あと何回桜が見られるか
この週末、よく晴れていてとてもいい穏やかな土日だった。
外に出るのが大嫌い魔人の私だけど、この週末だけは、よいしょっと重たい腰を上げてでかけた。
桜が見たかった。
近場に桜の名所と呼ばれる公園がある。
もう今のところに10年以上住んでいるのに全然知らなくて、そこを偶然見つけたのは昨年だった。
ちょっと大きな横断歩道を渡らないといけないので、すこし「あっちがわ」の意識がある場所なんだけど、昨年たまたま桜が満開の時期に、予約を入れた新しい美容院に行く途中の道で、すごい勢いで乱れ咲く桜を見つけた。
正直、びっくりした。こんなところがあったの?って。
(場所自体は知ってたけど、お前、こんなトコだったのかよ。って意外な一面を知った気持ちになったわ)
あまりにびっくりしてすぐにその場でスマホで調べたら、なんと桜が有名な場所らしい。
桜の名所ってなんか、河川敷とか、もうちょっと郊外とか、そういうところにあるようなもんだと思ってた。まさか街のど真ん中の、ただの公園がそんな名所になるなんて思ってなかった。
公園というか、神社の敷地内なので、宴会ができる場所は賑やかだけど、境内に一歩はいると少しかしこまった雰囲気になるのがすごくいい。
昨年寄ったときは残念ながら雨の日だったので、満開なのに花見客もほぼいなかった。それでも圧倒される桜たちだったので、今年も絶対に見たい、と思っていた。
本当は先週にもう桜が見頃を迎えてほとんど散ってしまったかと思っていたけど、今週まだまだ見頃でとても嬉しかった。
桜はいつのまにかばーーーっと咲いて、いつのまにか散って、まるで何事もなかったかのように終わっていく。
2年前、一瞬入ったブラック会社で働いてた時、ちょうどこの桜の時期だった。とにかく仕事がキツすぎて、週休1日で働いてるのに貯金を崩さないと生きていけないという謎の状況になり、精神的にも追い詰められていた。
帰るときは毎日深夜前で、わりと遅くまでやってるはずの飲食チェーン店もすっかり閉店しているのがあまりにも情けなくて毎晩泣きながら帰路につくような生活をしていた。だからそのときはもう桜のことを気にかけている余裕すらなかった。
気がついたら冬が終わって春が通り過ぎて、GWになる前にそこをやめて夏までまたニートになった。
あの年、私の人生に桜はなかった。
いつも死ぬ話を書いて申し訳ないけど、あと何回桜を見られるのかな、と思う。
最近うちのおばあちゃんがとうとうぼけてしまって、介護施設に入っている。
もう自分で動いたりとかほとんどできていないけど、95歳だ。(95歳ってスゴイ…)
私は今年でたしか35になるから、仮におばあちゃんの歳まで生きられるとしてあと60回しか桜が見れない。おばあちゃんも自分で好きに動けなくなってから多分結構経ってるから、まるまる95歳まで自由に桜が見れると思わない。そんで、私はどっちみち多分そんな長くまで生きられない。おばあちゃんのほうがよっぽどいい生活してるから。
今年は桜を見ながら、そんなことを考えたりしていた。あと何回こういう風に、「見に来てよかったなあ。また来年も見よう」って思えるのかなって。あと50回くらいかなあ。下手したら突然、今年で見納めかもしれないし。
花見なんて人が多いから、めんどくさい。
仕事が忙しくて、明るいうちに花なんか見られないから、花見なんかしてる暇ない。
そんな風に思って桜が咲いてもスルーしていた時が何年かあったけど、やっぱり桜はちょっと特別だ。
どんな生花もそんなに超長くは持たないから、桜だけが一瞬というわけじゃないけど、永遠のものってない。
自分の人生がいつまでもずーっと続くような錯覚に陥って、私たちは度々くだらないことに時間を浪費するけど、ちょっとずつ、大事だと思うものに絞って時間を使っていくことを考えていかないといけないな。
きっと、今日これから眠って、今週も仕事にワーーッと振り回されて、やっと週末だ、って一息ついたら、もう桜はこの世界からなくなってるのだろう。そんなことなんてなかったみたいに、まるで幻だったみたいに、白とピンクの花びらばかりの世界だったところが、新緑生い茂る別の世界みたいになってるんだ。
桜よ、今年もありがとう。
そして昨年から私の人生という世界において、近所に突然実装された桜の名所よ、ありがとう。
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