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【随想】短編アニメ『Hen, His Wife』イゴール・コバリョフ


1990年制作
イゴール・コヴァリョフ監督の「Hen, His Wife」を視聴。
13分ほどの短編アニメーション。

とあるマンションの一室。
エプロンとピアスをしたホクロの多い白い女性が、慌ただしく家事をしている。

アームチェアには青い男性。
白い女性が運んでくれたコップには目もくれず、本を読んでいる。
背もたれにはペットの人面芋虫が横たわる。

白い女性は青い男性のために足湯を用意する。
足湯が熱すぎて、悲鳴を上げる青い男性。
白い女性は青い男性の顔に頬を密着させ、よしよし大丈夫よとなだめる。

白い女性は戸棚からこっそりと薬のようなものを取り出して口に含む。
青い男性は見て見ぬふりをしてコップをすする。

青い男性は優雅にレコードプレーヤーの上でゼンマイカーを走らせながら音楽を聴きはじめる。
するとそこへ、黒スーツの男性が尋ねてくる。

黒スーツの男性は、ずかずかと部屋の中へと入っていき、青い男性と抱擁を交わす。
持ってきたプレゼントを開封すると、そこには生きた大量のテントウムシが入っている。
どうやら人面芋虫の大好物のようだ。

黒スーツの男性はそこで白い女性の違和感に気付く。
恐る恐る白い女性の足を見てみると、なんと鶏の足をしているではないか。
黒スーツの男性は、青い男性に耳打ちする。

「あの女性は鶏だぞ」

驚いた青い男性は白い女性の姿をまじまじと見る。
白い女性に問い詰める。

「お前は鶏なのか?」

黒スーツの男性は、不敵な笑みを浮かべてその場から消えてしまう。

嘆き悲しむ青い男性と白い女性。
青い男性は白い女性に出ていけと命じる。
その間も人面芋虫は、テントウムシを食べ続ける。

白い女性のいなくなった家で湯船につかる青い男性。
歯磨き粉をたっぷりと絞る。
人面芋虫のミルクを入れる人はもういない。

ふたたびレコードプレーヤーにゼンマイカーを走らせる青い男性。
音楽とともに現れる幻覚。

黒スーツの男性に追われる白い女性。
黒スーツの男性はもしかして自分なのか?
欲望のままにテントウムシを食べ続ける人面芋虫から大量の歯磨き粉が排出される。
部屋中に広がる歯磨き粉に溺れてしまう青い男性。

アラームで目が覚める。
怒りに任せ時計を叩き潰す。
人面芋虫がまたモノを落としたようだ。
黒スーツの男性、白い女性の顔がフラッシュバックする。
人面芋虫の口を塞ぎ、紐で椅子に縛り付けて動けなくする。

どこかへ電話をかける青い男性。
受話器を置くと、受話器の重さで、台座が真っ二つになる。
そこから黒スーツの男性の首が転げ落ちる。

エレベーターが上がってくる。
あの白い女性を呼び戻したのだ。

部屋まで向かう途中、身だしなみを整える白い女性。

ピンポーン
ガチャ

白い女性の表情が一変する。
そこに立っていたのは、鶏の姿をした青い男性。
手にはプレゼントを持っている。
恐れ慄いた白い女性は後退り、逃げ出すのであった。


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