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『ノンセクが26年間を振り返ってみた話』⑮普通ができない

※性的な描写があります。

    自分で言うのもなんだが、私はだいたいのことは人並み程度かそれ以上できるという人生だった。なので、恋愛に関しても、周りより数年遅れをとっていたが、いずれ人並みにはなるだろうと思っていた。

    そして、26歳手前で、いよいよ経験を積んでくのだなというところまで来た。最初は慣れないかもしれないけど、「恋愛ってこういうこと」として学んでいこう…そういう心構えをしていた。


    ある日の家デート中にAくんが「キスしていい?」と聞いてきた。
    ちゃんと聞いてくるから律儀な人だ。私はキスはおふざけでもやったことがなかったので、正真正銘のファーストキス。彼とならファーストキスできると思った。
    初回は唇を重ね合わすだけの軽いキスだった。なるほど、こういう感じか、という印象だった。

    だが、回を重ねると、軽いキスじゃ済まなくなった。その時間は長くなり、舌を入れ始めた。
    「これがディープか」
    衝撃ではなかった。だが、身体は受け付けない。相手に悟られないように自然体でいようとしたが、身体は硬直し、私の舌は彼の舌をブロックする感じになる。

    ドラマとかでも見かけるやつ。彼がおかしいわけではない。
    けど何がしたいの?こんなんで快感得るの?早く離れてくれない?


    カップルがやることとして頭では理解していたはずなのに、いざ当事者になると訳が分からなくなる。「慣れてないだけ」そういう見方もできるけど、慣れ云々を凌駕するような違和感、嫌悪感がそこにはあった。
    ひっついて抱き合ってキスをして…という一連の流れはお互いの家にいるときは何回か経験した。だけど、回を重ねる度に慣れるどころか、その時のAくんのとろんとした目や、甘えたような声などもひっくるめて、その行為全体が気持ち悪いと思うようになった。


    そして、さらなるステップを踏むことになる。
    自分が処女であることは事前に伝えていた。Aくんも「心の準備ができるまで待つ」「少しずつやっていく」と言ってくれ、実際私が「いいよ」と言うまでに、付き合って3ヶ月は経過していたと思う。

    私は準備できていた。どんな感じになるかは分からなかったけど、一連の流れや相手の動きはネット上ではあるが把握し、下着も見られても恥ずかしくないように新調したのも実際の話。

    

    本当にAくんは自分の欲求を抑えて私に配慮しながら進めてくれた。
    私は彼の動きに合わせるだけだったが、やっぱり身体が硬直する。安心させるために彼もあの手この手を使うが、リラックスどころかそれすらも逆効果。
    挙げ句の果てに、途中から私は感情を無にして、今何をどうされているのかを考え始めた。「今このあたりをなでられてる」みたいな感じだ。そうすると、ただでさえ、こちょこちょに弱い私の感覚が過敏になり、何と行為中にくすぐったくなり、ついに我慢できず笑いだしてしまった。ムードが台無しだ。


    結局、途中までは進んだが、痛かったのと、私が最後までこの空間に耐えられる自信がなかったのでやめてもらった。
    別日にも同じように進めたが、途中で切り上げてもらった。
    私の拒否反応を感じ取ったのだろう、Aくんが3回目を誘ってくることはなかった。



    無理矢理でもなく、散々準備をして臨んだのにできない。
    世に生命が誕生する過程でもあるんだよね、そんな普遍的なことができないのかも。
    男女の普通がなぜかできない、そう思わずにはいられなかった。