#42 霧

たくさんの眠りたちの 泥のように重たい

霧を 切り裂いて 自動車は

進む かれらの

無数の夢を蹂躙しながら 深く 遠い部屋を

めざして。


運転手はタバコに火をつけ 前を向いている

けれど何も見ていない 彼は。


夜の眠りの霧の中を ぼうっとした灯りだけが

静かによぎってゆく

その あとから 刹那に

クラクションの大音量が

うち響いてくる 確実に、

しずかに。