【随想】呪術廻戦 領域展開に関する考察


領域展開とはいったい何なのか。
スーパーサイヤ人とも、卍解とも、エンペラータイムとも違う。
必殺技を繰り出す際の「空間の創出」という点が新しい。

自分のテリトリーに誘い込めば、必ず相手をねじ伏せられる。
コンペに挑むプレゼンターが、一番必要とする能力。
場を掌握し、自らの演説が正しいと錯覚させるスキルだ。

空間における心理戦、肉弾戦は、ハンターハンター、ジョジョなどにも描かれてきた。
環境要因が、登場人物や物語に影響を与えるというものだ。

しかし、「空間の創出」を登場人物自らが行うというのは、珍しい。
もしかしたら、闇遊戯のデスゲーム、東仙要の清虫、ヂートゥの念空間辺りの影響があるのかもしれない。

自分の心の中では、どんな解釈も可能である。
すべてを正しくすること(正当化)ができる。という暴論。

心的空間(主観)を外的世界に拡張・具現化して、その中に相手を閉じ込めることで、
どんな歪んだ思想も、どんな破綻した論理をも通用する状態にする。
つまり、術式必中の状態。

うまいのが、必中にするのが武力ではなく、あくまで呪力であること。
呪力は、心の能力であるから、意見と意見をぶつけ合って、精神を削り合う戦いに他ならない。
真剣10代しゃべり場だ。

より洗練された領域が、その場を支配する=論破だ。

無形の魂を知覚することができる強靭な肉体を持つ主人公と、
無形の魂を自在に操ることができる実体のない呪いの真人。
そんな主人公の心には悪魔が住まい、逆に本能のまますべてを破壊する無垢な魂には「真の人間」が冠されている。

脱サラしたナナミンは、魂の世界で呪いを祓うことで、労働世界の負担を減らそうとした。
まるで、映画『来る』の霊媒師・逢坂セツ子。

しかし、実体を持たない呪いのパワーは絶大だ。
魂は肉体から規定されることを拒み、ギラギラ輝いて大きな闇となって渋谷の街を呑み込む。

140字の呪詛、録音不可の呪言、いいねボタンの呪縛。
肉体を離れ、SNSによりグローバルに拡張された魂は自身の「空間を創出」し、他人のメンタルへと領域展開する。

メンタル戦国時代を描いたダークファンタジー。
最新巻15巻発売中。

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