鳥が妙におおい町。ドラマチックだねと言われた、神社からの帰路。わたしにはあなたみたいな大胆さがないからドラマみたいなことは起こらない。と自虐的に笑ったあの子の、わたしを静かに見下ろす目線が気持ち悪くて最悪だった。
きっと、捨てられない宝物が、傷つけるわけにはいかない人が、人生に付随してしまって、身動きが取れなくなっているんだろうな、あの子。それは深くキラキラとしていて、綺麗だ。蹴っても倒れない木とおなじ。あの子は立派でたしかで、これからもそうだろう。

わたし、木になれないのであれば花くらいになりたいけれど。わたしが一番綺麗であろう二十歳の夜、僕らは恋ではないよ。と教えられたのだ。あんなにすきだった人。青い光が輪郭だけを見せて、ああわたしたちは初めからこれが恋ではないと知っていた、だからこそ恋というものがどんなものか、ますます分からなくなっていくのだ。

思えば長い間、こころが先にうまれて、言葉があとを追うようなそんな人生だ。言葉にあてはまるこころを用意することが難しくて、それが出来ないからだれとも上手にやっていけなかった。いま口にした言葉はわたしたちのなかでどれくらい、近い距離の言葉なんだろう。そんなことをいつも恐る恐る考えていた。気持ちの離れていくその隙間に、星と星くらいの距離があった。おなじ言葉を使っても伝わりきらない距離があって、そんなことを不安に思った時、君に助けを求めれば、ちゃんとわかるまで噛み砕いて教えてくれた。宇宙の言葉でふたりがすこしでも近づけるように。

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