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同人誌と出版の未来

 今のお仕事何してるの?と言われたら「同人作家」と答えるのが一番妥当だと思う。この1年収入のほとんどを同人誌の販売で賄っている。それまでは飲食業のキッチンで料理人をしていたのだけど、5か月で店を3つ変わって燃え尽きた(火鍋屋以外は私以外の要因だ。その火鍋屋だって私は追い出された。同僚も全員悪態ついて辞めてるし)。

 まず、どんな同人誌作ってるの?と言う疑問に答えておこう。Legina 美腳幫<レジーナ>という脚フェチ系の写真集を製作販売している。飲食業の傍ら始めて現時点で36冊目を数えた。以前は電子書籍のみだったが、読者からの要望を受けて受注販売をしている。米国、マレーシア、香港、日本など世界各地に読者がいる。ありがたい話である。規模は小さいが、調べた限りアジア圏ではこうしたものが皆無なので完全なニッチ産業だ。しかしリーチしてない市場はまだもっと多いはずである。—アマゾンKindleで売ってたら中身をZIPで拡散されたり、中国人が中国国内向けサイト作って勝手に販売してたりするぐらいには…。

 さて長い前置きとなったが、本題に入ろう。端的に結論だけ言ってしまえば、写真集やグラビアを扱ってる出版社は数年内に潰れて更地になるのではないか?と危惧を抱いている。そして逆にそこにこそ同人誌が生き残る空間があるとも思っている。この記事ではそういう話をしていこうと思う。

苦しいのは分かるんだけど…

 そもそも日本も台湾も出版業界は苦境にある。ましてや台湾出版市場の縮小速度は日本以上だ。日本ではグラビア/写真集界隈はツイフェミにやられてコンビニや中型書店ぐらいからでは姿を消した。台湾ではそうした本がもともと売りにくい環境だったが、コンビニで売れなくなり、FHMを始めとするグラビア雑誌でさえ休刊の憂き目にあった。
 台湾で一番大きい書店と言える信義区の誠品書店の旗艦店で扱われる写真集、グラビア関係の棚の大きさはいかほどか?棚1つである。その半分はBTSなどの韓流男性アイドルやゲイ向けの男性グラビアなどで、私が売っている女性グラビア系は事実上壊滅状態と言っていい。
 翻って日本はどうだろうか?やはり業界はガタガタなのか、よほどの販売部数の見込めない限り、電子写真集という形になって来ているように見受けられる。(しかも値段は紙と比べてもさして安くなってない)

でもそれって結局…

 しかしだ、よく考えてほしい。それって出版社名義のOnlyFansやPatron、Fanzaと何が違うの?結局被写体(モデルや俳優やら)の名声に頼って売ってる俺と変わらんのと違う?出版社が出版しなくて何をしてるの?出版社が持つ独自性(まぁ一般人はAKBとかHKTのアイドル撮れないので、そういう意味では出版社ブランド強いけど)を活かさずに、採算ベースに乗るマスプロダクトが出来ないからって安易に電子の世界に飛び込むと、全世界の有名コスプレイヤーとかと殴り合いになるだけのような気がするのよね…。
 それならいっそ、電子写真集をそういうサービス(Fanzaとか)で売ったほうがいいんじゃない?世界で売れるよ。
 漫画雑誌の巻頭グラビアに載るとか広報力という点では被写体側に利益があるんだろうけど…そもそも店頭に置かれず、電子で買われるようになったら広報力も何も…気がしないでもないし…。そういう意味では漫画雑誌でさえ惰性になってしまうのかと不安にはなる。(ただ文字と漫画は写真に比べて独自の専門性が発揮しやすいので、5年は生き残るだろうなとも思う)

 同人作家としては逆に実力で殴り合いができるようになった。マスプロが背負う責任としてのポリコレはないし、むしろ尖ったエッジの立ったモノが売れる。プラットフォームや販売チャネルが整備されてきているので電子化でロングテールも可能だ。そして個人や少人数なので会社と違って食っていけるぐらい稼げれば勝ちである。出版社にマイナスに働く部分が同人作家にとっては強みになっていると考えている。

このままでは裸の殴り合いが待っている。

 さて、私の場合に話を当て込んでいくと、冒頭に書いたようにとりあえず食うには困らないぐらいの販売を達成できた。でも、販売価格を下げたいのでもっと印刷部数を増やしたい(今だって1冊約3000円と安くない値段で売っている。それを買ってくださっているファンの皆様には本当に感謝している。もっといいコンテンツを安く売って恩返ししたい)。だが、出版社ほど多くなくていい
 もしかすれば経済学の需要と供給のグラフのように出版社と同人作家の印刷量が一点で交差したときに果てしない殴り合い(需要の奪い合い)が展開されたり、負うべき責任ができるのかもしれないが…まずはそこを目指さないと話にならない。(自戒
 ただ、出版社も安易に安いからとケチって行くと、下からは世界的プラットフォームが下支えする同人作家群が追い上げてきているし、安いからと安易な手を出すのはもうちょっと考えたらどうかな?というお話でした。


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