結婚式の日に言うのもなんだが

結婚式の日に言うのもなんだが、自分が結婚するとは思わなかった。

小さいころ、大学卒業したらなんか適当にOLになって、なんか適当にパステルカラーのツインニットとか着て、オープンカフェで似たような恰好の友人たちと頬杖でもつきながら男の品定めをして、なんかよさげな男と結婚するんだと思っていた。けども、高校生になるぐらいには、飛び切りかわいくて飛び切り女子っぽくなけりゃそんなことはありえないと確信した。
数年前に姉が結婚して家を出て行ったときも、旧友が結婚したときも、私はいよいよ独りで生きて独りで死んでいくんだなあと思っていた。実家暮らしは何不自由ないが、ふとした孤独の影が忍び寄るたびに、恐怖と絶望によく打ち震えていた。
と、めでたい席でこんなことを書いてしまうぐらいの面倒な性格なので自分のことが結構嫌いだ。嫌いな癖に自分を守りたいので、殻にこもらないとやっていけない。人間関係全般が苦手になるときもたびたびある。付き合いを持ってくれる人には、なんだか申し訳なくありがたく思う。

人生の主人公は自分だとどこでもわりと金言のように言われるが、逆を返せば自分の人生など他人の人生の背景にすぎない。自分以外の誰かの人生なんて、気にも留めない。孤独に打ち震えるたび、誰も私の人生を気に留めることなどないのだと思っていたのだ。
だからこそ、今日この日を迎えたことも、この日に立ち会ってほしいと思う人がいたことも、奇跡のように感じる。陳腐な言葉を重ねるなら、運命のようにも感じる。
夫も、今日ここにいてくれる人たちも、何か一つ違えば全くの赤の他人、まさに互いの人生の背景でしかなかっただろうに、こんなにも私の人生を彩り豊かにしてくれる、大切なキーパーソンとして登場してくれた。

結婚式が近づいて億劫になる一方で、人との出会いへの感謝が募っていく。何度も言うが、面倒な性格なのである。こんな私と結婚したことを、夫がそのうち後悔しないかが、目下の心配ごとである。

花嫁にはウェルカムスピーチがないし、文章を書くのも好きだから、ウェルカムペーパーでも書いてやろうと思ったが、だらだら恥を書き連ねるばかりになってしまったので、そろそろ終わりにする。
結婚するつもりのなかった私の結婚式、多いに楽しんでもらえたら幸いです。

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結婚式当日に配布したフリーペーパー。