今年のVtuberのオリジナル曲100ぐらい振り返っていく⑤『花は幻で一本分になっちゃった編』


22. 花は幻 / YuNi

 花は幻は予告から公開までの流れをリアルタイムに終えて良かったなと思います。5分おきに投稿されては消えていく1枚の絵とワンコーラスの動画。Youtubeで何が出来るか、花は幻を生かすために何が出来るかがとても考えられた演出でした。

 『現実の時間は、ボタンを押しても巻き戻らない』
 『この体験は、花が散るように、消えていく』

 まさしくこの通りの体験をさせてくれた乙女丸さんには感謝です。思い切りがないとあれは出来ませんよ。あの体験ばっかりはリアルタイムで追っていないとなんとも言えませんし、消えることによって意味を成す演出なので総集編みたいなのをあげるのも違うしな……。かっこいいぜ素直な乙女丸……。

 歌詞の方にいきます。YuNiさんの歌を界隈の文脈で読むのはちょっと窮屈なので今回そういうふうには読みません。今回はYuNiさんが込めたという死生観やら二面性やらについて考えたいと思います。

 歌詞の中で1番大きな引っ掛かりは『見上げてた首の角度さえ少しずつわすれてゆく』でしょうか。一体何を見上げていたんでしょうか。憧れの存在を「見上げていた」としてもいいとは思うんですが、『Vsinger』としてYuNiさんを捉えるならば「客席からステージを見上げていた」の方がしっくりします。なので、観客としてではなくプレイヤーになって必至に活動していることで、いつの間にか「見上げてた首の角度さえ少しずつ忘れる」ということなのかなと。

 また、「あなたの出番はこれで終わりだと言う」を素直に受け取れば、YuNiさん以外の誰かが先にその出番を終えて、そこに新たに吹いた風がYuNiさんなのかなと思います。なので、YuNiさんの歩む先には既に花びらが既にある。1番ではまだ辛うじて咲いていた花ですが、2番では雨に連れさられている。でも、1番ではおそらく憧れであった花が時間の経過によって色あせていく様を目の当たりにして立ち尽くしていたYuNiさんが、2番では覚悟を決めて歩きだしています。歌詞だけ読むとそんなふうにも読めます。

 この1番と2番の間に何があったのか。ここは色々考えたんですが、MVでのYuNiさんの表情や動きにも注目してみます。まず表情なんですが、悲しそうな表情には見えないんですよね。悟ったような、決意したような表情をしているように思いました。また、歌詞の上では立ち尽くすとありますが、MV上では立ち止まってもまたすぐに歩きだしており、ラスサビでは走り始めています。

 正直ここの解釈はバチッと決めれなかったんですが。やはり、YuNiさんの歌い方と走り出す演出、そしてプレミア公開の演出が12回=1年を表している?、さらに走り出してから今まで投稿されてきた歌ってみた動画が流れていることからここまでひた走ってきた、時間の経過を表現していることを考えられます。

 また、ラスサビ前の間奏でよく見ると走っているYuNiさんとは別に立ち止まったYuNiさんが何人も見えます。加えて、その直後に手を伸ばしてその先で振り返るYuNiさんがいます(2:37~)。

スクリーンショット (166)

 走っている方が手を伸ばしているので振り返っているYuNiさんは走っている方より前にいることがわかります。ここは素直に前を行っていたのは理想の自分とかでいいんでしょうかね。ここは過去の自分に自分の活動が見られている、そして理想の自分になろうと懸命に走っている。シンプルに活動における葛藤の表現だと思います。

 そして、1番このMVで怖いシーンなんですが、3:39ですね。YuNiさんがジャンプをした瞬間に花びらになって消えます。この歌での花びらは舞台を終えた人として例えられています。しかし、今現在もYuNiさんは活動をつづけていらっしゃるのでこれはTwitterでつぶやいていた死生観における自分の死についての表現、考え方と捉えました。花びらとなって消えるまでYuNiさんは走り続けていたことから、いつか花びらとなって散るその瞬間まで理想の自分を追って走り続けていたい。そういう風な想いで歌っているから、この歌詞をこれだけ力強く歌えているのかなと。

花は幻を振り返って

 書き始めた時は①~④と同じく何曲かまとめるつもりだったんですが書いててまとまらなかったのと、スムーズに解釈できなかったこともあって「花は幻」単体での記事になりました。死生観については他のVの方も挑戦されていますが、Vは独特の視点を持つのでどう一般的な死生観と線引するのか、あるいはしないのか、どれくらいファンに向けての言葉にするのか、と難しいチャレンジを必要とするポイントがいくつもあると思うんです。そのなかでこれだけ強かな決意を込めるというのは『Vsinger』として突っ走ってきたYuNiさんだからこそなのかなと思います。

 いまいち解釈しきれないところもあったかと思いますが、2019年、2020年、2021年とYuNiさんの活動を追っていく中でなにか明瞭な解が得られるかもしれません。それを楽しみに『花は幻』を振り返ってを終わります。ここまで、お付き合いくださいましてありがとうございました。次回は作詞作曲歌唱全て自分でやっている個人勢にフォーカスを当てて振り返っていきます。それではまた次回。

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