浅い呼吸

呼吸が浅いと思う。最近、よくある。息を思いきり吸い込んで、肺の奥の奥まで広げたいのに、うまくいかない。思いきり吸おうと、ずわっと肺を広げても全然入ってこないので、苦しさだけが肺の奥のほうに残って気持ちが悪い。過呼吸というわけでもないが、息が吸いづらい。もう一度吸ってやろうと思うが、やっぱり吸えない。五回目ぐらいでやっと肺の奥まで吸えた。
夫に話したら、肺呼吸じゃなくて腹式呼吸がいいのだよ、と言われる。ので、腹式呼吸で吸ってみようと思うのだが、そもそも腹式呼吸ってなんだろう。空気が腹に入るってことはあるのだろうか。吸うのに合わせて意識的におなかを上下というか膨らましてへこまして、をすることがそうなんだろうか。中学生時代にやっていた吹奏楽の顧問の先生も、楽器のセミナーでも、腹式呼吸をしろと言われ続けたのだけど、結局どういう呼吸が腹式呼吸なのかよくわからなくて、楽器を吹いているときに意識的におなかを上下というか膨らましてへこましてみていた。
ということを考えていると、結局肺呼吸、というか、肩呼吸になっている。
インターネットで浅い呼吸で調べてみると、息を吐ききっていないからだという回答もあったので、意識的に、10秒ぐらいかけて息を吐ききり、そうして吸ってみる。が、なんだか吐いたところとは違うところに酸素が入っているみたいで、呼吸が行き違う。呼吸困難で死んではいないので、酸素はちゃんと吸収されているのだろうけど、気持ちが常に呼吸困難だ。全然うまいことは言えていない。

職場で呼吸が浅くなると絶望的な気持ちになる。仕事は嫌いだし、職場の人間関係も、自分がどんどん悪くしているのもよくわかっている。そうして、別にそもそも呼吸が浅いのは仕事のせいじゃなくて、私の、ただたんに体調によるものだと思う。でも、どうにかして、仕事を、職場の人たちを、嫌いになるような理由をずっと探し続けている気がする。
自分になじまないものは嫌いになりたい。じゃないと、ずっとつらいから。子どもの時からそうだった。合わないなら放っておけばいいのに、なんでもかんでも嫌いになる理由をこじつけては、嫌いになりたい。そのたびに、私は知らぬうちに浅い呼吸になっていたのかな。愚かでかわいそうな小さな私。自分が愛されないから、はねのけるだけしか知らない。哀れって、こういうことを言うんだろう。

たまにこういう意味のわからないヒステリーが爆発して、大泣きする私に夫は、「そうやっていない敵を増やすんじゃないよあんたは」という。いない敵といえど、私の心の中にはいる、強大な敵なのでなかなか私の呼吸は楽にならない。
いつか思いっきり、腹式呼吸ができるようになればいいのだけど。