見出し画像

罪深き減価償却費

昨日、減価償却費のことを書いたら、また書きたくなっちゃった。

減価償却費は、会計士監査の対象にならないような中堅・中小企業にとってはとっても都合のいい利益調整弁になる。

減価償却費には、「キャッシュ・アウトを伴わない費用」であるほか、「税務上は損金(=税務上の費用)に算入できる償却限度額が決められているだけで、それより少なくても問題ないとされている」という特徴がある。
特に後者は引当金にはないメリットだ。引当金は貸倒引当金を除いて、そもそも税務上の損金とは認めてもらえないから、いくら計上しても課税所得には影響しない。

これらの特徴から、利益がたくさん出たときには限度額いっぱいまで減価償却費を計上し、利益が少ない時には減価償却費も少なく計上することで、
①お金を貸してくれる金融機関向けには、安定的に利益が出ている(あるいは実態よりも赤字が少ない)ように見せることができる。
②税務上も、課税所得の発生時期をある程度コントロールできる。課税所得がない時に無理に計上しなくても、「損金を後にとっておく」ことができる。
という便利さがあるわけ。

こう書くと、未払費用を適当に計上したり、費用を前払費用に資産計上しても同じ効果が得られるのでは?と思うかもしれない。
でも、本来費用計上できないものを未払費用で計上しても税務上は否認される(申告書上で加算しなければいけないので、金融機関にバレる。加算しないと過少申告になる。)し、前払費用は一般にそれほど金額が大きくなることはないので目立つ。目立つと金融機関に内容を聞かれることになるけど、それらしい嘘をつくのは容易ではない。嘘をつくこと自体、結構リスクを伴うことでもある。一歩間違えると粉飾決算で融資金をだまし取った、という話になりかねない。モチロン程度問題ではあるけど。

減価償却費の罪深さは、税法が過少計上をシラッと認めてしまっている点にある。会計上、あってはならない恣意的な計上が、「税法基準で計上」というもっともらしい計上基準でもって事実上まかり通ってしまっているわけだ。

金融機関もその罪深さについてはよくわかっているから、慎重にモニタリングしているけど、単年度ならともかく、継続的に減価償却不足額を把握していくのは技術的にかなり難しい。本来の(毎期、適正に減価償却し続けた場合の)減価償却額は会社の固定資産台帳にすら表示されないから。
かくして、ちゃんとした金融機関は厳しめのみなし計算で不足額を見積もる一方で、頼りない金融機関は見て見ぬふり(または、本当に見えていない)というケースも過去にはあった。今はどうなんだろう?
金融機関にお勤めの方、コメントいただけると嬉しいです。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?