海の立像

微細な、あおい闇が蔽い、逃げたいひとりの霊が、海底から立ちのぼり、神妙にして海面は撥ね、星が数えられ、錫箔のように、夕陽が敷衍され、物理学が禅譲し、光り、ただあおい闇だけが残る構造だけ。

乱反射したするどい錐が、眼球を刺し、天井を貫き、山際へ向かい、そこでは比喩が〈リアル〉であり、どこにもない蒼さだけを求めた、かなしき求道家の棲む、耐えがたく屹立する崖のような孤独がある。

いま

バイブレーションが鳴り、〈わたし〉は限りなくここに戻り、白以外何も見えず、それは見ることではなく、ただ悲しくて心が鳴る、海面から跳ねる、抵抗する。世界が愛おしかった。ここにいる、ただ手を伸ばして、突き上げて、泣きそうで、つまらなくて、仕方なくて、死んで、でもここに、いるわたしをわたしを押し上げて、

立つ。