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戦争の予兆について-台湾有事はいつおきるか

 日本では台湾有事に向けて南西諸島(沖縄)からの退避計画の策定などについてニュースが出ているが、そもそもどのようにして有事は起るのか。この点について言及されているメディアが複数あったので、文字通りのノートとしてまとめておきたい。

戰爭下的平民生存手冊-邱世卿

台湾のサバイバルマニュアル的な本。安全な地方への疎開を推奨する本で、家族との集合に際した24時間ルール、半径2kmルールなどが記載されていて勉強になる。ウクライナ戦争の開戦直前の状況を紐解いて、開戦の予兆として以下の5点を挙げている。(一部改変しています。

●戦争が発生する前の前兆5選
1.政府の発言― 双方の政府の発言から時局がどの方向へ動いているのか知ることができる。ウクライナ侵攻以前に双方の国家元首や外交官が発した発言の中で頻出した単語は 制裁(Sanction)、憂慮(Worry)、警告(Warn)、戦争(War)と言った単語だった。 中国語の単語では「保衛」、「作戰」、「後果」、「挑釁」、「升級」、「警告」、「自救」、「戰爭」、「演習」と言った単語が頻出した場合要注意である。

<筆者注:2024/03/05に行われた中国の全人代で、李強首相は台湾を統一する云々と、従来まであった”平和”の二文字を抜いたことがニュースとなっている。https://www.youtube.com/watch?v=M2GbbNYeSxw>

2.資金の流れ― 国際的な資金の流れも開戦のシグナルとして利用できる。
 中国が保有する海外資産の減少も<執筆当時>決して早いペースとは言えない。米財務省が公表する米国国債購入額をみると減少が続いているが、人民元レート維持と米ドルからの脱出両方の見方ができるが…<筆者注:正直、このような書かれ方で歯切れが悪い。>

3.大規模な輸送の変更
 鉄道輸送での大規模な目的地や時間の変更、航空輸送での突然の大規模キャンセルなどが発生した場合、戦争が近いと考えられる。通常、平時から重要な軍事拠点には物資が集積されているものの、上記の状況が発生するような場合、それは大規模な兵力や物資の移動を意味しており、平時の大規模演習を越える需要が発生している。また、航空機の場合、大規模な軍事行動を起こす前に第三国の民間機を攻撃しないため、人道的な立場から飛行禁止区域が設定される。海上航行も同様に航行禁止区域が設定されるためだ。

4.軍事演習
 通常、戦争は大規模で、結果次第では国家の存亡にかかわる。このため、国家は戦争準備を長期と短期の両方で進める。 長期的に見ると、中台双方の政策から戦争準備の上での決心の程度を見ることができる。中国は現時点でまだ軍の拡大や動員と言ったことは行っていないが、台湾のは徴兵期間の延長や軍事予算を急増させている。 
 基本的に軍事演習の名目で軍隊を動かしたり、機密保持を行うのが普通で、歴史上多くの戦争は軍事演習の名目で行われている。逆に、一方が一方的に「軍事演習」を実施した場合、外交交渉が可能な段階は既に過ぎている。
 軍事演習で示されるものは開戦初期の軍事的パワーであり、軍の筋肉と国家の実力である。これは同時に外交交渉であり、双方の齟齬を解消するか、衝突するかの土壇場である。

5.大使館/領事館の撤退
 大規模戦争が発生する場合、完全に情報を遮断し秘密裏に行うことは不可能である。
 1.撤退準備―大使館や領事館と言った在外機関が旅行情報を引き上げたり、撤退準備をした場合はシグナルとなる。しかもその場合、事態は急速に進行し、好転することは無い。→外務省海外安全情報

 ウクライナ侵攻の場合、開戦前に自国民や大使館員の撤退を行っている。 アメリカは1/23に撤退指示、旅行禁止などを発出しており、2/11には日本、オーストラリア、ドイツ、イタリア、オランダ、イスラエルなどの大使館が撤退している。 また、大使館の撤退や移動、業務停止に際して「警告」「48時間以内」「速やかに」「緊急」といった言葉を使用している。

 2.コミュニケーションルートの断絶
 大使館撤退以外にも双方政府の交渉ルート(公秘を問わず)の断絶も開戦シグナルと捉えられる。戦争は通常、双方の外交・交渉ルートが無くなり、交渉が決裂したときに発生する。台湾の場合、国交断絶自体は頻繁に起こるが、対中国では海基会と海協会がこれを担当している。双方のコミュニケーションがとられなくなった場合、双方ともにダメージコントロールに入る。 開戦必至となった場合、人員と資産の撤退をはじめ、最低限の人員しか残さない。もし日常業務でのやり取りが突然途絶えたり、予告なしに担当者と連絡がつかなくなった場合、極めて短時間に戦端が開かれる可能性が高い。


また、前日台交流協会台北代表 泉裕泰氏は、キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)の動画にてキートリガーという形でいくつか例を挙げている。(下記動画22分10秒から)

  1. (中国軍による)台湾海峡周辺での外国船舶に対する臨検
    →金門島周辺海域にて台湾船舶に対して実施済み

  2. 民間航空機に対する飛行禁止区域の常時設定
    →ペロシ米下院議長の訪台後に実施した演習で一部実施済み

  3. 海底ケーブルの切断
    →媽祖島周辺で発生済み

  4. 台湾全土で停電→サイバー攻撃の可能性

  5. 台湾対岸に陸軍が集結する

その上で、
・外務省のアラートはギリギリなので当てにしてはいけない。
・朝鮮半島、日本、中国に居る日本人も危ない(戦火が及ぶ)
・物理的輸送力が足りないので、危機が明らかになってから逃げるのでは遅すぎる。自主的に判断して先んじて逃げて欲しい。
・邦人保護は必要だが何万人も相手にできない。対象は減るほどいい。
と話す。
また、民間企業で出来る取り組みとして、戦時にも残らなければならないエッセンシャルな人間とそれ以外を分け、エッセンシャルな人間はどこに逃げるか?備蓄は?通信手段は?移動手段は?とあらかじめ決めておく。
非エッセンシャルな人間については、現地の支店長などが退避のタイミングを決定できるようにし、仮に何も起きなくても日本本社は責めないこと。といった奪権闘争が必要と指摘。退避勧告が出てからチケットを渡すなどと言っても買えないと述べた。

<感想>
 既に中国側の動きを見るに10段階で6ぐらいまで来ているような感じがある。以前に書いた劉明福の記事のように中国はすでに「平和的統一は西側が押し付けている考え方」「統一されていない現状は認められない」「統一は平和より尊い」といった考えのもと行動しており、この種の状況の変化には一層注意深く観察を続けていく必要がある。(って実に深みの無い小並感前回の感想やないかい!


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