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53rd ALBUM "GALAXY" セルフライナーノーツ

皆さまごきげんよう!Loopです。
今回は53作目のオリジナルアルバム"GALAXY"のセルフライナーノーツ的なアレです。このセルフライナ―ノーツシリーズもすっかり恒例となりました。自分が作曲時に意識したことや手法を文字に起こすことで自分でも気づきがあってなんか良い感じだったりもします。

全8曲構成で総再生時間は24分16秒。とてもとてもコンパクトな作品ですが、過去最高に捻くれているというか変な沼にハマっているアルバムでもあります。主に音の配置や重ね方の部分でしなくても良いような実験をたくさんしています。自分でも聴き返すと把握できない曲もあったりする。

全編通して"宇宙"をテーマにした初めての作品でもあります。過去に11作目や28作目で近いことはしているのですが、あちらは宇宙に関係ない楽曲もチラホラ入っているのでノーカン。

さて、前振りはこの辺までにしていつものように1曲ずつ解説していきたいと思います。それぞれの楽曲にはそれなりの想いが込められてるんやで。

01.月光螺旋
冒頭を飾る楽曲ですが完成したのは一番最後です。この曲が出来るまでは次曲の"Comet"が1曲目候補でしたが、何となく工夫が無いというか最初に置くにしては安直な感じがしたので結果的にこちらを選びました。

この曲は2023年の8月半ばぐらいに一度完成テイクとして出来上がっていたのですが今年の3月に改めて聴いたらなんかコレジャナイと感じてしまって最初の完成テイクはお蔵入りとなりました。そちらのテイクの面影はもはや使っている音とタイトルしか残っておらず、その結果として同姓同名の別人みたいになっています。

元々の完成テイクは宇宙系の楽曲とワルツ、というか三連符のアプローチをくっつけたいというところから始まっていてメロディーに関してもピアノを3連でダダダダダダと連打しているような感じでしたが、その連打が今聴くとちょっと頂けなかったので、丸っと没にしました。当時の私はそれでGOサインを出していたのでいまと趣向が違ったのでしょうね。

そして今作収録のニューテイクは三連要素が消えて、ちょっぴりおセンチなメロディーのサンバっぽいリズムの楽曲に仕上がりました。おセンチなサンバって何やのって思いますけど。

メロディーに関してはこの曲が"月光螺旋"であるという事すら意識してません。もう完全に元のものはどっかに暴投して何でもいいので切ない感じのメロディーを寝る前の5分で生み出さなきゃいけない、という謎ルールを自分に3日ぐらい課そうと。で初日の5分ですぐ浮かんだのがこれのメロディーです。残り2日はいつもより多く寝返りをうったりしました。

音楽というのは面白いもので変に捏ね繰り回したものよりも数分でポンっと生み出したもののほうが良かったりします。実際、この楽曲も最初のテイクは1週間ぐらい向き合って出来ているものなのですが、最後の最後に5分で生み出したメロディーとそれに付随してきたリズムに負ける、ということが起こっていたりするわけで。特に作品数を重ねると変なこだわりや不必要な展開、メロの動きを付けたくなるのですが、そうした気持ちは作曲時の最大の敵でもあると個人的には思っています。

02.Comet (Album Mix)
動画版では特に表記が無いですが先行版とは異なるアルバムミックスになっています。異なる点はカチカチした金属っぽい3種の打ち込み音のピッチが元よりも低くなって前曲と同じものになっている点と、イントロにビーム音っぽいSEが追加されている点です。これによって、よりSF感が出ているとかいないとか。

loop音楽ファンのかたならば聴いた瞬間に分かると思う、というか分かって欲しいのですが43rdアルバム"FICTION"に収録されていた"Cockpit"という楽曲のセルフパロディーになっています。刻むようなシンセリフのあたりとかホントにまんまですよね。構成に関してはAからサビにすぐ行くような即効性が欲しかったのでCockpitと違いますけど。

ちなみに元々は先行候補ではありませんでしたが、4曲目の"Starship"のジャケットを担当してくださったカトリさんに同曲と同時にこの楽曲もお渡ししていて、その際にお褒めの言葉を頂いたのが嬉しかったので今作も先行になりました。大人になっても褒められると嬉しいものですよね。

03.ダダダ星人
アルバム制作の途中段階で"何か今回やけに作風が真面目過ぎるような気がする"と感じたので1曲ぐらいなんやソレみたいなタイトルの曲を入れておこう、というそうゆう曲です。ただそう思ってみたものの、完全に真面目モードになっていた私は1から変な曲を生み出すことが出来そうにない状態でした。

そこで、過去の打ち込みファイルから使っていない音などを引っ張り出してそれを膨らませて形にすることにしました。で、USBを漁ってたところ何故かスラップベースでベベッ!ベベッ!って刻んでいるだけで終わっている変なファイルがあって何となく阿保っぽかったのでこれを使おう!とそうゆうところから生まれた曲です。

タイトルはリズム隊がダダッダ,ダダッダ,と刻んでいるように聴こえるからというただそれだけの理由で付けました。多分これがもう少しカッコいいタイトルだったらまた聴こえ方が違うのではないでしょうか。

ちなみにメインメロディー部分でド真ん中にカスカスの音のライドシンバルが置かれていてメロともろ被りしていますがこれは意図的なもので、何かしらのチープさや馬鹿っぽさが出れば良いなぁみたいなアレです、

04.Starship
先行第3弾。この曲に関しては作り始める時から"先行っぽいものを作る"という意識で制作に取り掛かりました。ここで言う先行っぽいとはざっくりと言うと小難しくない/分かり易いということです。

分かり易さを重視すべく、リズムは絶対に四つ打ちにする、変拍子を入れない、メロディーをやたらめったらグネグネ動かさない、等のルールを設けました。1曲目の月光螺旋でお話したことにも通じますが、ずっと作曲をしていると如何に難しい構成にするか、とか、今までやったことがないことをするか合戦みたいなものが自分の中で起こりがちです。そしてそれが起こると、メロを作る際、素直に伸ばし切ればいい音を変に切ったり動かしまくったりとかしちゃうわけですけれど、この楽曲では伸ばしたほうが良ければ素直に音を伸ばすというのを心掛けました。

それと、シンセの重なりを工夫しない、というのも意識しました。このアルバムの他の楽曲では"いやそこのシンセ聴こえんがな!"みたいな小さな音のシンセの重なりまで拘ったのですが、拘り過ぎると何やよう分からんねんけども、みたいなものが出来上がるんですね。要するに自己満足でしかなくて、聴き手はどうでもいいんだけどねそこってなる。そうゆうものばかり集めたアルバムにするのはどうなんだろうって。

そこで、この曲に関しては複数シンセが鳴っていてもほぼ同じとこを辿ってるような構成にしました。例えそこだけやたら音がでかくなってももういいや、みたいなそうゆう気持ちで打ち込んでいます。ベースがわりに入っているピアノも連打しているだけですしね。The安直。

05.Pyramid Of Planet
アルバム制作の最初期から存在していた曲です。4曲目で言っていた拘り過ぎてよく分からないとこにいっている曲1つ目。ちょっとエスニックなものを最初に作っておきたい、エスニックって言ったらこうシャラララ~♪みたいな感じでしょ、というこれまた安直な考えから始まっているのですが、いざ取り掛かるとそのシャラララ~♪的な音が手元にないということになりました。シタールっぽい音は手元にあるけど響きが良くなくて。

手元の音にリバーブや、ゲート、ピンポン系やトゥーマッチとかのエフェクターを効かせて残響が繰り返し起こるようにすればいいのでは?とも思ったのですが、エフェクトはやはりエフェクトの音なんです。まして打ち込みなので機械音を超えられない部分があるなぁみたいな。

じゃあ、もういっそ残響部分も手打ちで再現したら面白いんじゃない?と思って。どういうことかというと、シタールの1つの弦の音を32分割して見た時に、左1個目以降、2~32に同じ音のボリュームを下げたものやキー違い、和音になる音を1ずらしずらしで配置していけばふわぁ~とコーラスがかった神秘的な音になるのではと。

1つの音に32個分音が鳴っている、というのを延々と手打ちでやりました。それも、人が引いた時に1音1音全部響きが同じにはならないはずだからとこの音は17個目と25個目だけひとつ前の音と違うキーにしよう、だとかあえて間違えた音を28個目に入れようかなとか、これを延々と打ち込んだわけです。マスタリング時に埋もれる音が大半なのにね。

16等分した音をちょいずらせば32になるじゃん、と途中思ったりもしたのですがそうした場合、1つ2つだけ音を差し変えるという事がどうしてもしにくいので泣く泣く断念しました。

結局シタールだけで持たせられなかったので他のシンセの音も入っていて、そのシンセの音が一部の残響と重なっているのでいよいよ意味がわかりません。音酔いしてまでやる必要があったのでしょうか。

06.Inorganic
アルバムにほぼ毎回設けているメロ無しテクノ枠です。元々は別名義(LML)用に作っていた曲でしたがそちらに持っていくにしては音がソフトすぎるという理由でLoop名義の楽曲となりました。LMLのほうはもう少しハードというか、ワイルドな仕上がりじゃないとっていうのがあるので。

ピーン!という音は鈴、コーン/カーンという音はライドシンバルですが、どちらもピッチを弄っていて非常に無機質な響きになっています。タイトルのInorganic(無機、無機的)もこの音の質感から付けられたものです。イメージとしては宇宙ゴミです。ゴミっていうとあれですけど。

基本的には終始同じ音で構成されていて音の抜き差しで展開を付けるいつものテクノ枠での手法をここでも使用しています。

07.宇宙夢
アルバム制作の最後から2番目に出来た曲。4曲目で言っていた拘り過ぎてよく分からないとこにいっている曲2つ目です。聴いていただければこの曲のよく分からなさがよく分かると思います。

シンセのパッドがとんでもない数重なっているのですが、あまりにも重なりすぎて音がぼやけたうえにマスタリング時に変なとこの音帯が持ち上がった結果、コーラス隊みたいな音になっているのが特徴です。人の声のような響きですが人の声要素は一切入れていません。

普通であれば元データまで戻ってパッドの一部を消すかボリュームを下げてMixをやり直すべきなのですがこの楽曲はその奇異っぷりが面白いと判断してそのままにしました。次曲が限りなく雰囲気重視な楽曲ということもあって6曲目と次曲を良い意味で曖昧にする繋ぎとしても良いのではないか、という意図もあります。

最初はリズムレスでしたが、そこまで行くとあまりにも掴みどころがなさすぎるので最後の最後にカサバの音とBPM120で打ち込んだハイハットとスネアのリズムパターンをソフトでテンポを半分に落として乗せました。最初から60で鳴らせば良いのでは?と思われるかもしれませんが、一度120で出力したものをソフトで弄ったほうが独特なもたつきが生まれていい感じなんです。

08.Galactic Buds
5曲目と同様にアルバム制作の最初期から存在していた曲です。この曲に関しては以前単体で解説しました。若干今読むと"そうだっけ?"みたいな記述があるので…何かカッコつけてたのかもしれない(何故?)

この曲はアルバム制作の中でも一番最初にあった曲で、正直今聴くと前のアルバムから変化しきれていない感があります。そうした理由からアルバム用にリアレンジして収録するということも考えたのですが、少なくともこれを作った当時の私はこれにGOサインを出したわけで、ただでさえ1曲目で過去の自分を否定していることもあり、この曲に関してはそのままのアレンジで収録することにしました。

唯一先行版と異なるのはマスタリングです。この楽曲だけアルバム用にリマスタリングして収録しています。理由は音の広がりの部分で納得いっていない部分があったから。先行版はあまりにも左寄りにリズムもシンセも偏って振り分けられすぎていたきらいがあります。今回はそこを改善するべく両サイドの音量を揃えて低音を再度調整しました。

という事で今回は53rdアルバムのセルフライナーノーツでした(/・ω・)/
制作の過程でスタンスが変化したのもあってまとめ上げるのが難しかった作品でしたが無事出来上がってなんだかホッとしています。

ここまで読んでくださりありがとうございます!!
それではまた別の記事で('ω')ノ

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