなベースなので、関根嬢の目指すところは必ずしもテクニックに偏ってないこと、そして「アンサンブルにどう寄与するか」ということではないかと伺えます。



04.GIRL OF ARMS

スロウテンポで幻想的な世界観の曲。歌詞の中には「ギター」ではなく「ベースギター」というモチーフが出てきます。初期の頃の曲はベースパートとして複雑なものはほとんどありませんが、逆にコード(ルート音)の推移やリズムの少しの変化で刻々と変わっていく曲の表情を感じやすいです。ちなみにアルバム「C」の曲は(小出さん)本人も認めるキー設定の無理(笑)があるせいか、曲にもよりますが、なかなかオリジナルキーで演奏されないです。一方、この曲は音源での調性感が美しいと思うので、レコーディング作品ならではのこだわりをじっくり楽しみましょう。


05.Mayor of Simpleton(XTC)

ベボベがライヴ開演時SEとしてかけているのは、このバンドの『Making Plans for Nigel』という曲ですが、今回はベースラインの際立つ有名曲を選んでみました。とてもアクティブなベースライン。サビの「Mayor of Simpleton~♪」はどことなく「120色の都市がいつも ~♪」に聞こえなくもない…?


06.リンダリンダ&終らない歌(PARANMAUM)

関根嬢出演の映画「リンダリンダリンダ」劇中より。ブルーハーツのコピー。ヴォーカル:ペ・ドゥナ(韓国の女優さん)、ギター&コーラス:香椎由宇、ドラムス:前田亜季、という映画ならではのバンド編成の中でベース弾かれてます。どちらもシンプルなロック/パンクソングですが、物語のクライマックスとなる学祭で、半ば強引に留学生も交えることとなったガールズバンドがカヴァーするという文脈があてがわれており、ポップソングとしての強さを感じます。


07.魔女の約束(Jethro Tull)

ヴォーカルとフルートを担当するフロントマン、ジェスロ・タルの作品。そのジェスロ・タルのコピーバンド【TULL TULL SOURCES】で関根嬢がヴォーカルを担当したレアな場面がありました。今時のポピュラーミュージックでフルート始まりの曲は、なかなか聞かないのではないでしょうか?カントリーやフォークミュージックのような郷愁感あるメロディーとバンドアンサンブルです。


08.溺れる魔女(FRANC ZAPPA)

07.からの魔女繋がり。また、関根嬢が過去にMARQEE誌内でコラム連載していた「たどり着くのが遅すぎて溺れる関根を救えなかった舟」は、この曲が収録されてるアルバムタイトルからの引用ですね。12分と長尺ながら様々なアイデアが詰め込まれていて、ストーリー性と即興性の入り混じる曲です。ひたすらギターソロのような部分もあるので、そのへんは今や廃れつつある音楽(文化)ともいえますが、ベースパートも含めてヤバいことを追及しています(笑)。


09.白雪の彼女

関根嬢がライヴで一部ヴォーカルを担当したこともある曲。イントロはOASISの『CIGARETTES AND ALCHOLES』風など、最初期のベボベは既存曲の一部から引用(発展)させたと思われるフレーズが多いので、そこらへんの「古典的/典型的なロック」の残り香も楽しめます。


10.イギーポップ・ファンクラブ(Number Girl)

先に紹介した『白雪の彼女』のサビの直接的な元ネタであろう曲。小出さん曰く、デビュー当時は「Number Girlのまがいもの」と言われていたというベボベですが、田渕ひさ子さんとの共演や、現在の3ピースに至るまでの活動の中で、血肉となっている彼らのバックグラウンド。エモいライヴ版で。


11.Cadence and Cascade(King Crimson)

関根嬢がKING CRIMSONでイチオシしていたアルバム「In The Wake Of Poseidon」から。関根嬢曰く「1stアルバムの二番煎じ的なアルバムだけど愛おしさがある(意訳)」とのこと。選曲した『Cadence and Cascade』は、フルートやピアノの旋律も美しく、ドラムやヴォーカルも穏やか。クラシカルな趣の品があるアンサンブル。広がっていく関根嬢のプレイスタイルの背景として、透かすように聞くとまた良い感じ。


12.NIGHT WALKER(松任谷由実)

小出さんと関根嬢の二人でユーミンのライヴに参加した際にカヴァーしていた曲。名曲ですね。近年はあらゆる意味で「楽器を弾ける人」「歌える人」が増えてきたので、作曲面でも技術面でもテクニカルな曲は多いですが、音楽としての総合的な完成度・ポテンシャルの高さがあります。


13.十字架YOU and I 

リリース以来、3人体制になった今でもライヴセットに高確率で入る人気曲。遊び心に溢れてます。ベースもダンサブルで動きがありグルーヴィー。ライヴでは特に間奏で音源と違うアプローチがなされていて聴きどころ。


14.BAND GIRL'S SPIRAL DAYS

スライドが印象的なベースリフ始まり。MVでは複弦でプレイしてる関根嬢の姿が見られます。疾走感のあるロックナンバーですが、今時少ない冒頭へループしてのフェードアウト終わり、歌詞には「世界の終わりには紅茶飲めないからサイダー飲んで過ごしたい」という、ある種のオマージュ/批評精神も。


15.ひまわりと星屑(東京女子流)

ダンス・ボーカルユニット(アイドル)の東京女子流は、小出さんが『Partition Love』を楽曲提供していることもあり、それぞれのファン間で相互に認識がある存在。印象的なギターカッティングに始まる『ひまわりと星屑』は、アレンジャー松井寛時代の名曲です。女子流ちゃんと対バンの際、アンコールで共演していたので選んでみました。全体的に派手なアレンジなのであまりそう聴こえないですが、何気にベースライン鬼。


15.文化祭の夜

ベースは硬めのサウンドメイキング。ライヴでは「C2」(より少し後?)の頃から鳥居のような赤色のベース(Rinhoの関根嬢仕様)を使用していることもあり、ベースラインの骨格がはっきりしてきた出音が多くなってきます。この曲の関根嬢マジかっこいいので注目してみて下さい。初期の頃と比べると今や完全に別人です。ヴォーカルトラックが外されたINSTRUMENTALバージョンをあえてセレクトしました。


16.スローモーションをもう一度

ダブ/レゲエ曲だけあって、ベースもダビーな粘っこさがあります。基本的には4拍子ながら、ロックの4つ打ちとは違うダブ/レゲエの裏打ち(2拍目、4拍目)のリズム感を味わいましょう。中間部ではベースリフがソロのように浮かび上がってくるところなども含めて、あるフォーマットを自分たちの音楽にはめて演出する上手さがあります。「さわやかさのうらのうらのうら」。


17.ふたつの世界(くるり)

ベボベにも『FUTATSU NO SEKAI』という曲がありますが、このくるりの『ふたつの世界』は全然違う曲調。賑やかなトイ・ポップやブラス風の趣もあります。また、TV ver./Bebop ver./Chember ver.の3種類の別アレンジ(楽器編成)が作られており、このような多様性はベボベが目指すバンド像の一つというのも頷けます。一度だけ弦楽アンサンブルのオケを取り入れた『若者のゆくえ』や、岡村靖幸さんを迎えて、普段は入れないシンセの入った『君はノンフィクション』、ありえたかもしれないベボベ像を一度だけ実現させたアルバム「光源」といった作品で聴くことができるように、くるりのような音楽が彼らの頭の中では鳴っているのだと思います。基本的にはヴォーカル/ギター/ドラム/ベースのアンサンブルだけど、それら楽器の出音を越えて、秘められた様々なイメージを想起させてみて下さい。


18.2020(TRICERATOPS)

スリピースバンドの先輩として、ベボベメンバーも意識(リスペクト)しているというトライセラの2002年作品。歌ものとしては渋いけど味わい深く、曲としては全然古びていない。トライセラは意識的にコーラスを多用することでオケを強化しているとのことですが、そもそも音の選び方がとても繊細で凝ってる。この当時、ベボベはバンドとしては出発しているものの、「夕方ジェネレーション」以前。たぶん関根嬢たちも聴いていたんじゃないかなと思いますが、その当時どんな想いで2020年を想像していたでしょうか?そしてバンド結成初期に聴いていた『2020』は今年、どう聴こえているのでしょうか?


19.Typical Girl

丸っと関根嬢ヴォーカル曲。『WINK SNIPER』、『夜空1/2』等、他の関根嬢ヴォーカル曲とのキャラの違いが際立つ暗いOL(笑)。アイドルや女性ヴォーカルにも楽曲提供している小出さんが作詞・作曲されていることで引き出された関根嬢の様々なイメージの一つ。ヴォーカルの裏で掛け合うツインリードギターにも注目で、関根嬢が歌うからライヴでもこれができる。


20.Branch in the Road(toddle)

Number Girl、LAMA、bloodthirsty buchersのヴォーカル/ギタリストという多くのバンドキャリアを持つ田渕ひさ子さん率いるtoddle。「Vacantly」に収録されているこの曲は歌もの的な作風でリード曲の位置づけにありますが、単にメロディー先行でキャッチーなものというより、仄かに明るい/薄暗いニュアンスが行き渡っていて作家性のあるものになっています。ミュージシャンとしての出発点では一人のギタリスト(バンドの一部)というところから、作曲やヴォーカルの担当、フロントマンやバンドリーダーと呼ばれる存在に至るまでのメンタリティなど、使用楽器は違えども直接的/間接的な共通点を感じられるのではないでしょうか。


21.If(PINK FLOYD)

PINK FLOYDはどちらかといえば小出さんの方が影響下にあったのかなと思いますが、関根嬢といえばプログレ、プログレといえばPINK FLOYDといっても過言でない大御所。技巧的な曲や大曲、組曲、コンセプチュアルなアルバムの世界観などに注目がいきがちなプログレの世界ですが、MVやライヴ演出も含めた芸術性、野心的な音づかいに加えて、根本的に気持ちのよい音楽を追求していた(いる)ジャンルでもあると思います。この曲は地味でオーソドックスな作りではあるものの、穏やかで美しい曲。すべてのパートがアンサンブルとして調和しています。


22.駆け落ち者(椎名林檎)

ヴォーカルに桜井敦司(BUCK-TICK)を迎えた椎名林檎さんの曲で、ミュージックステーションにて関根史織(Ba)、ユウ(Gt)、ほな・いこか(Dr)という特別編成のバンドで共演。ヘヴィメタルのような重厚なオケ始まりで、ここまで極端に演出的/劇的な曲はベボベには少なくともまだない作風ですね。


23.スクランブル

音数は決して多くないベースラインですが、アンサンブルの中でも、ベースラインだけでもかっこいい。ファンク的なカッティングやタイトなリズムと、ミディアムテンポでメロディックな各パートが見事。新呼吸以降あたりから明快に感じられるようになったベボベらしい、関根嬢らしい一面。動画冒頭ではRhymstarへと捧げる旨のMCまで録画されてますね。


24.EIGHT BEAT詩

祝!C3発売!、祝!チャップマン・スティック使用曲!…ということで取り上げました。ギターとベースは入っていないので、小出さんのラップ、堀ノ内さんのドラム以外は全てチャップマン・スティックで関根嬢が弾いている音です。ギター/ベース/ピアノの間をとったような不思議な多声感やアーティキュレーション、一方でシンセのような電子音的でもあり、今後の音源/ライヴでの使用も楽しみ。


25.ポラリス(C3mix)

EP「ポラリス」収録のオリジナルに比べてライヴ感も醸されたmixになっているかと。関根嬢の今感あるヴォーカル、ベース(ソロ)、コーラスすべてが詰まった、そしてベボベの今感がすべて詰まったこの曲をラストにします。


BONUS:沼

関根嬢率いるsticoは、主に都内でライヴ活動は行っているものの、音源やメディア出演の機会はまだなく、メンバー公認(本人)のアカウントからアップされる動画が随時見つけられます。基本的に3人編成のインストロメンタルバンドですが、その時々でゲストを迎えることもあるなど、アクチュアルな音楽を発信しています。単純にベボベファン→関根嬢いるしstico聞いてみるか。...となったときに、理解しにくい世界観かもしれませんが、この記事を読んだ人は楽しく聴ける!(...ハズ。)


関根嬢をイメージしながら選んだ25+1曲、いかがでしょうか?ベボベの曲だけでなく、影響を受けているバンドの曲や、実際にカヴァーなどしてプレイしている曲からも選んでみました。また、必ずしも本人が好んでいる/影響を受けている曲かは不明であるものの、一ファンの視点から関根感を感じた曲もセレクトしています。

結果的に「ベースが特徴的な曲」は多くはないですが、関根嬢のスタイルはベースだけで目立つというよりアンサンブルの中で良い仕事をする、そして遊び心も入れていきたいという好奇心/探求心の人だと思ってます。そのへんが多用なキャラクターを演じるリードヴォーカル/デュエット曲や、時にはシンセ的な扱いのコーラス、そしてチャップマン・スティックの使用にも感じられるのではないでしょうか。

この第2回記事を読んだことで、皆さんなりの関根嬢を再発見して貰えたらなと思います。

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