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最上階の風

ここはとても高いところであり、あなたに最も近いところだろうと直感しながら、一歩一歩と風をあずかりながら右足を、そして左足を前へと進め、ひんやりとした銀の手すりに触れる。ここにはいつも同じ風が吹いています、と呟きたくなる。同じ風です。ここに来るまでは、それはあなたの不在の絶対性を画定させ、鈍色の寂寥をはこんでくる、絶望的な風だとおもっていました。けれどなんでしょう、この風はあなたのように優しく、包むように私の頬へ触れました。この鉄の柵を越えてあなたに会おうと思っていたのに、あなたはまた私を押し流そうとする、そういうところが、わたしは嫌いです。どうしようもなくやさしいから、あなたはここに居ないんです。