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春ゆきてレトロチカ感想/ストーリーのネタバレなし

こないだセールになってたのでSwitch版買って、昨日クリアしたので感想。
実写映像を売りにしたミステリのゲームです。

この記事はストーリー上のネタバレなしです。主にシステム面とか、そういうものの話をします。

結論から言うと、雰囲気重視のゲームだな………という感じ。
ドラマパートで役者さんたちの演技や音楽、映像を見るうちに没入し、感情が乗っかることができれば楽しめるのではないかと思う。
自分はミステリ好きの端くれなので、ドラマより推理パートに興味を持って始めた人間だったが、推理に関する部分はちょっと残念だった。

ゲームの流れはこう。

①実写ドラマの映像を見る=問題編

ドラマの中で事件が起きるのを見守るパート。手がかりは映像中にすべて自動で手に入るので、プレイヤーは何もすることがない。
これを「暇だな~」と思う人もいれば、「ドラマに集中できて良い」と感じる人もいるでしょう。ここらへんは好みの問題ですね。
雰囲気や舞台からして、2時間ドラマのような感じ。自分も昔は火サスとか見てたなあ……と懐かしい気分になりました。
というか実写ドラマ見るのがめちゃくちゃ久しぶりで、ドラマ特有の間とか仕草みたいなものが目について仕方なかった。ミステリにおける手がかりなのかドラマゆえの表現なのかわからず、混乱して一人で勝手にミスリードされていた。

なお普段テレビ見ない人間なので、ほとんどの俳優さんがわからず。ギリギリ平岡祐太の顔を覚えていたレベル。しかし途中で榎木孝明が「あっ、光彦さんのお兄さんだ!」と気づけたので良かった(まあ初代光彦さんですが)。
そして公式サイトを親に見せたら「有名な人たくさん出てるじゃん!」と興奮していたので自分が世間知らずなだけだとわかりました。

そういえば着物にはこだわっているらしく、変わった模様の着物が出てきました。

また映像中、画面下に登場人物や手がかりの追加などいろいろ表示され、いつでも見られるようにはなっている。が、正直ドラマ中にそこを見ることはなかった。あの機能、使う人いたんだろうか。

②①の中で集まった手がかりを元に、いろいろな仮説を作る=推理編

主人公の意識に展開された「脳内推理空間」に移動し、実際に推理を組み立てる……のだが、実際のところ推理はあまりやらない。

実際にやるのは仮説の生成。
推理パートは前半後半の2部に分かれている。

まずやるのが、①で手に入れた手がかりを盤面(と言っていいのか)にはめこんでいく作業。
盤面には「事件に関する謎」が配置されており、それに関連する「手がかり」を周囲に配置してつなげていくと、様々な仮説を作り出すことができる。

この「手がかり」は、

  • すべて①で自動入手

  • 盤面上ではめ込む場所は必ず1つに決まっており、他のところにはめることはできない(「間違える」ことができない)

ということで、ゲーム要素はない。
一応、はめこみ作業を途中で切り上げると、③で選択できる「仮説」が減るとかもあるのかもしれない(未確認)。しかしその仮説自体はゲーム側で用意してあるものだし、やはり「ゲームやってる時のドキドキ感」はない。残念。

はめ込み作業の後は「推理のまとめ」になる。
これは、盤面上で作ったいくつもの仮説(トンデモな説も含む)の検証パートといったところ。
脳内空間の相棒に対して「この謎が気になる。この仮説が合うのではないかと思う」と提示すると、相棒が何らかの反応を返してくれる。
「いい推理だ」と言ってくれたら、まあこの仮説が妥当なんだな、というのがわかる。「他も気になるところはないかな?」とか言われたら、その謎自体あんまり気にしないでいいよ、という感じ。

③で披露する仮説をどれにするか迷っていたら、相棒の反応を見ればいい。芳しくないようなら、仮説が合っていないか、もっと他に見るべき点があるとういことになる。
……ということで③の準備段階として大事ではあるが、結構やりにくい。

仮説の提示方法は、

  1. 相棒が「何が気になる」?と問う。事件に関連する謎が選択肢になっているので、そこから1つ選ぶ

  2. 1で選んだ謎について、反応を見たい仮説を選ぶ

  3. 相棒の反応が返ってくる

という流れになっている。
しかし、事件の中に謎や手がかりがたくさんあるほど、問うべき謎やそれに対応する仮説がの数が増えていく。とにかく選択肢が多く、すべての仮説に対して反応を確認することなんてできない。
しかも相棒との会話はチャットボット的で、反応をもらうまで手間がかかる。
せめて「謎」と「仮説」を1画面でまとめて選択できたら、まだ手間が少なくなってマシだったよな……とか思う。

それから1つ反応を見たあとに出てくる「まとめをやり直す」「脳内推理空間へ戻る」「推理へ進む」の3択はわかりにくい。
ここで「やり直す」という表現が使われているせいで、「まとめは1個しか作れない」「解決編で使えるまとめは1個だけで、ここで選んでおかないといけない」と最初は思い込んでしまった。実際は誤解だったわけだが、そもそも「まとめ」に関する説明はあまりなかったように思う。その辺の説明不足が不満。

とはいえ、どの仮説にしようか迷っている場合は有用。
推理が苦手な人や、③の解決編で変なミスをしたくない人には必要不可欠なパートかもしれない。

③推理を披露するドラマが始まり、途中で何度か選択しが出るので、②で作った仮説を元に選んでいく=解決編

関係人物たちを集め、主人公が推理を披露する実写ドラマが始まる。途中で主人公が「××の証拠があります。それは……」のように言いかけ、そこでプレイヤーが仮説を選ぶと、また実写ドラマに戻って話が進んでいく。

この仮説が間違っていたら、ドラマの雰囲気が一気に変わって、関係者に一気に囲まれて責められるモードになったり、主人公が「あっ、じゃあ考えなおします」とだいぶ頼りないことを言い出す。
もともとシリアスな雰囲気だったのが急にコメディっぽくなるので、その落差に耐えられるなら、たくさん間違えても良いと思いますね(投げやり)。自分はちょっと合いませんでした。
また、間違えるといったんゲームオーバーになり(ペナルティとかはない)、②の推理編に戻ることに。
ただ、このタイミングで見られる「天啓」は、かなり大きなヒントになります。が、要注意でもある。これを使うと自分の推理とか本気でなくなってしまうので。
というのも、自分は一度も使う機会がなかったので、「何が出るんだろう」と思いながら最後の最後に使ってみたんです。そうしたら思いっきり犯人当ての映像が流れてしまって「これヒントじゃなくて答えじゃないか」と興ざめしてしまいました。

以上の文章からおわかりかと思いますが、個人的には推理に関するところが微妙でした。ストーリーは一本道にするのは大歓迎にしても、それを導き出す推理部分はもうちょっとやりようがなかったのかな、という感じです。





推理関係での不満、まだまだあります。

このゲーム、複数の章から成り立っており、各章で必ず1つ事件が起き、それの手がかりを集めて推理することになります。
その中には、現代の事件だけでなく、百年前の事件2つ、五十年前の事件1つが含まれ、どちらも主人公が活字を読んで脳内再生するという形になっています。
またさらに、ストーリー全体を貫いた「縦軸」の事件があり、これまでの事件を踏まえたうえで、その謎を最後に解くことになります。
この構造自体はすごく良かったし、実際「過去のこの件が現代にどんな影響を及ぼしているのか?」など考えるのは楽しかった。

が、それが推理に悪影響ももたらしていました。
1章で見つけた手がかり、2章で見た違和感、……などなど、各章で解き明かされなかったことが、最後の最後にようやく取り上げられ、それなりの説明がつけられる。
だが逆に言えば、1章の手がかりなのに1章の推理編では使われない、むしろその「手がかり」のせいで真相が見えにくくなる、などの弊害がありました。
なんならせっかく解決編で決着がついた話も、最後に「やっぱり違ってた」と覆されることがあります。

これが小説や映像作品ならまだよかった。観客は一連の流れを見るだけだから。けどこれはゲームで、自由度が低いもののプレイヤーが直接関与する形の作品です。

そこで、制作側の主導でプレイヤーに多少のモヤモヤを残しつつ「これが真相だ」と選択させた挙句、あとの章で「実はこっちの手がかりを使うと違う真相が見えるんだ」なんて言う奴、信じられます?

プレイヤーは制作側の用意した真相を選ばなきゃいけない立場です。
自分の感覚ではおかしいと思ったポイントがあり、自分なりの推理を組み立ててはいるものの、最終的にはそれを捨てて制作側の決めた「正解」に従うしかない。
そうやって選択を強いておいて、「実はこの選択は間違いだった」と再提示された真相が、当初に自分が考えていた推理と合っていたら。
ゲーム側に無理やり切り捨てさせられた違和感やモヤモヤが、最後になって活きてきたとしたら。

そんなゲームやってられるかよ。

って思いませんかね。


……とはいえ、上に出した「制作側の指示に従うためにモヤモヤに蓋をする」みたいなことは、「ミステリ」かつ「一本道ストーリー」である以上は仕方ないのかもしれません。
けど上のようなことがちょくちょく起きた結果、ゲームを進めるにしたがって「もういい、とりあえず終わらせよう」とうんざりしてしまいました。
「早く終わらせたいからミスしないようにちゃんと推理しよう」となったのは、良いことだったのかどうなのか。

極めつけは六章の犯人当て。
ここで選べるのはこの人しかいない。でもこのストーリーでこの人を選んだらデウスエクスマキナになっちゃうんじゃないか。
……と普通ミステリであるまじき葛藤をする羽目になりました。
いや、この辺はシステムじゃなくて脚本問題ですけど。

なおストーリーに関する不満も細かいのが結構あります。
が、全体としては悪くない、というか過去と現在の事件を結びつけて現代で謎を解いていく感じとか、その辺は面白かったです。
あと過去編の脳内再生っていう発明は良かった。

というわけなので、ミステリ好きでがっつり推理して、それをちゃんとゲームに反映させたい人にはおすすめしません。
UIのレトロなデザインとか、いかにも旧家って感じのお屋敷などなど、作品の雰囲気は良かったと思うんですけどね。


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