猿若祭二月大歌舞伎【幕見:籠釣瓶花街酔醒】 2024/02/22

※役者さんが呼び捨てだったりさん付けだったり、人によって違いますが、それは区別をしているわけじゃなくて、普段から何故かそうなってるだけで、他意はありません。同じ人でもいろんな呼び方する時があります。みんな大好きです。

まだ書き終わってない、この日付以前のお芝居があるのだけど、先にこちらを書くことにします!
やはり記憶が新鮮なうちに、書くのが一番w

籠釣瓶花街酔醒

2月は博多座遠征もあり、人生の最推しラルクのLIVEもあり、で、どうしてもお金がない😅
当然、時間もなければ体の余裕もない。松竹座も諦めたし・・・
それでもこのお芝居は観るべきだ、と中村屋推しの友人からの勧めもあり、SNSでの評判もあり、なんとか仕事の合間を縫って時間作って、幕見にダッシュして観ることに。
前後に会議あったから、どっちも涼しい顔して出てたけど、幕見することで頭はいっぱいでしたわ。

中村屋は、上手だと思うし、観れたらラッキー、と思うけど、多分趣味が違うので、めっちゃ観たい!とか、ぶっ刺さる、とか、そういうことはない。
高麗屋に対するほどの熱量は出てこないんだよなぁ。完全にそれは人の好みよね。
しかし、観て損はない、といつも思う。

勘九郎さんは、もっと自分を出していいんじゃないかな、と思うことはある。
最近は、とにかくお父様を追いかける、みたいな感じは薄れてきたように思うけど、それでもまだ、何か被っているような気がする。
本来の勘九郎さんは、まだ中に潜んでいるような気がする。もしくは、逆になくて、ナニカを被っていることで、保っているのか。
もしお父様がご存命で、後ろ盾がしっかりしている、ある意味安全地帯の中で自由にやらせてみていたら、彼はどんな風になっていたのかな、とか、ちょっと思う。

七之助さんにも同じことを感じることはあるけど、お兄さんよりは枷がなく、少し自由な気はする。
たま様とはまた全く違った持ち味の女形だけども、たま様を引き継げるのは、やはりこの人だろう、と思う。
観る芸術としての歌舞伎の世界を、たま様はお作りになったと思うけど、あの圧倒的な世界観を、種類は異なりこそすれ、美貌を含めて継げるのは七之助だろうなぁ。

そんなご兄弟の籠釣瓶花街酔醒。
針の落ちる音すらわかる、というくらい、シーンとした歌舞伎座は初めてかも。
あんなに観客も微動だにしないような、空気も動かないような歌舞伎座は、しばしお目にかかったことがない。
愛想尽かしのシーン、舞台上の張り詰めた空気が、客席にも降りてきているようで、もちろん粗筋は皆さん承知で観ているのだけど、この重苦しい空気、何を言ったらいいかわからない気持ち、でもその場から動くこともできない、お芝居の中の脇役として、その場面に放り込まれたみたい。

とにかく、七之助の八ツ橋は美しく、本当にお人形みたいで、にざ様の栄之丞は、どうしようもない今でいうヒモだけど、にざ様だからこそ、間夫としての説得力があって、愛想尽かしをしなければならないくらいに、追い詰められるリアルさがある。だってかっこいいんだもん、本当にw
きおいちょの権八は、このお話の諸悪の根源だが、いや〜な役をきちっとしていて、本当にムカついてくる。笑
お前さえ余計なことをしなければ・・・

児太郎の九重、芝のぶさんの七越、鶴松の初菊、みんなとっても素敵。
特に、最後まで次郎左衛門に優しく接する児太郎の九重が良かった。少しの救いがそこにあった、というか、情のある人もいる、というか。次郎左衛門の良さを、わかってた人もいたんだな、と思える九重だった。
ただそれは、次郎左衛門の気持ちが、自分に向いていなかったからかもしれない。
八ツ橋という別の女性に気が向いていて、自分は蚊帳の外でいられたから、優しく接することができたのかもしれない。
もし自分に気を向けられていたら、同じように優しく接することができただろうか。
あばた顔の見た目で侮られている次郎左衛門、表向きは普通に次郎左衛門に接していても、心の中で蔑んでいる人間はいて(仲間の商人たちがそれ)、それは今でもあることだから、余計に抉ってくるのかもしれない。普遍的。
私にもそういう卑しい心はある。そんなことを思いながら見ていたので、辛かった。

時蔵さんと歌六さんの立花屋ご夫婦は、さすがベテラン、なんという安心感。歌女之丞さんと梅花さんも良かった。心強さというか、脇を固めてくれる人がいるから、真ん中で安心して演技ができる、の体現。

最後の殺しの場面、斬られた後の八ツ橋、スローモーションを体で表現してるんだね!!!
あれはすごかった。
スローモーションの効果を、昔の人もわかっていて、それであの動きをつけたんだろうか。あの瞬間は、息してなかったと思う。今でも目の中で斬られた八ツ橋の動きを再生できる。

今回は、SNSで見ていたので、あえていつも借りないイヤホンガイドを借りてみたら、やっぱり所々邪魔だな、と思うことはありつつも、お芝居に出てきていない間を埋めてくれて、とてもわかりやすく理解を助けてくれました。
今回、新しく得た知識は、下記に箇条書きに。

ちなみに、遊郭での愛想尽かし、といえば、来月の伊勢音頭恋寝刃もそうじゃんね〜。
本心ではない愛想尽かしを女にさせて、それを間に受けた男が事件を起こす、というのが、お話の定番なのかな。

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