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数学が得意になりたい高校生に伝えたい、今日からできるたった1つのこと

老若男女のみなさん、数学はお得意ですか?

この記事をわざわざクリックしてくださった方は、数学が苦手か、あるいは数学に興味がありすぎてクリックしたかという両極のどちらかの方が大半でしょう。今回は、数学が苦手だけれど得意になりたいとは思っている、特に高校生の方にお伝えしたい記事です。あるいは、高校生に数学を教える方にも読んでいただきたい記事です。

本当のことを言うと、「たった2つのこと」で記事を書いていたのですが、5000字を超えてしまって読むのを断念されてしまっては元も子もないのでいったん1つにしました。2つ目はまた書くかもしれない。

今日からできるたった1つのこと

さっそくですが、結論から申し上げましょう。あなたが数学を得意になりたいならいますぐやるべきこと、それは「数式を綺麗に書く」ということです。

あまりに単純すぎて拍子抜けしてしまったかもしれませんね。ですがこれは筆者が教員として何人もの中高生に数学を教えてきて、ひしと痛感している本当に大事なことなんです。

ではまずそもそも、「数式を綺麗に書く」とはどういうことか説明します。

「数式を綺麗に書く」とは

①そもそも文字を綺麗に書く
②揃えるべき文字の大きさを揃えて、かつ適切な文字サイズで書く
③途中式を書く
④「=」を縦に揃えて書き、詰め詰めで書かない

①②については単純に文字の書き方の問題です。③④については数式に独特の話です。

なぜ「数式を綺麗に書く」とよいのか?

「自分の文字の読み間違え」を防ぐ

よっぽどいつも綺麗に数式・計算を書いている人でなければ、誰しも人生で一度や二度、あるいは数えきれないほど「自分の文字を読み違えた」ことがあるでしょう。

  • 6とbを間違えた

  • 9とaを間違えた

  • +と×を間違えた

  • 筆算で位を間違えた などなど…

「計算も解き方も合っていたのに、自分の文字を読み違えたせいで答えを間違えた」という状況はいちばん悲しいですよね。

非常に基本的なことですが、基本を侮ってはいけません。基本を侮る人に応用問題なんて解けませんよ。思い当たる節のある人は特に以下のことに気をつけましょう。

  • 意識的に文字を綺麗に書くよう普段の数学の授業や演習から気をつける

  • 揃えるべき文字の大きさや間隔を揃える。具体的には、「普通の数字や文字」「指数(「2乗」「3乗」など数字や文字の右上に小さく書かれる数字)で文字の大きさを揃えたり、「+」や「−」の前後には適切に間隔をあけたり、「sin」などは変に間隔を開けずひとまとまりとして書く、など

  • ノートの罫線に無理に合わせようとしない(罫線の幅にもよりますがどうしても詰め詰めになりますし、分数などを罫線内に書こうとすると非常に小さな文字になってしまいます)

  • 罫線のないノートであれば、行がちゃんと直線になるように書く

補足として、②で「適切な文字サイズで」と書きましたが、経験上数学が苦手な人はだいたい字がめちゃくちゃ大きいかめちゃくちゃ小さいです。小さすぎると見間違えやすくなるし、大きすぎると現実的にテストなどのときに紙面上の問題で困ります。「適切なサイズ」を模索しましょう。

「どこで間違えたのか」の確認がしやすくなる

「途中式を書きなさい」と言われたことのある人は少なくないと思いますが、特に数学が苦手だと思うのであれば意識的に丁寧に書くべきです。「これくらいは暗算でできる」「ノートの端に計算を書けば途中式をわざわざ書かなくても解ける」という人も、数学が得意でない自覚があるなら、面倒でも横着せずに途中式を書いてください

途中式を書くと何がいいかと言うと、検算するときや、間違い直しをするときに役に立ちます。丁寧な途中式があれば、「ここまでは合っているけれどここで間違えている」という確認ができます。間違いが明確になれば、自分はここが間違えやすいんだな、と次からは意識して気をつけることができるようになります。

式の計算で同じ間違いを繰り返す人ほど、横着して途中式を書いていません。

一方で、数学が少し得意になってきたら時間短縮のために「必要最低限の途中式にする」方が手数を減らせますし、最終的には手数は減らした方がいいのですが、それは「慣れてきたら」の話であって、「慣れるまでは横着しない」を合言葉にしましょう。

「何のために何をしているのか」を言語化する素材となる

これは少し発展的な、数学の「勉強法」に関わる話です。

数式が縦に長く連なっていくとき、そこではいろいろな式変形が起こっています。最も単純な「計算」「展開」かもしれませんし、「平方完成」や「微分・積分」、「証明したい形に寄せる」作業かもしれません。

たとえば中学では、「因数分解せよ」という因数分解のために因数分解をする問題を多く解きます(高校でも少しやります)。ですが、だいたいの場合因数分解は「手段」です。たとえば、「xの解を出す」ために因数分解を行います。なぜなら、因数分解の形がxの解を出すにあたってとっても便利な形だからです(どう便利なのか解説すると長くなってしまうので泣く泣く省きます)。

これは数学が完全に苦手な学生よりも、少しできる学生にありがちなことですが、「因数分解できそうだったからとりあえず因数分解した」と、ある種の手癖で問題を解いてしまうことがあります。もちろん、「因数分解できそう」という「嗅覚」は非常に大事なのですが、「何のためにこれをしているのか」を理解できていなければ、必ず応用問題で詰みます。

元々説明した、③途中式を書く、④「=」を縦に揃えて書く、ということをしていると、それを素材にして、「この行では何のために何をしているのか」という説明を試みて理解を深める、そういった勉強法を実践するのに使えます。

数学は言語です。英語よりももっと世界スタンダードな言語といっても過言ではないでしょう。数学は言語である以上、目的や作業について自然言語(普段使っている普通の言葉)に翻訳することができます。たとえば、「この行ではまず平方完成をしています。なぜ平方完成するかと言うと、軸と頂点をわかりやすくしてグラフを書くためです。次の行では……」というような形です。ぜひ数式を綺麗に書き、「翻訳」の勉強法を試してみてください。


なお、ここまで言及していなかったことを2点。

「答えを出せればいい」という発想で、途中式や途中の計算をノートやメモ用紙のいろいろな場所に縦横無尽に書く人がいますが、これでは当然確認もできませんし復習の素材にもならないのでやめてください。ひとまとまりの場所に書きましょう

また、確認や復習の素材とすることを考えて、基本的には消しゴムで消さない、をわたしは推奨しています。間違えた部分にはざっと斜線でも引いておけばいいんです。自分がどんなミスをしたかは、正解しか書かれていない教科書からは絶対に得られない貴重な教材になります。これもまた、「最初はこういうところで間違えたけど、ここはこうするべきで…」などの「翻訳」復習に使ってくださいね。

なぜこんな大事なことを教わらないのか?

最後の余談で締めますが、「数式を綺麗に書く」ってとっても大事なんですが、学校で先生に言われた記憶があるでしょうか?少なくともわたしはありません。

いや、嘘かもしれない。もしかしたら小学校で言われてたかもしれない。けれど少なくとも記憶に残るほど強調されて聞いた覚えはない。あまりにも単純なこと、あるいは「当たり前」なことすぎてわざわざ教えるほどのことでもないと思われているのかもしれない。

たしかに単純なことです。そして今のわたしにとっては「当たり前」なことです。ですがこれがすべての中高生にとっても「当たり前」のことかと言うと、そんなことはないと思います。

というのも、たとえば「文字を綺麗に書く」「途中式を書く」などが当たり前だと思っている人は、おそらく「記述式の解答をさせられる入試を経験した」人ではないか、というのがわたしの仮説です。

記述式の解答では、採点者が論理の筋道をはっきりわかるように書くのは当然するべきことですし、もちろん採点者が読める字で書くことは必須です。ですがそのようなタイプの入試を経験していない中高生であれば、当たり前には思えないかもしれません。

また、「途中式をしっかり、縦に並べて書く」などは、高校で改めて教えるべきだと思っています。なぜなら、中学までの計算でしっかり書き並べた方がいい計算をさせられることが、実はそんなにないからです。

少しばかり暗算力があれば、かっこをはずしたり累乗を計算したりくらいはわざわざ途中式を書かずともできますし、中3で習う「展開」は作業として覚えさせられるので、「途中式をしっかり書く」類のものではありません。

おそらく、中高生が初めて出会う「多少暗算力に自信がある学生でもしっかり途中式を書くべき」単元は高校の「二次関数」です。つまり平方完成ですね。これはいま高校生相手に、中学校の復習から教えている身なのでしみじみと感じることです。中学校の数学では「計算がそこそこできていた」学生が、最初に計算でつまづくのが平方完成です。頭だけで処理しようとするとだいたい符号なりかっこの前の数字なり何らかを失念します。

そういうわけで、「数式を綺麗に書く」ということを、わたしは改めて声を大にして高校生に伝えたい、そう思っています。

「それだけで数学が得意になるわけない!」

はい、その通りで、「数式を綺麗に書く」ということをしただけで数学が得意になれたらそんな楽なことはないですね。結局繰り返し問題を解くようなことは必要です。

でも大事なことは、こういういちばん単純なことが「得意」につながっていく第一歩だということです。単純なミスだからこそ、間違えたことでやる気が萎えてしまう、そのまま手をつけなくなってどんどん不得意になってしまう……そんなことは往々にしてあります。

そしてさらに大事なことは、とっても単純だからこそ意識付けだけで「今日からできる」ということです。

千里の道も一歩から、ぜひ「横着せずに」、やってみてくださいね。

[今回の記事担当]内野 すみれ
1993年鹿児島生まれ。大学1年時から始めた塾講師のアルバイトで教育に関心を持つ。大学2年時から教育系の学生団体や一般社団法人で活動を始め、イベントの企画や運営を行う。大学卒業後は一度教育からは離れ見識を広げようと、多様な接客業に従事し、2020年にLoohcsにジョイン。

内野すみれとルークスの関わり

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