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とりあえず、ジャイ子。

朝、出社すると、机の上に電卓が置いてあった。

「あっ! 部長、ありがとうございます」

「いえいえ……。ずっと使っていていいから」

常時使うものではない。
ただ、今担当していることに必要なのだ。

昨日は仕方なく、ケータイの計算機を使っていたのだが、それを見かけた部長が、そっと用意してくれたようだ。

なんだか年季が入った電卓。
奥の方から引っ張り出してきてくださったのかもしれない。
ありがたい。

大切に使い、仕事を終わらせる。


「ありがとうございました。
 次、必要なら自分で持ってきますので
 お返しします」


「そう……


 じゃあ、



 はい。返すよ」


?!?!


電卓を受け取った部長は、
それをそのまま、隣の席の先輩に

えっ?!

部長の電卓じゃなかったんかーいっ!


「あわわっ すみません。
 先輩のものだったんですねっ」

平謝りするわたしに、


「大丈夫だよ。使ってなかったし」



と、部長


はは〜ん。


さては……


部長……

あなたは……


ジャイアンだったんだなっ!


ふだんすごく丁寧なのに、
新入りが困ると発動する
“オマエのものは、オレのもの!”

さながら、わたしは、ジャイアンに助けられるジャイ子である。



とりあえず、先輩がこの間“自分のもの”アピールをしていた謎がとけた。

そして、ジャイアンではあるが、先輩と部長の仲は良さそうだ。

少しずつ、まわりの人の性格が見えはじめ、観察しがいが出てきている。

面白いことメモメモ……

とペンを走らせるジャイ子であった。

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