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『ノンセクが26年間を振り返ってみた話』④苦手な男性

    すみません、今回はノンセクとは直接関係ないけど、のちのち話に登場する家族のことなので書きます。そして愚痴っぽくもなります。ご了承ください。



    私は特段男性恐怖症ではないと思う。男友達みたいな人はほとんどいないが、学校や職場でも男性と話したり一緒にいたりするのにそれほど抵抗ない。
    もちろん、関わっていくなかで「あ、この人苦手…」な男性はつきもの。そして、そんな男性が身近にいる。兄だ。

    兄と私は2歳違い。幼少期こそは仲がよかった(※母曰く)らしいが、その関係は中学生の頃に崩れ出す。
    兄が中3、私が中1のとき、兄が遅めの反抗期と思春期を迎える。野球一筋で五分刈りだった髪を伸ばすとワックスで遊び始め、制服を着崩し、家のなかでは自分の思いどおりにならないと不機嫌になり母に命令をする。父には逆らわなかったが、母と私と妹は見下しているようだった。
 暴力はなかったものの、目が合うと舌打ちされるか睨まれるか無視されるか、という日々だった。兄と同じ空間にいるのが嫌だった。
 最も嫌な思いをしたエピソードをひとつ。私は中学校のクラスで体育委員になった。その日家に帰ると、兄も体育委員になっていた。委員会は月1で全クラスの委員が集まって話し合いをする。つまり兄と私が同じ空間にいることになる。私は地味で制服も一切着崩すことなく、真面目っ子そのものだったから、兄弟と思われたくなかったのだろう、同じ委員になったと知った瞬間、今までにないくらい冷徹な目で私をにらみ、舌打ちをかましてきた。あの瞬間と恐怖は切り取られた動画みたいに今でも残っている。

 そんな兄とはろくな会話もないまま、私が高校2年の時に、兄は大学進学のために家を離れた。清々した。兄のことを気にしなくていいって、こんなに楽なことなんだと思った。

 状況が変わりだしたのは、その7年後くらい。7年の間に兄の性格は丸くなり、紳士的になった(母曰く)らしく、私もその片鱗を何となく感じてはいたが、まともな会話はなかった。
 そんな兄が婚約者を連れて、家族で食事をすることになった。その食事の場、兄は今までにないくらいフレンドリーに私に接してきた。だけど、私には「婚約者の前だから『いい兄』ぶっている人」にしか見えなかった。

 ここにきて何いい人ぶってんの?
 今までのことチャラにするつもり?
 「こっちが丸くなったら、向こうも柔和に応じてくれるだろう」って魂胆?
     ふざけんな。

 結局、私は大人になり切れず、イライラしながら応対していた。兄も婚約者も私の態度には戸惑っていた。
 帰り際、兄がバイバイと言って手を振ってきた瞬間、背筋がぞくっとし、気持ち悪いと思った。この空白期間で、私は兄を受け付けなくなってしまったみたいだ。

 今はというと、相変わらず兄とは距離をとっている。もちろん過去の謝罪はない。日常に兄の影をちらつかせたくないので、兄嫁を含めた家族のLINEグループが存在するが、通知はオフにしている。とりあえず今のところは、いとこくらいの認識でいよう、冠婚葬祭はきちんとやろう、という気持ちである。兄嫁に非はないので、多少の申し訳なさはあるけど。


 ちなみに、私の兄に対する対応をめぐって、ことあるごとに母から叱られているが、一度こんなことを言われた。

 「別に暴力振るわれたわけじゃないんだから」

 手が上がっていなければ問題ないの?
 今までのことは我慢して水に流して、兄の思い通りにまた我慢して笑顔で応じろということか?

 確かに、世間一般に見れば、私が受けてきたのは全然大したことないレベルだと思う。
 でも、あの母の言葉だけはずっと引っ掛かり、消化できずに残っている。

 謝罪が一切なく、しれっと関係改善を図ろうとするのは論外だが、かといって今更謝罪してほしい、謝罪したら許すというわけでもない。矛盾している気もするが…
 これからどうなるのか分からないけど、今は私が悪者でもいいからこのままにさせてほしい。