女盛り 男勝り【課題:魅力ある女】

登場人物
城之崎 直(34) 刑事
津村 修(34) 詐欺師
竹下 正明(34) 刑事 直の同僚

男、被害者の女性、警官、客たち

○風俗店・中(夜)
   男がベッドに横たわっている。
   手錠の片方はベッドに、もう一方は男
   の腕に繋がれている。
   ランジェリー姿の城之崎直(34)が煙草に
   火を点ける。直に向かって、男、
男「なあ、早くしてくれよ〜。この前は話だ
 けだったじゃないか。今日こそは……」
直「その前に、言ってたの、持って来た?」
男「おう。ポケットに入ってるよ」
   男、壁に掛かったジャケットを指差す。
   ポケットを探る直。白い粉の入った透
   明の袋が出て来る。
直「……ばっちしだ」
男「へへへ。二人でハイになろうゼ」
   壁に掛かったバスローブを着る直。ポ
   ケットから携帯を取り出し電話する。
直「あ、現行犯だから、店の前に車つけて」
男「おい!何してんだ!チクったのかよ!」
   ため息を付く直。
直「私ゃね、チクリに来たんじゃないの」
   男に近付きmポケットから警察手帳を
   取り出し突きつける直。
直「パクリに来たの」
男「け、警察……」
   笑顔を浮かべる直。

直「あ。手錠、店のじゃないから。私のだか
 ら。後で返してよね」

○警察署・廊下(夜)
   男が警官に連れられ、その後ろを直と
   竹下正明(34)が歩いている。直、手錠を
   クルクルと廻して遊んでいる。
   男、振り返り、直に向かって、
男「死ね、クソアマ」
   男にバイバイする直。
   男と警官が歩き去る。
竹下「実に良い鴨だったなぁ」
直「ホント。葱背負ってやって来るんだもん」
竹下「ま、コイツに釣られても無理ないか」
   直の胸に顔を近付ける竹下。
   竹下の頭をはたく直。
直「バッカ、変態」
竹下「いいよなー、女は色気使えて」
直「無駄に二つぶら下げてても意味ないでし
 ょ。使えるモンは使わなきゃ」
竹下「女っ気ないなー。お前、下もぶら下が
 ってんじゃねーか?」
直「あんたのよりデカかったりして」
竹下「よし。じゃあ、今度確かめる意味で、
 一回俺ともヤッてみろ!」
直「ふざけんな!犯人とヤったことは一回も
 ないっつーの」
   笑ってふざけ合う直と竹下。
   竹下、思い出したように、
竹下「そうそう。新しい鴨が出たんだった」
   背広の内ポケットから紙を取り出し、
   直に渡す竹下。紙を見、目を開く直。
   津村修の顔写真と情報が書いてある。
竹下「津村修、34歳、詐欺容疑。俺らと同い
 歳なのに、何やってんだか」
   津村の写真をじっと見ている直。
竹下「ま、いつものフェロモンで、コテンパ
 ンにしてやってくれや!」
   直の方に手を載せる竹下。
   顔を引き攣らせ手て笑う直。

○直の家(夜)
   風呂上がりの直、卒業アルバムを開い
   て見ている。
   クラス写真のページ。『城之崎直』、
   『津村修』と書かれた高校生の直
   と」津村、それぞれの写真がある。
   津村の写真の周りは、ペンで書かれた
   赤いハートで囲まれている。
   そのハートを撫でる直。
直「……」

○カフェ(夕)
   コーヒーを啜りながら、店内の様子を
   伺っている直。
   店内は客で賑わっている。
竹下の声「津村は、目ぼしい女を見つけると
 ワザとコーヒーを溢して、女に掛ける。そ
 れきっかけに女と接点を取る。津村が女に
 掛けようとしたら……後はお前に任せる」
   ため息をつく直。すぐにハッとする。
   コーヒーを持った津村修(34)が来る。
   店内を物色し、一人の女に目を留める。
   女に近付く津村。
   急いでコーヒーを持ち、津村に駆け寄
   る直、勢い良く津村にぶつかる。
   床に津村と直のカップが落ち、二人の
   服にコーヒーが掛かる。
   転ぶ津村と直。
津村「熱っ!痛っ!(大声で)てめぇ何……」
直「……シュウくん?」
   直を睨む津村。
津村「……」
直「私、高校時代、同じクラスだった……」
   表情が和み、頷く津村、笑顔で、
津村「名前なんだっけ?」
直「城之崎……」
津村「それは分かってるよ、下の名前!」
直「ナオだよ」
津村「そう!ナオちゃん!久しぶりっ!」
直「……覚えててくれたんだ」
津村「元気にしてた?……あっ。服汚しちゃ
 ったね、ゴメン。良かったらさ、これから
 食事でもどう?暇?」
   頷く直。笑顔の津村。片付ける二人。

○レストラン(夜)
   雰囲気の良いレストランで談笑しなが
   ら食事をしている津村と直。
   × × ×
   食後のコーヒーを飲んでいる二人。
   津村が涙を流している。
竹下の声「女に不幸な身の上話をして、同情
 を引くのが津村の手口らしい」
   テーブルの上にある津村の手の上に自
   分の手を載せる直。直の手の上にもう
   片方の手を包むように重ねる津村。
竹下の声「もちろん、でっち上げの話だ」
   ゆっくりと目を閉じる直。

○ホテル・客室(朝)
   ベッドで寝ている津村。
   枕元に『仕事があるので先に出ます 
   直』と書かれた手紙が置いてある。

○警察署・喫煙室・中(朝)
   直が一人で煙草を吸っている。
   唇を噛み締め、壁に頭をつける直。眉
   間に皺を寄せ、壁を拳で数回叩く。
   竹下が喫煙室の扉を開く。
   慌てて姿勢を変える直。
竹下「うっす。津村の被害を受けたって女性が来てるんだが、会うか?」
直「……うん」

○同・廊下(朝)
   直と竹下が並んで立ち、泣きじゃくり
   ながらハンカチで顔を押さえた女性が
   二人にお辞儀をしている。
   お辞儀をし返す直と竹下。
   廊下を歩いて行く女性。
竹下「三百万かー。なかなかやりよるな」
   携帯が鳴り、出る直。電話から、
津村の声「もしもし?僕だけど、今晩会えな
 いかな?直ちゃんの顔が見たくて……」
   女性の後姿を見つめる直。
   携帯を握る手に力が入る直。
直「いいよ。渡したい物もあるし。その代わ
 り、待ち合わせ場所、私に決めさせて」

○高校・体育館・前(夜)
   『○○銀行』と書かれた封筒を持った
   直が体育館の入口、電灯の下で立って
   いる。
   津村が来る。
津村「いやー、懐かしすぎるね!」
   津村を見据える直。
直「修くん、本当は私のこと、覚えてなかったでしょ?」
津村「いやいや。どうしたの急に」
直「じゃあどうしてここで待ち合わせたか、分かる?」
津村「え?」
直「カツアゲされそうになってた私を助けて
 くれたんだよ」
津村「僕が?忘れちゃったな、そんなこと」
直「……印象薄かったもんね、私」
   直の手元の封筒を一瞥する津村。
津村「渡したい物って、何?」
   黙って封筒を津村に差し出す直。
   受け取る津村。驚いた様子で、
津村「ま、まさか……」
   封筒を開ける津村、中に入った紙を取
   り出し、広げる。目を見開く津村。
   紙に『逮捕状』と書かれてある。
直「あれから何があったか知らないけどさ」
   青ざめた顔で直を見る津村。
直「今のアンタ、あの時のカツアゲしてる連
 中、いや、それ以下の人間だよ」
   スーツから手錠を取り出す直。
津村「う、うふぁ、うわわー」
   逃げようとする津村に飛び掛かる直。
   もがく津村。怒りながら、
直「アンタが私を変えてくれたのに!」
   手錠を津村に掛ける直。
直「自分のケツは、自分で拭けよ!」
   動きを止める津村。

○高校・校門・前(夜)
   警官に付き添われ、パトカーに乗り込
   む津村。
   直が涙を流している。
   パトカーをぼんやり眺める直。


創作の製作過程を覗きみて、楽しんでいただけたら。