見出し画像

四画

最初は雨だったか 今は濃霧にけぶれる都市の 灰色の空気を閉じ込めた壁画にて 死の論証は完了していた 
 
夢のなかに 繋留された頭蓋骨たち 肖像画は無惨に 夕焼けのごと切り裂かれた 彼は音をたてず溺死し 彼女の銃弾は空に放たれたまま 戻らない
 
動くものが 動かなくなったときの たえない静物画 限りない過去の集積が 明るいにび色のひかりを灯し 見る者の眼 眼を空に描く
 
歴々と積み重なる われらの死体 地球を覆い腐りゆく威容なる砂礫 無限の 額縁に描き切れなかった未来の細密画 愛せ 奢れ ただ これしきの価値を撒き散らせ