とりあえず、怖いくらい晴れた日に……
小学2年生くらいの時だっただろうか……
土曜日の昼。学校からの帰り道。
1人だった。
夏の空は快晴。
鮮やか過ぎるほどの青さ。
今思えば、ゾッとするくらい……
いつもの道。
田舎にしては家が立ち並ぶあたり。あと5分も歩けば自宅だ。午後は習い事もある。早足で歩いていた。
いつもなら家々から昼食を作る音だとか、話し声だとかが聞こえるはずなのに、記憶の中では、あの日はやけにしんと静まり返っていたように思う。
そうだ。なんだか空気感が違っていた。
ある家の前に差し掛かる。
同じ登校班の子が住む家だ。家の前には広い庭がある。
いつもの光景を、横目に通り過ぎようとした時……
「んに゛ゃ〜〜」
信じられないくらい、大きな猫の鳴き声が聞こえてきた。
怯えて立ち止まる……
「……? なに……?」
つい、鳴き声のした方に目をやってしまう。
知っている子の家の庭。
何も変わらないようだが……
庭の真ん中には一台の白い軽トラックが止まっている。
「んに゛ゃ〜〜」
再び響き渡る猫の声。
そして目に入ったのは……
軽トラの2台から、こちらへ向かって手招きする、大柄な大人ほどの太さの、赤茶のトラ猫の腕。
(なんか、これ、逃げないとダメだ!)
怖くて動かない足を何とか動かし、自宅まで全速力で走った。
家に帰り着いたわたしは、顔面蒼白だったと思う。
「……おかあさん」
玄関で泣き出す。
何事かと聞く母に、わたしは見たままの話をして聞かせた。
すると母は……
「変なことを言わないで
ちょうだいっ💢」
さっき見てしまったモノと同じくらいの声量で怒鳴られた。
いや、怒りの度合いでいえば、さっき見てしまったモノよりもおっかない!
このまま引っ叩かれそうな怒り具合だ。
母……
こえーっ!!((((;゚Д゚)))))))
わたしは、目の前の新たな恐怖に対処すべく、猫の腕の話をするのをやめたのだった。
その後も毎日のように同じ道を通ったが、あの時のようなことが起こることはなかった。
ただ、あの日の色や空気感は鮮明に残っている。
大人になり、実家に帰ったある日、思い切って母に話してみた。
「わたし、小2の時、◯◯さん家で化猫を
見たって言ったの……覚えてる?」
母の顔色が変わる。
まさか……
なにか曰くが……
「……
ごめんっ。
あの時、あなたがあんまり怯えて
怖いこと話すから……
怖い話聞きたくなくて
怒っちゃったんだよ……(てへぺろ)」
えぇー?!
母、ヒドイっ!!
そこは話を聞いて子どもを安心させるべきでしょーがっ!
とりあえず、10何年ぶりに話したことで、この化猫ばなしは母とわたしの笑いばなしになった。
ただ、アレが何だったのかはよくわからないママだ(そもそも、母が怯えたのも、わたしがたまにヘンなことを言うからだったりする)。
まぁ、Google先生に聞いてもわからないことのひとつとして、そして、「親だって怖いものは怖いんだよっ!」という話として、この話を笑ってもらえたら幸いだ。
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