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みなもとはなえ
2016年4月25日 07:17
父が触るなと言い続けていた開かずの間も主人がなければただのふすま1枚隔てた押入れである。長兄は躊躇なく和紙に手を突っ込むようにして強引にふすまを開けた。あっ、と思うが、父の怒声は飛んで来るわけがなく、そこで父の不在を実感する。長兄はきっと、私の実感など思いもよらない、というか、思いがけない、というか、思い至らないというのか、もし長兄が私の気持ちに気づいたとしても、言葉をうだうだと選んでいるから