見出し画像

#43 スキ考

 ぼくらはハートをふりまきながら生きる。それは人を繋いだり、あるいは人の生きる力になる、形を与えられた可能性だ。ぼくらの指先から放たれ、残弾数には限りがない。だから、心を少しずつ分け与えてしまって廃人になる、みたいな心配もない。

 現実世界ではこうはいかない。何に対しても「好き」であると表明することには、責任が伴い、価値観を浮き彫りにする。異性に対しての「好き」は、重複した場合、倫理委員会に殴られる。つまり「すき」ということばは、形こそないが、そうした真に迫る重みがあるのだ。

 このnoteにも「スキ」という制度がある。この「スキ」ははっきりと 「♡」このような形を与えられている。そして非常にリラックスしたものであり、どこまでも遠い場所へ届く軽さがある。何者にも制約されない、けれど確かにその人に届く形象だ。

 電子の世界において、「スキ」は無限だ。そして、なにかを創りだすことは、ある程度「スキ」のエネルギーに支えられているとおもう。では、どうするか。そう。「スキ」をばら撒くのだ。創作に対しての「スキ」は、性別も、年齢も、国境も、時間でさえもふわりと越えてゆく。あなたの指先から放たれた信号は、電子の見えないチューブをとんでもない速さで泳いでゆく。その光の矢が、だれかの心にそっと触れる。そしてそのだれかはまた創り出そうと思い始める。

 ぼくは今年五月から書き始めた。そしてぼくにとっては信じられないほど多くの「スキ」を、時にはコメントを頂く機会があった。書くことは、個人的な営みのようで、実はいろんなつながりの中にあったりするんだとわかった。ぼく自身、これからもたくさんの人の文章を読んでたくさん「スキ」を押そう。そして「スキ」を頂いたときには素直に喜ぼう。そうして少しずつ、書いていこうと思える。

 子どもたちの雪合戦みたいに、無邪気にライクをぶつけ合おう。それはきっと、この険しい時代に生きる作り手を照らすまばゆい光になりえるだろう。


 みなさん、今年はありがとうございました。

 来年からも、お互い頑張っていきましょう。



綴り。