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TV

私は腹がへったので、あるラ-メン屋に入りました。そして醤油ラ-メンを頼みました。ここには雑誌が置いてありませんでした。

いつも食堂で食べる時は、自分で本をもっていくか そこの本を読みながら食べるのが私の日課です。

やることがない・・一人でブツブツと考えていると頭の上から声がしました。
ナント私の後ろにテレビが置いてありました。
そこで私は重大な過ちを犯した事に気がつきました。
どうやらTVは、お笑い劇場をやっているようです。 他の客約5名は、時々私の方を見てほくそえむようでした。
ジ---ット見詰める者、無視してモクモクと食べている者、チラット見る者・・

私は皆に見つめられている。しかもオッサンばかりに・・・

本当は彼等はTVを見ているふりをして、私を観察しているのです。。
震える手を押え、取敢えずタバコを吸って落着こうとしました。
するとその煙は上に昇りTVの一部視界を曇らせているようです。凝視しているオッサンが、何か見ずらいと言いたげに首を上下左右に動かしていました。

このままでいいのか?、このままでいいのか?
私は席を変えようか、熟考していました。しかし、時既に遅し、
運命のラ-メンが、私の机に置かれました。
これを、この状況で食べろと言うのか。私は、その店員を恨みました。
皆に見られている、もし緊張のあまり間違えて鼻から食べようとしたらどうしよう
もしコショウを振りかけて、ハックションして鼻水が垂れたら・・・
箸を割る拍子にコップをこぼして、それを拾おうとして蹴つまずいて転んで他の客のラ-メンの器に顔を突っ込んで恥しさのあまり外に飛び出して車にひかれたら・・・

このままでは、車にひかれてしまう。 何とかしなければ。

油汗とはこの事でしょう 手は汗ばんで意識はもうろうとしてきました。
TVから笑声が聞える度に、一人・二人と私を見つめる為振り返ります。
こんな場所に何故坐ってしまったのだろう、せめて後向きに坐ればよかった。
食べても、味なんかわかりません・・・

残して帰ろうか、イヤそれこそ注目されてしまう。でも車にひかれるよりはましだ。。
そうこう考えているうちに、TVはコマ-シャルに変りました。

ここぞとばかりに一目散に食べました、他の客も私の事など気にもしないようにモクモクと食べ始めました
そして舌に軽い火傷をしましたが無事に食べ終りました。

もしあそこで食べ終らなければ私は死んでいたでしょう。
誰もきずかなかったでしょう、店員も他の客も私があれほど苦しかったのを・・・

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