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「サーキットの狼」の再来!?悲運のスーパースポーツ『ロータスヨーロッパS』 その3

前置き(読まなくて結構)

私がこのNoteを執筆してから2年が経ちました。
ヨーロッパSオーナーも今年で5年目です。常人ならばとっくの昔に発狂するレベルの苦行です。いやー大変だなぁ(強者特有の余裕)。
ありがたい事に「Note読みました」なんて声も聞くようになりました。尚ディーラーさんからは1度も聞いた事がありません。(クソが代)
おまけに去年はとうとう「貴方のNoteを見てヨーロッパSを買いました!」なんて方も現れました。
人柱が1柱増えました。人柱募集中です。人柱になれない方はお断りします。どうぞロードスターかGR86・BRZ買ってください。

では本編

  ヨーロッパSとは何か
ロータス・カーズが2006年にリリースしたスポーツカーで、同社のヒット作である「ロータス・エリーゼ」「ロータス・エキシージ」とは違う客層を狙った『ビジネスGT(グランツーリスモ)』と呼称されるプレミアラインの車としてリリースされました。

 ヨーロッパSとは何か
エリーゼ系の111系のフレームから派生した、121系フレームを採用した第二世代型スポーツカーライン。オペル・スピードスター、ボクスホール・VX220はサブフレームを中心に111系から派生した116系シャシーであり、ホイールベースの延長を始めアメリカ市場を見据えた調整が行われております。そこから更に派生した事もあり型式は121を与えられており、フレーム単体で考えるとエリーゼ・エキシージよりはスピードスター等と兄弟になります。

 ヨーロッパSとは何か
当時ロータスの親会社であった、マレーシアの自動車会社「プロトン」から『プロトンのディーラー内で目玉となる様なスーパーカーを作って欲しい』という指示(親の「頼み」ってのは「命令」なんじゃ…)に従い、複数の会社を巻き込んだ『一大プロジェクト』でした。ところがボディも完成し、プロジェクトも佳境というところでプロトンは思い出したのです。
「ウチのお客でスーパーカーを買えるような客は居ない」
そんなこんなでプロジェクトは中止。困ったのはロータスです。既に生産終了していたスピードスターの部品を流用して車体を作っていたとは言え、ボディは新規造形。内装も贅沢にフルレザーと(例えFRPの椅子に革を貼っつけただけとは言え)ロータスとしては贅の限りを尽くした内装を用意。車名が刺繍され、踵が当たる部分に滑り止めのラバーパッドまで付けた(ロータスとしては)豪華過ぎるフロアマットが標準装備と聞けば、エリーゼ・エキシージオーナーは驚かれるのでは無いでしょうか。(出来るなら最初からやれや)
そんなこんなで相当なコストを投資してしまっているロータスにとって、今更無かった事にされては困ります。急遽マイク・キンバリーはロジャー・ベッカーのチームにプロジェクトの完遂を依頼。何とか形にした物が『ロータス・ヨーロッパS』という事になります。

 ヨーロッパSとは何か
そんなこんなでメーカーも積極的に売れと音頭も取りづらず、ディーラーもディーラーで売っていいのかどうなのか分からず、売る側の意識があやふやな状況でリリースされたヨーロッパS。市場のからの視線は、冷ややかでした。
ロータスオーナーの購入の琴線はスタイルでも、内装や豪華な装備でも、ましてや分かりやすいパワーや派手な音でもありません。『軽さ』です。
軽けりゃ買う、それがロータスオーナーの主な購入動機です。V6エキシージ?あれはパワーウェイトレシオ重視ですね。(ある意味軽さ)エヴォーラ?んにゃぴよく分かんなかったです。
当時はと言うと、900kg前半の車体に元気な1ZZ、2ZZを搭載するエリーゼや、900kgを切る車体に240、260馬力を発揮するエキシージ等まさにライトウェイトの暴力と言ったラインナップでした。そんな中で995kgの豊満なボディを200馬力の非力なエンジンでドスドス現れれば、そりゃ相手の視線は冷ややかですとも。お前よくそんな体で出てこられたな?って。いや995kgも軽いんですけどね??車全車種から見れば??

ヨーロッパSとは何か
ロータスは最初この車を年間400-500台生産出来る体制を整えていました。トヨタが聞けばラリーのホモロゲーションモデルか何かかと思うに違いありません。ですが、実際に売れたのは2006-2009(2010)年の間に456台。年に100台程しか売れてないことになります。やっぱりホモロゲーションモデルなのかも…LFAが500台だし…
そして日本には108台しか入って来ていない…108台も入って来てんの!?5分の1以上!?えー…うわー…なんか嬉しくない…()
後に国内で最もヨーロッパSを売ったあるディーラーの社長は私にこう話しました。
ディーラーS・K氏「日本は「ヨーロッパ」好きだろ?って無理矢理売りつけられたんだよ…(´・ω・`)」(回想終了)

ヨーロッパSとは何か
市場での動きは大失敗。
メーカーとしても本当は無かった事にしたい。
ディーラーも売った後はなるべく面倒見たくない。
と、関係者3者の意見が一致した結果メーカーサポートは2016年に終了しました。(最終年式生産から10年も経ってない)
誰か日本のロータス輸入総代理店のLCIの年表でヨーロッパSの記述探してくれません?僕は1箇所しか見当たらなかったんですよね。写真?ある訳ないじゃないですか、笑わせないでくださいよ。

(ここにLCI公式のヨーロッパS画像が提供される予定)

ヨーロッパSとは何か
2009年、イギリスのロータスディーラー「ホフマンズ・スポーツ」が今まで使っていたK20Aを搭載したエリーゼに代わり、ロータスCUPに出場する車として選んだ車。
彼等は決して道楽や一発ギャグとして選んだ訳ではありません。真面目に、大真面目に、真剣にこの車が「本当に速くなる」と信じて選んだのです。結果、当時の王者だったK20Aを搭載したモータースポーツエリーゼに対し、1秒ものタイム差をつけて見事にポールポジションを取ったのです。惜しくも途中で開発途中のECUトラブルによりリタイヤとなりましたが、その走りはロータスCUP運営にレギュレーションを書き換えさせ、追い出すきっかけには十分でした。
しかし困りました。折角ロータスCUPに出る為に作ったマシンです。出れないとなると他のレースに出るしかありません。

ヨーロッパSとは何か
 
搭載されたZ20LERエンジンの母体となる、Z20LETを含む『GM IIエンジン』は、実はロータス・エンジニアリングが開発したエンジンでした。
つまり、ヨーロッパSは「ロータスが開発したシャシー」に「ロータスが開発したボディ」と「ロータスが開発したエンジン」を搭載した、純度100%のロータスマシン。
そう、エスプリ以来実に10余年振りに全ての基本コンポーネントがロータスによって設計開発された、最後のピュア・ロータスでした。
フェラーリ430チャレンジや996・997ポルシェ911CUPが出場するGT CUPにてクラス優勝し、クラスが1つ上のダッヂバイパーに5秒差まで詰めたこの小さなGTマシン
所詮チューニングカー止まりの車でしかないヨーロッパGTでしたが、レースに出る為にレーシングカーとして作成されレーシングカーとして調整された数多のライバルマシンと対等以上に戦った、このマシンこそが正真正銘本物のロータスを代表する史上最強のマシンの1つと言えるでしょう。


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