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文学の街、松山 〜1人旅第2弾〜

11月、秋らしい日々が続く。
 木葉は赤や黄に色づいて、季節の移り変わりを感じる。 自然の変化を見る度に自分も変わりたいと思わされた。

食の秋、文化の秋、読書の秋
多くのものを嗜むのに良い季節とされるこの秋に、私は四国へ旅に出た。 

松山には高校の友達が2人いたこともあって、前から行きたいと思っていた。松山について調べると、正岡子規に「坂の上の雲」、「坊っちゃん」と、文学の街というだけあり、興味深いラインナップである。 
大学の講義予定的に暇な11月に、どこか旅に出たかったし、読書にも慣れてきたこの時期にちょうど良いと確信し計画を立てた。 

しかもその松山にいる友人というのが、私にとって1番の文学少女。高校の時から彼女の知識には驚かされていた。当時の私は古典も、明治文学にも興味がなかったので、京都の大学に通っている今でこそ博識な彼女と話したかった。 

愛媛のうまい飯とビールに温泉、そして瀬戸内海の穏やかな海に癒されることも楽しみに、7日夜、夜行バスに乗る。 

坂の上の雲ミュージアム

早朝、バスで松山に到着する。まだ辺りは暗く、何もすることがないので快活へ行って仮眠をとる。9時過ぎに起きて支度をすると外に出た。もうすでに明るくなっており、松山の街を初めて目にする。商店街に路面電車、以前訪れた熊本によく似ており、城下町という感じがする。

コーヒーを一杯飲んでから、早速美術館へ向かった。

場所は旅の目的の1つ、坂の上の雲ミュージアムである。
兄の勧めるドラマ3選にこのドラマが入っていた。(ちなみに他は、不毛地帯と沈まぬ太陽でどちらもかなり面白かったので説得力あり。)
必見なのは承知だったがなかなか見れていなかった。この旅行を機に全部見ようと思っていたが結局4話でこの地に来てしまった…

ただ、登場人物は概ね把握できていたし、淳さんやのぼさん、信さんについて詳しく知ることができ、いい予習復習となった。
バルチック艦隊の撃破作戦に関しても詳しく展示されており、アニメーションを用いた説明がかなりわかりやすい。これでドラマを見たらまた面白いだろうなと思った。

1つの小説、ドラマについてあそこまで広く使った美術館というのもすごいが、特に建築も立派。
思いがけず安藤忠雄の建築で、自然の中に大胆な形であった。それでも窓に緑が反射していて、自然に一体化しているようだった。何やら階段も珍しいらしく、支柱がなく浮いているようである。

信さんたちを想像した、自由な建築だとか書いてあり納得した。
想像以上に満足度の高い場所だった。

萬翠荘

坂の上の雲ミュージアムからも見える立派な洋館。
近くに行くと、白い壁に繊細な作りが余計美しさを引き立てていた。

藩主の子孫が建てた別荘で、その地位の高さがうかがえる。
松山は明治時代かなり人口の多い街であり、明治維新での革命の遅れはあったものの、文化的価値のあるものがかなり引き継がれていた印象である。

中に入るとスタンドグラスがお出迎え。
赤い絨毯が引かれており、まさに大正ロマンな建物である。

ロココ調のインテリアが可愛らしく、日に当たったレースの影がまた美しい。

萬翠荘を見終わるとお腹がすいてきたので早めの昼食。
ここらは郷土料理の鯛めしが有名らしく、一回は食べておけという雰囲気が漂っている。ただきちんとしたところは結構な値段がしたので、そばとセットでお手頃な場所に入った。

鯛ももちろん美味しかったけどさっぱり瀬戸内下おろしのそば?みたいなのがとっても美味しかった!

わたくし、かなりの蕎麦好き。旅行先でも美味しいそばが食べられて大満足でした。

松山城

チケットの句もいい

街のシンボル、松山城。ロープウェイなどで登るほど高い山城で、街を見守っているような印象。やっぱり中心に城があると、いいなあ。なんだか頼もしいよね。

白壁の小窓から見える紅葉がまた、季節を感じさせる。
いい時期に来たかも。

山の上、瀬戸内海がしっかり見えるほど高く、天気の良いこの日は本当に気持ちがよかった。
旅先で食べたくなるご当地ソフトを食べながら、「坊っちゃん」を読み、瀬戸内海を眺める。なんと優雅な旅だろうか…

上り下りはリフトを選んだ。
街を一望し、山の紅葉を見下ろすことができる。
ちょっとスリルがあるのも楽しいよね。

月が美しい、松山での夜

松山城の後は友人と合流。

源氏物語パッケージの玉乃光の日本酒をあげると喜んでくれた。
これまさに、田舎の女の子が京都を目指すやつ(京にとくあげ給て、物語の多く候ふなる、あるかぎり見せ給へ)やな、という会話も面白かった。

この日は442年ぶりの何やらすごい皆既月食の日だったた。
友人は天文部の活動があるということで別行動。

私は一人でもしっかり飲もうと街に出た。

そこで出会った居酒屋がよかったのなんの…
カウンター席のみで、寡黙な大将と女性アルバイトが迎えてくれる。

子持ち鮎の南蛮漬けというのとレンコンの天ぷらを頼むが、とっても美味しくて美味しくて…集めのレンコンの歯ごたえがたまらない…

鮎はどちらのか大将に聞くと「高知です…」とボソッという。
しっかり地元の鮎で、子もしっかり付いてて660円…

これだけのクオリティで、自分が出せる値段だったので、本当に感動した。隣のおじさんとも話せたし、松山旅行思い出の店となった。

その日の皆既月食、肉眼でもかけているのが分かった。
天文部から帰って来た友人の写真では、赤く幻想的な月が写っていた。

松山で皆既月食を見る。なんともロマンを感じた私は、夏目漱石の言葉をお借りして、カッコつけた言葉を送りたくなった。

恋人に「月が綺麗ですね」と送った。
返信は「ずっと綺麗でしたよ」だった。

道後温泉

松山2日目。
朝早くから大学へ行く友人を見届け、私は路面電車で道後へ向かった。

古いとは知ってたけど、聖徳太子も来たらしい(衝撃)
ああ、めっちゃ古いじゃん。そのネタだけで土産話できるなと思った。
建物は改修中だったし、中の温泉自体はかなり普通だった。うん。

近くの飛鳥乃湯泉という新しい温泉にも行った。
なぜか蜷川実花のアートが敷き詰められている。
道後温泉のウォールアートもだけど、日本建築に現代アートみたいな合わせ方がなんだか妙な感じもした。まあいいけど。

お風呂から上がると地ビールを飲んで最高にふわふわ気分に。
疲れもあって、足が浮いてる感じだった。
天気も良くて少し昼寝しちゃった。(安全に寝ました)

子規博物館

せっかくドラマのミュージアムにも行ったし、近くの子規博物館にも行ってみた。
最初は眠気で全く集中できなかったが、途中から結構見入ってしまった。

子規は夏目漱石とは東京帝国大学からの仲。
漱石が松山に赴任した際に子規と再会し、52日間も共に過ごす。
二人の文才が松山という地で過ごした時間は、その後の文学人生においても大きな影響があるのではないだろうか。

二人の関わりについてはここで知ったのでびっくりした。
自分が思っていた以上に、松山は「文学が作られた街」であった。
予習して旅先を訪れるのもいいが、現地での学びは一生覚えていそうな衝撃がある。

子規博物館を出ると友人と合流した。
坂の上にある足湯でゆっくりしてから街へ向かった。

愛媛県美術館

金剛峯寺展がやっていて、正直全く行くつもりはなかったけど時間つぶしに友人と行った。
というのも友人は日本史の知識も多いので、解説付きで見れたら面白いだろうなあとは思っていた。

予想通り、友人との美術館鑑賞は濃い時間となった。
知識を教えてくれるのはもちろん、一緒に感想をいう合う時間が楽しかった。
美術館って一人で行って自分のペースがいいなと思っていたけど、誰かと行くのもいいな。

この後、もう一人の友人と合流し、色々あって朝まで共に過ごすことになる…
松山最後の夜、愉快な時間であった。

旅を通して…これからの計画

正直旅に出る前は足が重かった。
京都で十分だという考えの元、そもそも旅行意欲があまりない。

それでも旅行に行こうと思ったのは、何か変化があると思ったからだ。

初めて行く場所、初めて見るもの、現地の食、偶然な出来事、旧友との再会、そして旅先の文化を知ること…全てが刺激であり自分に新たな気づきを与えてくれると思った。

旅行…多くのものが自分にとって初めてで新鮮であった。
見るもの全てに興味をそそられワクワクした。
その場所でしか味わえないものに感動した。
そんな経験に出すお金や時間は惜しまない。
じっくり考え、誰かと共有する楽しさも感じた。


そんな感情を抱いた時、第一に思ったことは、「京都でこの感覚を味わいたい」ということであった。

京都で十分。京都は楽しいから。と自分に言い聞かせるように思っているが、実際十分なのだろうか。

住んでいると見るもの感じるもの全ての新鮮さがなくなってしまう。
4年前、街を見、目を輝かせていた私の姿は失われてしまった…

少しでも京都を新鮮に味わうために、京都旅行dayを作るのはどうかと思った。
この日は豪遊してもいい!好きな場所へ行き、好きなものを食べよう!という日である。
いつもだったら遠慮して入らないお店でご飯を食べたり、お土産屋さんで気に入ったものを買ったり、疲れてもいいから行きたい場所をたくさん周ったり。

京都で時間とお金を使うことに寛容になる、これだけでかなり観光気分になるんじゃないかな。
もちろん見慣れた景色も多いだろうけど、新たな視点で見た京都はまた美しく、深い街だと実感するんだろう。


今回「坊っちゃん」片手に歩いた文学の街、松山。
そこで感じたことが、京都での過ごし方を見直すきっかけになるとは…。
旅という非日常は、日常を楽しくするためのヒントを与えてくれる。

早く、「古都」でも持って京都の街へ出かけたい。






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