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Dead "in" Alive

 死と生の間にはじつは境界なんて存在しなくて、それは陸続きの、明るい昼の散歩のような強度で入ってゆける。思い出のグラデーション、極彩色の陥穽のトンネルを抜けると、そこは黒い白の世界で、まさに、白が黒いこと以外はこの世と変わらないんだ。風は黒、雲は黒、傷口は白、花々は黒、脳漿は白、燻っている肉体の白―。唯一色彩を持っているのは、くちびる。無声映画の鮮烈な白と黒のほとばしりの中に、ひとすじの紅が咲く。死の世界で人々はまずことばを恋うんだ。それはあのころの愛のことばであり、確かな感触を持っているあたたかさであり、「心」を持っていたとき、それを傷つけた怜悧さ。そして― ああ、ご明察だ。何よりも、死者の世界ではみんなが肉体を恋しがる。肉体は只の輪郭じゃなかったんだね、僕らはみんなおびただしい血を閉じ込めたような袋だけど、それは事実であり本質ではない気がするね。もっと有機的な―交流みたいな。ま、それはこれから歩いていけば判ることだろうさ。ほら、それはもしかしたら、今の君の見ている世界も繋がっているかもしれないんだよ。空は黒。君の肉体は―