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【kiamare突発台湾旅行記】阿里山森林鉄路に乗りに行こう!

先日コロナ開け初めての海外旅行として台湾に向かいました。
目的は憧れだった阿里山(アーリーシャン)森林鉄路に乗りに行くこと。
日本からの観光客、特に鉄道マニアにも人気の路線ですが、
なかなか詳細を書いた記事が無かったので訪問記を書くことにしました。
※2024年4月時点での情報です。



1.はじめに

1-1.阿里山森林鉄路とは

台湾鉄路管理局の縦貫線と接続する嘉義(ジャーイー)から阿里山に至る森林鉄道。
もとは1912年に阿里山の木材を運び出すために開業しましたが、現在ではその景観を活かして観光鉄道として活用されています。
2024年4月現在、途中の十字路(シーズールー)以北は運休となっていますが7月から阿里山まで全線開通予定で、試運転が続いているとのこと。
(参考↓)
https://japan.focustaiwan.tw/travel/202404130002

1-2.阿里山鉄道に乗るまで

チケットはウェブサイトからの予約が可能です。
日本語にも対応しているので安心!
https://afrch.forest.gov.tw/Ja
自分は発売日のお昼休みに予約サイトにアクセスしたのですが既に売り切れ。
しかし数日後に再度アクセスすると無事購入することができました。
入金期限切れで空席が出たようです。
予約できずとも根気よくチャレンジしてみていただければ。

1-3.今回の行程

今回は平日だったため列車は1往復しか運行されていません。
そのため途中下車ができず以下のような行程を組んでいました。

●9:00 嘉義駅発
 ↓  阿里山号1車次
●11:30 奮起湖
    昼食@奮起湖大飯店
●12:50 奮起湖バス停
 ↓ 台湾好行バス 阿里山線A線3班
●13:30 十字村バス停
●13:50 十字路駅
 ↓ 阿里山号2車次
●16:51 嘉義駅
●17:00 嘉義駅
 ↓ 徒歩
●17:20 阿里山森林鉄路車庫園区

2.阿里山鉄道乗車記

2-1.嘉義駅到着~出発まで

目抜通りの奥に鎮座する嘉義駅舎。シンメトリーの堂々とした佇まい。

時刻は8:30、台湾鉄路の嘉義駅に到着。
前日は文化路夜市周辺のホテルに宿泊しました。
朝食はホテルで摂りましたが、駅前大通りの中山路はマクドナルドやモスバーガーなど一通りの有名チェーンが揃っており、そこで現地風にアレンジされた朝メニューを味わうのもよかったかも。
夜市では朝から営業している屋台もあり、地元の方が出勤前の朝食を食べていましたが朝から突撃するバイタリティはなかったのでパス。

駅舎に向かって左側の専用窓口で購入時に入力したパスポートを提示してチケットと日本語のパンフレットを受け取ります。
ホームは台鉄の改札内なので自動改札機の横の開いている通路から入場。
直前まで列車は入線しないので台鉄の電車を眺めます。

8:57発の台北南港行きプユマ号162次が到着。
かなり停車駅が絞られた速達便で高雄→台北を3時間半で結ぶ。

阿里山線の線路は駅舎北側の切り欠きホーム。
出発の直前にDL1両と客車5両の編成がやってきました。
小ぶりな機回し線があったためてっきり機回しをするのかと思ったのですが嘉義側についた機関車の推進運転で山を登っていくようです。

街中にも多くイラストがあり、鉄道の枠を越えて嘉義の街のマスコット的存在でもある機関車。
目玉がカワイイ。

機関車は2006年に日本車輌で製造された車両。黒部峡谷鉄道もそうですが現役のナローの機関車は大ぶりな足回りと窮屈なボディの対比が無骨でかっこいいですよね。なんとなくDD51やDE10を思いおこさせる素朴なカラーも似合っています。

運転席を備えた先頭車。中間の客車にも入れ替え用なのか半室運転台が見られた。
座席のデザインや折戸と引戸など細かい差異が見受けられる。

その機関車に引かれてやってきたのがこちらの小ぶりな客車。
阿里山側には全室運転台がついており、こちらから指示を送って機関車を操作するようです。スイスの登山鉄道のような顔のデザインがかわいくてかなり好み。
気になったのが日本の多くの登山鉄道と異なり客車間の連結部に貫通扉があること。
ホロ無しにもかかわらず車掌さんが検札のため身軽に行き来しています。発車直後からかなり揺れており、乗客は車内でお手洗いにたどり着くのすら難儀しているというのに……大丈夫なんでしょうか。
また各車とも窓は密閉式なので急カーブやトンネル続く路線でも車内は結構静かでした。

2-2.上りの列車(嘉義~奮起湖)

前置きが長くなりましたが9時ちょうどに列車は出発。
嘉義の路地裏をなかなかのスピードで駆け抜けていきます。
原付が大量に並ぶ大通りをおもちゃのような電車がとことこと渡るのはここでしか見られない風景。


小さな車体を揺らしながらダウンタウンの路地裏を駆け抜けるその姿はまるで野良猫のよう。

最初の停車駅は北門(ベイモン)。
博物館や文化中心、ショッピングモールも近接する市街の駅であるとともに検修設備や留置線を備える一大拠点です。
大井川鐵道の新金谷駅みたいな立ち位置でしょうか。
留置線には現役か保存か放置かわからないものの多種多様な車両が休んでいました。
この駅の南側にある阿里山森林鉄路車庫園区には夕方下山後に訪れます。

出発前にリニューアルされた観光編成がいるとのことで
一度お目にかかりたかったのですが残念ながらヤードにはおらず。

大量に留置されている無蓋車とタンク車。タンク車は何に使うのだろう…?
無蓋車の終端に設置されていた車掌室。これも推進運転に使うのだろうか。
連続窓で車内のシートにカバーがかけられている新型のような客車。
…そのわりに表面の雨垂れが目立つのはなぜだろう。

市街地の風景に雑木林が混じるようになるとまもなく竹崎(ヂューチー)駅。
県の指定古跡に認定されている水色が美しい駅舎が出迎えてくれます。
駅を出てすぐ右手側には広大なデルタ線もありました。
ここから徐々に山岳地帯が始まるので往時はここで機関車の方向転換をしていたのだとか。

竹崎までは市街地が続くため出迎えてくれる地元の人や観光客がちらほら。

坂を登りつつ樟脳寮(ヂャンナオリャオ)駅に到着。
スイッチバックで交換する駅ですがこの日は交換列車もないため待避線に入らず発車。
トレッキングの客が降りていきました。ここから線路は何重にも入り組んだループ線で高度を稼ぐ本格的な山岳線に突入。
ところどころで視界が開けると車内に歓声があがります。
目まぐるしく左右の風景が入れ替わるため、風景だけでいえば左右の座席で当たり外れはないように思いました。

駅本屋のある待避線を望む。
使われなくなった引き込み線ってロマンがありますよね。

そんなループ線の真っ只中に位置するのが独立山(ドゥーリーシャン)駅。
線路に沿って遊歩道があり吊り橋などもあるため多くの観光客が電車の撮影に興じていました。
彼らはどこから現れたんだ…?とも思っていましたがネットの記事を読むとバス停からアプローチするコースがあるそうで。

梨園寮(リーユェンリャオ)駅でループ線が終わり、列車はかなりの高地を走っていきます。

交力坪(ジャオリーピン)を過ぎて次につくのが水社寮(シュイシゥーァリャオ)駅。
Ωカーブの曲線部、斜面の中腹に駅がありその周りに小規模な民家が立ち並んでいます。個人的には途中駅の中で一番降りてみたいと感じた駅でした。

下山時の撮影。模型のレイアウトにしたいくらい絵になる風景だ…。
駅では犬が放し飼いになっていて降りてきた車掌さんにじゃれつく様子。

そうこうしているうちに沿線最大の街、奮起湖(フェンチーフー)に到着。
乗客のほとんどはここで降りていきました。

列車を降りた途端線路に飛び出し撮影する人々。のどか。

2-3.奮起湖探索

沿線最大の集落で、狭隘な山間部の土地ながら路地の両側に観光客向けの土産物屋やレストラン、セブンイレブンまで密集して独特の風景を形作っています。

階段が急な老街。お土産屋が立ち並び賑やか。
第一駐車場に向かう道すがら。

この駅は拠点駅のため広いヤードに加えて、機関庫を備えていて見学できるとのこと…だったのですが当日は閉鎖中。悔しい思いで隙間からピカピカのシェイを観察しました。

機関車自体もさることながらピカピカに磨き上げられた庫内の壁も美しい。

そして奮起湖名物といえば駅弁。
駅の南東にある奮起湖大飯店では発売当時の金属の弁当箱に入った奮起湖弁当をいただきます。しっかりした味がごはんまで染みこんでおりとても満足。食後のスープで落ち着きました。

イートインの場合伝統的なアルマイトのお弁当箱に詰めてくれる。ボリューム満点!

デザートは百年檜木甜甜圈のドーナツ。
駅西側を下っていく急な坂道の途中に屋台があり行列ができています。
クリームを練り込んだクロワッサンのような生地を丸めてその場で焼いてくれます。
今回の旅行中最も美味しかったのがこのドーナッツで、何の気なしに立ち寄ったのですがかなり美味しくてもう一度並んだほど。
街の中でもドーナツ箱を持った人を多く見かけて、今回の旅行中マストバイのメニューかと思います。

店の前を歩いただけで香ばしい香りが漂ってきて素通りはできないという。
手際よくドーナツが作られていく。

さて、お腹を満たしたところでバスに乗り十字路に向けて出発…と行きたかったのですがトラブルが発生。当日乗車予定だった台湾好行バスが20分ほど遅れて到着。
このままいくと十字路駅で乗り換えがギリギリになりそうだったことから乗車を断念。折しも雨が降り出したことから、近くの珈琲店に入って雨に煙る老街を眺めることに。
これもまた風情があって結果オーライです。

派手な塗装が目を引く観光客向けの台湾好行バス。
阿里山へ向かう外国人客で既に満員。
駅前珈琲で携帯の充電がてらひとやすみ。


またこのバスは奮起湖での乗り場が平日休日で異なり、この日は平日にもかかわらず休日の乗り場である第一停車場から出発していました。なぜ。

2-4.下りの列車(奮起湖~嘉義)

14:50、十字路で折り返してきた行きと同じ編成が下ってきました。

一斉に観光客がカメラを向ける中、記念撮影で電車の前に躍り出たお姉さん。
これはこれで絵になるのがなかなか。
雲海の中に列車が突っ込んでいく。

下りの車窓は上りとほとんど同様なので割愛。
乗車時に眼下に広がっていた雨雲の中に高度を下げつつ進入し、霧の中を走っていたのが印象的でした。
そもそも奮起湖の地名の由来も眼下に広がる雲が湖のように見えたからというものだそう。とても詩的。

16:45、列車は朝出発した嘉義駅の切り欠きホームに到着します。

列車は出発時と同様に乗客を降ろすと、すぐに北門の車庫へ回送される。

せっかく嘉義駅まで戻ってきたのでホームで行きかう台鉄の電車を眺めます。

E1000型電車による自強号138次台北方面七堵行き。
南アフリカ製と韓国製がタッグを組む異色のプッシュプル列車。乗ってみたかった…!
EMU500型電車による区間車3237次高雄方面潮州行き。
韓国製でやや古風な顔のデザインが落ち着く。
こちらは最新型のEMU900型による区間快車1038次海線経由の台北方面七堵行き。
同様に韓国製。台鉄では珍しいビビッドな黄緑色の帯が美しい。
(それにしても台湾の普通列車はライトが多いな…)

2-5.阿里山森林鉄路車庫園区

一通り駅で電車を眺め終えたので、次なる目的地の車庫園区に向かいます。
先ほど通り過ぎた北門駅併設の公園で現役・保存問わず車両が留置されており見学することが可能。
パンフレットには開園時間が17時迄と記載されていましたが、実際に行ってみると多くの人が見学していました。
(併設の林業に関する資料館の開館時間ということなのでしょう…)

駅から車庫園区へ向かう林森西路は文化路夜市から続く中山路と違い、自動車が多く行きかう幹線道路。
その割に歩道には原付バイクが置かれているため、ところどころ車道にはみ出して歩かなくてはなりません。台湾旅行記を見ると街中のレンタサイクルを借りて使うと市内移動が楽と書いてあることがありますが、自分にはこのカオスな都心を自転車で走り切れる自信がありません…。

ただ途切れることなく街並みが続くので沿道で退屈することはありません。20分ほどで公園に到着。
園内に所狭しと置かれた車両に興奮しっぱなしだったので連続でどうぞ。

KATOの文字が入った加藤製作所製のDL。
いかにも強力そうな周囲の機関車と比べるとマスコットのような味わい。
その後ろに置かれているのはドイツのオーレンシュタイン・ウント・コッペル社からやってきた凸型DL.。日本との断交時に輸入されたものの、従来・以降の日本製車両と規格が合わず早々に引退…という歴史と政治に翻弄された形式とのこと。
園内には客車を改装したトイレが2か所ほど設置されていました。
これだけ潤沢に引退車両が置かれているならいくつかトイレに改造したって問題ないだろう…!という心意気でしょうか。贅沢。
園内の踏切が鳴ったかと思うと、先ほど自分が乗車していた客車の入れ替えが行われていました。
先頭に立つのは1972年製のDL33型。
キャブ横には「整備編組列車」との大きなステッカーが貼られています。
奮起湖で見られなかったシェイも留置されていました。
実物を見るのは初めてでしたが見れば見るほど左右非対称のデザインやシリンダが異彩を放っています。
無煙化黎明期の第1世代DL、11403-2型。
まだまだ非力の為嘉義-竹崎間の平坦線で使用されたとのこと。キャブ後ろに背負ったタンクやロッドのメカ感が蒸気機関車と親和性がありそうな。
そして最も異彩を放っているのが自走式の旅客列車、中興号。
客車に運転台とエンジンを取り付けたような見た目ながら、パノラミックウインドウ風のワイドな窓と中国大陸まで描かれたヘッドマークがフラッグシップ列車としての風格を見せています。
もちろん見た目だけに留まらず当時の蒸気機関車列車の所要時間を半分にまで縮めたとのこと。

3.おわりに

3-1.ふりかえり

今回仕事と航空券の都合により平日の訪問となりましたが、やはり実際に行ってみると大興奮の連続でもっと味わい尽くしたかったなという物足りなさが残りました。
休日は3往復体制となるためより気軽に途中下車ができること、檜木列車が運転されることなどを考えるとまだまだ阿里山線の一部を見たにすぎません。
何より7月から全線開通すれば祝山線や神木線などの支線にも乗りに行きやすくなるため、今度はもっと時間を取ってきたいと思います。

また、車庫園区でも歴史的な車両がやや雑然と保存されていたため前情報を蓄えた上で来訪すればより深く楽しめるかなと思います。

3-2.御礼

今回阿里山線に乗りに行こうと決意したのは西花マキさん(@switchback87)さんが2023年8月頃に掲載されたツイートがきっかけでした。
いつもイラスト&旅行記楽しみにしています!

3-3.参考文献

阿里山林業鉄道と文化遺産管理処公式ウェブサイト(2024年5月4日閲覧)

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