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【動画あり】基本のマドレーヌの作り方

マドレーヌは基本的には材料を混ぜて焼くだけなので、簡単なお菓子の筆頭です。
適当に混ぜて紙やアルミのカップに入れて焼けばすぐできるので、お家で食べるおやつならそれで十分だと思います。
でもシェル型で焼く場合や、お店のようなマドレーヌを作りたい場合は、いくつかポイントがあります。
そのポイントをかなり詳しく説明したので、ちょっとこだわって作りたい方はぜひ参考にしてみてください。
記事の最後に手順の動画がついています。

材料の話

卵はMサイズのものを使っています。
Mサイズ1個=卵黄20g卵白30gの計50gという計算です。
他のサイズの卵でも問題なくできますが、卵黄が少なくなると味が薄くなります。

砂糖は味のクセのないグラニュー糖に、しっとりするために蜂蜜を入れています。
蜂蜜の風味が好きじゃなかったり、蜂蜜がない場合は、蜂蜜の分量を砂糖に置き換えても作れます。
その場合はグラニュー糖を使うよりも、グラニュー糖+蜂蜜の分量を上白糖で置き換えた方が、蜂蜜を入れるのと同じようにしっとりして、焼き色もつきやすくなります。

小麦粉は普通の薄力粉でかまいません。
ここでは粉の風味が会って焼き菓子向きの「シュクレ」という銘柄を使っています。

この作り方では卵もバターも泡立てないので、主にベーキングパウダーの力で膨らませます。
ここではアイコクの家庭用ベーキングパウダーを使用しています。
ベーキングパウダーは水と混ぜ合わせた時と加熱した時に反応します。
この反応する温度が商品によって低いものと高いものがあります。
低い温度で反応する商品(蒸し物用など)を使うと、焼く前の段階で反応が進んで膨らみが悪くなることがあります。
それから空気中の水分にも反応するため、古いものや開封後時間が経ったものも膨らみが悪くなるので避けた方がいいです。
またベーキングパウダーは少量で効果を発揮するものなので、できれば0.1g単位で計量した方が正確に作れます。

バターは無塩バターを使っていますが、有塩でも特に問題ありません。
少し塩味がつきます。

型の話

ここではブリキにシリコン加工をしたシェル型を使用しています。
シリコーン製の型を使う場合は熱伝導が悪いので、焼き色がつきにくかったり、焼き時間が少し長くなったりします。
昔ながらの菊型やマフィン型を使う場合は、型の内側に紙のカップを敷いてください。
型の大きさによって取れ数や焼き時間も変わってくるので、お使いの型に合わせて量や焼き時間は調整してください。

生地を休ませるかどうか

今回の作り方では、1時間生地を休ませる工程が入ります。
休ませると、
・グルテンの結合がゆるむ
・生地が冷えて作業性がよくなる(絞りやすい)
・焼くときに中心に火が通るのに時間がかかるため、こぶができやすい
・水分が行き渡って生地が均一になる
といった効果があります。

反対にデメリットとしては、
・休ませている間にベーキングパウダーが反応してしまって効力が弱くなる
があります。

休ませずにすぐに焼いた生地(左)
・全体的に山型に膨らむ
・焼き色が濃くて外側が固め
・表面に斑点や小さな穴がある
1h休ませた生地(中)
・中心が噴火したように膨らんでこぶができる
・焼き色は1番綺麗なキツネ色
・表面が滑らか
24h休ませた生地(右)
・破裂するほど膨らまない
・焼き色は薄めのキツネ色
・表面が滑らか

すぐに焼いた生地はオーブンに入れる時点で30℃ぐらいはあるので火が通るまでの時間が短く、ベーキングパウダーもよく働くので全体的に大きく膨らみます。
その分大きい気泡があったり、生地が完全に均一でないからか斑点が出たりします。
一方休ませた生地は冷えているので、周りから徐々に温まって生地温が上がるのに時間がかかります。
そのためすぐに焼くより焼き色は薄く、最後に加熱された中心部が噴火してこぶができます。
伝統的なマドレーヌはこぶがあるので、こぶを出したい場合は冷やしてから焼いたほうができやすくなります。
また全体が馴染んでいるのと適度に気泡が抑えられているので、すぐに焼くよりも表面が滑らかです。
でも休ませる時間が長いと破裂するほど膨らまず、生地温がさらに低いので、焼き色ももっと薄くなります。

焼きたてを食べた感じは、休ませる時間が短いほどよりふわふわで、特にすぐに焼いたものは昔母親が作ってくれたものに似ていて、家庭の味という感じです。
でも翌日以降になると、すぐに焼いたものはパサつくまではいかないものの粗い感じがするのに対し、休ませた生地は休ませる時間が長いほどしっとりして全体に一体感があります。

以上のことから休ませる時間は、ここでは食感・焼き色・作業性のバランスがいい1時間としました。
すぐに食べるか時間をおいて食べるかによっても求める食感は違うと思うので、必ずしも休ませなければいけないわけではなく、お好みの方を選んでください。
ただ休ませる時間が長いほどしっとり感や一体感は増しますが、あまりに長すぎると膨らまなくなったり風味が飛んでしまうので、長くても24時間ぐらいにしておいた方がいいです。
24時間休ませる場合は、ベーキングパウダー2gのところ3gにすると、ちゃんとこぶができるほど膨らみます。

マドレーヌの配合と作り方

分量

5×7.5cmシェル型8個分

・卵         60g
・グラニュー糖    40g
・蜂蜜        10g
・薄力粉       50g
・ベーキングパウダー 2g
・無塩バター     55g
・型に塗る無塩バター 適量
・型にふる強力粉   適量

下準備

①型に塗る無塩バターを室温に戻しておきます。

型に塗るバターは柔らかめのクリーム状(マヨネーズぐらいの固さ)のものを使います。
溶かしバターを使ってしまうと型に密着せずに流れて底に溜まってしまい、均一に型につきません。

②薄力粉とベーキングパウダーをよく混ぜ合わせておきます。

少量を生地中に分散させなければいけないので、事前に薄力粉とよく混ぜ合わせておきます。

作り方

①型に無塩バターを塗ります。

なければ指でもいいですが、できればハケを使って塗るのをおすすめします。
それはバターが塊でついている部分にはあまり焼き色がつかないからです。
なるべく均一に塗るためには、シリコンハケより毛の細い動物毛のハケを使うのをおすすめします。

左:バターの塊がある 右:均一に塗れている

特に貝型の先端にバターが固まりやすいのと、側面に塗り残しができやすいので注意します。
全体に軽く塗ったあと、しごいて余分を落としたハケで端から端まで一気に伸ばすようにすると綺麗に塗れます。
昔働いていた店では、バターが均一に塗れていないことが原因で焼き色がついていない部分があるものは全てロス(販売不可)でした。
家庭で作る場合、焼き色が綺麗に全面につかないのはオーブン・型の素材が原因である部分も大きいのでそこまで神経質になることもないですが、いまだに私はこの作業には割と時間をかけます。

バターを塗った型は一旦冷蔵庫に入れて冷やし固めます。
バターを余らせたくない人は、ここで余ったバターに新しいバターを足して生地用の55gを計量すると無駄がないです。
(ただし洗わない型を使用している場合、前に作ったお菓子のくずなどがついていることがあり、混入してしまうので避けた方がいいです)

ちなみにバターを塗る手間を省きたい場合は、風味は落ちますが離型油スプレーを使ってもいいです。

一定の力を入れながら、左から右に向かって貝の上半分に一直線にかけた後、型の向きを180°かえて同様に左から右に貝の下半分に吹きかけます。
離型油スプレーを使う場合は、⑩の「型に強力粉をふる」という工程は不要です。

②浅い鍋に水を入れて60℃ぐらいまで加熱します。

深い鍋だとたくさん水が必要になるため、浅い鍋かフライパンがいいです。
フライパンの場合は、鍋の底に布巾を沈めてボウルの底と鍋が直接触れないようにします。
鍋底に細かい泡が出てきたら大体60℃です。
(水面の周囲に1周泡が出るぐらいで80℃ぐらい)
お湯の温度が高すぎると卵が固まったりバターが熱くなりすぎたりするので、なるべくこの温度にしておきます。
手早く作業できる場合は火を消してもいいし、心配なら弱火にしてこの温度をキープします。

③ボウルに卵・グラニュー糖・蜂蜜を入れて混ぜ合わせます。

このあと湯煎にかけると溶けるので、この時点では蜂蜜が固まっていても大丈夫です。

④③のボウルを湯煎にかけて人肌まで温めます。

卵のボウルをお湯の上に乗せ、固まらないようにホイッパーで静かに混ぜながら人肌(36℃ぐらい)まで温めます。
ここでの目的は砂糖を溶かすことです。
温度を高くしすぎると、オーブンに入れる前の段階でベーキングパウダーが反応してしまって焼き上がりの膨らみが悪くなるので、温めすぎてしまったら少し冷まします。

⑤あいた湯煎でバターを溶かします。

バターの入った器をお湯に浮かべます。
早く溶けるように、バターを薄く切っておいたりステンレス製の器を使うのがいいです。

⑥卵に薄力粉とベーキングパウダーをふるい入れて混ぜ合わせます。

事前にふるっておいてもいいですが、めんどくさいので私はボウルに直接ふるい入れています。
粉が入ったら、ホイッパーでぐるぐる円を描くように混ぜていきます。
小麦粉と水分が練り合わされるとグルテンができます。
グルテンができすぎると骨格が強くなりすぎて膨らみが悪くなりますが、ある程度のグルテンは弾力を生むので、混ぜなさすぎもよくありません。
必要以上に混ぜないようにはしますが、粉のダマが残らない程度にはしっかり混ぜます。
混ざったら一旦ボウルの周りに飛び散った粉をゴムベラで落とし、それも混ぜ込みます。

⑦溶かしバターを入れて混ぜ合わせます。

この時バターが熱すぎると、この時点でベーキングパウダーが反応してしまいます。
とろみがありすぎても混ざりにくいので、バターの温度はだいたい50~60℃ぐらいにします。
一度に入れていいので、ホイッパーでしっかり混ぜ合わせます。
混ざったら、ここでもボウルの周りに飛び散った生地をゴムベラで落として混ぜ込みます。

⑧ラップをして冷蔵庫で1時間程度休ませます。

今回の量だと、この時点の生地温は35℃前後です。
休ませている間はベーキングパウダーの反応が鈍くなるように、常温ではなく冷蔵庫に入れます。

⑨オーブンを170℃に予熱します。

⑩バターを塗った型に強力粉をふります。

強力粉を茶漉しでバターの上に振り、紙などの上で型の裏から叩き、余分な粉を落とします。

バターを塗った型に粉を振ると、バターと粉が膜を作って生地が型から外れやすくなります。
焼く前にバターと粉が馴染んでしまうと綺麗に膜ができないので、バターを塗ったら一度冷やして固め、使う直前に粉をふるようにします。

この時使う粉ですが、薄力粉ではなくなるべく強力粉を使ってください。
小麦粉は含まれるタンパク質の量によって薄力粉から強力粉まで分類されますが、粒子の大きさもこれに比例します。
薄力粉は粒子が細かすぎてバターの上でダマになりやすいので、粒子の大きい強力粉を使った方が均一に密着します。

⑪生地を絞り袋に入れます。

スプーンなどで型に入れてもいいですが、絞り袋を使った方が早く綺麗に均等に入れることができます。
絞り袋を縦長の器にはめ、ボウルの生地を入れます。
先端がすでに切り取られている絞り袋を使う場合は、先端を折りたたんでクリップなどで止めてから入れます。

⑫生地を型の7分目ぐらいまで入れます。

絞り袋の先端を切って、型に絞っていきます。
計りを使うと均等に入れることができます(1個あたり約24~25gです)。
先端は1~1.5cmぐらいの細めに切ったほうが入れやすいです。
絞り終わりは反対の手の親指と人差し指で絞り袋の先端を摘むと、生地が綺麗にきれます。

入れた生地の量が均等ではない場合は、入れすぎた分をスプーンなどで取ると減らせます。
その場合はスプーンが型に塗ったバターと粉を傷つけないように、上澄みの生地を取るようにします。

⑬170℃のオーブンで12分焼きます。

オーブンは庫内で熱が強くあたるところと弱くあたるところがあります。
半分〜2/3ほど時間が経過した時点で、型の向きを180°かえると焼きムラが少なくなります。

ここでは12分焼くので、8分経過した時点で反転しています。

⑭焼き上がりの確認をしてオーブンから出します。

焼けているかの確認は、
・指で押してみたときに跡が残らず戻ってくる
・竹串をさした時に生の生地がついてこない
・こぶの頂点の生地が乾いている
・型から外してみて焼き色が十分ついている
などで判断します。
焼けていたらオーブンから出します。

⑮すぐに型から出します。

そのまま置いておくとバターが固まって型から外れにくくなるので、すぐに型から外します。
一度型を落として衝撃を与えると型から外れやすくなります。
型を逆さまにするか、1個ずつ手で外して網にのせ、そのまま冷まします。

さらに風味を出すには

・レモンやオレンジの皮のすりおろしを入れる
国産のものを使うか、洗剤で洗ったり軽く熱湯で湯通しして表面のワックスを取ってから使います。
白い部分は苦いので、すりおろすときは表面の黄色やオレンジ色の部分だけを使います。
レモンなら1/2個分、オレンジなら1/4個分ぐらいが目安です。

・発酵バターを使う
普通のバターではなく発酵バターを使うとよりバター風味が良くなります。

・バターを浅めの焦がしバターにする
バターを焦がしバターにしてから少し冷まして入れます。
フィナンシェを作る時ほどしっかり焦がすと他の風味が負けるので、少し色づく程度にしておいた方がいいと思います。

作業工程の動画です。
(説明テロップはないので上の作り方と合わせてご覧ください)



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