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データから読み解く「#家にいるだけで世界は救える」の拡散状態

上司「あのTwitterのキャンペーン投稿、よかったね~。けっこうバズったね!これで『商品A』の認知も高まったんじゃないかな?」

運用担当者「そうですね。前回の施策も効いているんじゃないですか?」

上司「今回と前回の施策を比較したら、どれくらい違いがあるのかな?効果がはっきり言えるなら、次回の役員会で説明したいんだけど」

運用担当者「リツイート数やインプレッションは2倍くらいになりました。でも、前回の投稿の影響があるので、単純に効果が2倍になったとは言いづらいですね。それに、公式アカウントの投稿のリツイートだけではなく、『商品A』を買った人が話題にしてくれている発言もちらほら見られます」

上司「そういった声も加味して、説得力を持てるデータはないかな?」

運用担当者「・・・」

企業におけるソーシャルメディアの運用では、投資対効果をはっきり示しにくいという課題がついてまわります。そこで、今回はクチコミの拡散状態を数字で表す方法を提案したいと思います。

なお、今回対象とするクチコミデータは、Social insight(Userlocal社)で取得したTwitterデータとします。

話題が拡散する際のツイート件数の推移傾向

ある特定の話題の拡散を計測するには、該当するツイート件数が急増した状態を計測することが考えられます。そこで、特定のキーワードなどの条件で抽出したツイートの日次件数の数だけから、話題の拡散状態を数値化する方法を考えました。

下図は、今回のコロナ禍で使用されるようになったハッシュタグ、

#家にいるだけで世界は救える

の日次のツイート件数を時系列にしたものです。典型的なネット炎上における話題数の日次推移を折れ線グラフにしました。

家にいるだけで地球は救える

まったく認知されていなかった話題が広まる場合のツイート件数の推移には、以下の2つの特徴があります。

特徴1:拡散が発生した前後の話題件数が異なる

ほとんど話題が存在しない状態から、拡散メディアに話題が投稿され、急速にツイート件数が増加する。「#家にいるだけで世界は救える」では、2020年3月28日以前には、確認することができませんでした。

図のように3月30日前後に急増が確認されたのち、ピークを過ぎても認知がなされているので、その後もツイート件数を維持しています。「#家にいるだけで世界は救える」では、4月2日以降の数日間は800〜1,600件程度を推移しています。

特徴2:複数回の拡散が発生することがある

ある程度話題が広まった状態から、新たに関連する話題が提供された場合、ツイート件数が再び増えていきます。ただし、1回目のツイート件数の増大とは異なり、すでに認知のある事柄が話題となる状態です。

さらに2回目だけでなく、断続的に3回目、4回目と増大が起きることがあります。「#家にいるだけで世界は救える」のグラフを見ると、3月29日と4月8日と5月1日ごろの3回のピークがあることが確認できます。

トレンド方式の提案

このように特定の話題に関するツイートの日次件数の増減傾向をもとに、話題が急速に広まったタイミングの期間と規模を数値化することを試みました。

その手法を「トレンド方式」と呼ぶことにします。トレンド方式は、その日(観測日)がツイート件数が急増したタイミングかどうかを、特定の期間(観測期間)のツイート件数の予測推移から観測日の話題件数の推定値を求め、実際の値との乖離度を計算し、一定の閾値よりも乖離が大きければ「拡散日」と判定する方法です。

拡散強度から、拡散日・期間・規模を判定する

下図は、「#家にいるだけで世界は救える」の4月2日~4月17日のツイート件数の日次推移データを使って簡単に説明します。この例では、4月8日をピークにハッシュタグが急増したことが分かります。

家にいるだけで地球は救える拡散強度前

それぞれの日の実際のツイート件数と予測したツイート件数と比較して、どのくらいギャップがあるかを数値化します。この数値を拡散強度と呼ぶことにします。

※具体的な予測値の決定方法と拡散強度の計算方法は『日本セキュリティ・マネジメント学会誌 Vol.32, No.1, pp.3-15, 2018.5.』を参照ください。

下図は、ツイート件数の折れ線グラフに、日ごとの拡散強度を棒グラフで重ねたものです。この数値が大きいほど、予測値との乖離が大きいことを示すことになります。

このデータで拡散強度を計算すると、4月7日が1.3、4月8日が7.4、4月9日が4.7、4月10日が2.6、4月11日が0.3となりました。それ以外の日は0です。

家にいるだけで地球は救える拡散強度

拡散強度が3以上の日を拡散日(下図、赤い吹き出し)と判定します。また、拡散日の前後で拡散強度が1以上の日を準拡散日(下図、オレンジの吹き出し)と判定します。以上より、この図の例では、4月8日、4月9日を拡散日と評価し、4月7日と4月10日を準拡散日と評価しています。

家にいるだけで地球は救える拡散強度説明

この、拡散日と順拡散日の期間を拡散期間とすることとします。また、拡散期間における拡散強度の和を拡散規模とします。この例の場合であれば、
1.3+7.4+4.7+2.6=16.2

となります。つまり、このツイートの拡散は、

・拡散期間が4月7日~4月10日の4日間
・拡散規模が16.2

と表現することができます。

「#家にいるだけで世界は救える」の拡散状態の分析

実際にトレンド方式を使って「#家にいるだけで世界は救える」の拡散状態を分析してみましょう。図は、3月8日~5月7日の2か月間における「#家にいるだけで世界は救える」の日ごとのツイート件数推移をもとに拡散強度を求めたグラフです。

家にいるだけで地球は救える拡散強度説明2M

トレンド方式により、拡散期間と評価されたのは、次の3つの期間でした。

家にいるだけで地球は救える表

2回目の拡散は、1回目より拡散期間長くなりましたが、拡散規模は小さめになりました。3回目の拡散は、2回目に比べ拡散期間は短いものの拡散規模は大きめになりました。それぞれの期間に発生した話題を見てみましょう。

※以下のリツイート数、フォロワー数は5月11日時点の数字

■1回目(3月29日〜3月31日)

3月28日の午後11:00にハッシュタグの発案者、みる兄さんから最初のツイートが発生られます。この投稿のリツイートは約9,300件と拡散しています。ツイートしたタイミングが午後11:00だったので、日付が変わった3月29日に数多くの人が目にして、新しいツイートを生み出し始めました。

また、このハッシュタグを紹介したBuzzFeedの記事も3月29日にリリースされています。この記事は、Yahoo!ニュースにも掲載されたこともあり、ツイート件数を増加させる結果となりました。

■2回目(4月7日~4月11日)

THE RAMPAGE from EXILE TRIBEの公式Twitterアカウントから以下のツイートが投稿されました。アカウントのフォロワー70万人近くを抱える人気アカウントです。この投稿には、1,000人を超える人がリツイートしています。

このツイートで一緒に紹介されているTikTok動画も好評で、大勢のファンが反応しています。

4月8日にはTwitter JAPANが以下のツイートを投稿し、ハッシュタグの活用を提案しています。このアカウントは229万人のフォロワーを抱え、1,400件を超えるリツイートが生まれています。

以上のように、この期間のツイートの拡散はたくさんのフォロワーを抱える人気アカウントがハッシュタグを使った投稿をしたことで強まったことが分かります。

■3回目(5月1日~5月2日)

『アベンジャーズ』公式からの以下のツイートが拡散しました。フォロワー数は30万人弱ですが、7,200人を超える人がリツイートしています。

「#家にいれば君もアベンジャーズ」という独自のハッシュタグで、不要不急の外出をしないあなたがヒーローであるとのメッセージを伝えています。実際、この投稿に共感した人々が、次のような反応をしています。

これぞ #StayHomeHero
連休はアベンジャーズ観ようかな!
#家にいるだけで世界は救える
https://twitter.com/StayHomeHero1/status/1256222499299381249
家にいる!ってことは!うちの家族みんな・・・アベンジャーズだーーー!やったーーーーーーーーーーー☆
https://twitter.com/nanachin7/status/1256126311581585408

この期間に強い拡散を生み出したツイートは、この1件以外には確認きませんでした。たった1件のツイートで、観測した2か月間で最大の拡散を引き起こしています。

まとめ

これまで見てきたように、拡散の原因となった話題によって拡散状態が異なることが分かりました。それぞれの拡散期間におけるツイートが増大した原因は、以下のようにまとめられます。

1回目:ハッシュタグの発生
2回目:人気アカウントがハッシュタグを活用
3回目:人気コンテンツとハッシュタグの組み合わせ

2回目と3回目の拡散を比較すると、2回目のほうがゆっくりと、3回目のほうが早く急激に拡散したことが分かりました。

以上のようにトレンド方式を利用し、それぞれのツイートの拡散状態を数値化することで、別に発生した拡散状態を定量的に比較することが可能になります。単にフォロワー数や投稿のリツイート数だけでなく、話題となるツイートの拡散状態が数値化されることで、見えてくることもあるのではないでしょうか?

プロモーションの施策の効果測定だけでなく、ネット炎上の深刻さなどの把握にも役立つはずです。

【書いた人】
Koji Fukuda
株式会社ループス・コミュニケーションズ副社長 多数の企業にて、ソーシャルメディアの効果的かつ安全な運営を支援しています。 特に、企業のソーシャルメディア活用におけるルール「ソーシャルメディア・ポリシー」策定や啓蒙教育など積極的な守りの仕組みづくりが専門領域です。

※内容についてのご意見やご質問はnote@looops.netにお願いします。




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ループス・コミュニケーションズはInstagram、Twitter、Facebookなどのソーシャルメディアのプロフェッショナルとして活用支援、運用サポート、リスクマネジメント対策、コンサルティングサービスを提供しています。 HP:https://looops.net/

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