「物隙目」...終 友引
「今だから言えることだけど」
昨日、朝一でアパートに帰ってきた私は、綾子に絵のモデルを頼んだ。美しい天使、私の親友、園美綾子。一度も彼女のことを描いたことがなかったな、と、父の言葉を思い出した。私が描くことに意味なんかない。死んだ彼女を描くことが、どんな風に取られるかはもうどうでもよかった。綾子のことを真に理解できる人間はこの世にはいないし、無論私も、何一つ理解していなかった。一昨日の夜、死んだ時の姿で現れた綾子は、真白のロングワンピースを着ていて、腕には煙草の火傷跡があった